作成日:2026.10.23
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制度・政策・審議会
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
増強を待たずに蓄電池をつなぐ「充電制御装置」、北海道で臨空苫東系統を追加し28系統に
北海道で系統用蓄電池を計画する事業者にとって、充電側の空容量不足は、送変電設備の増強工事を長く待つ理由になってきた。北海道電力ネットワークは10月23日、充電制御装置を付けることを条件に増強なしでつなぐ取り扱いの対象に臨空苫東系統を加え、同日から申込みを受け付けた。対象は2022年12月の6系統から数えて28系統になる。代わりに、混雑したときは充電を抑えられ、その損失は補償されない。臨空苫東変電所は新設予定で、2030年3月に使用開始予定である。
CONTENTS目次
何が起きたか:北海道電力ネットワークは10月23日、充電制御装置の設置を前提に系統用蓄電池の接続申込みを受け付ける対象に、臨空苫東系統(臨空苫東変電所以下)を追加した。対象は28系統。仕組みと費用の条件は2023年1月の受付開始以来の枠組みのまま。
なぜ重要か:充電側(順潮流側)の空容量が足りない系統でも、原則として送変電設備の増強を待たずにつなげる。その代わり混雑時は充電を一律の割合で抑えられ、損失は補償されない。親局・子局の工事費も事業者が負担する。
何をすべきか:候補地が臨空苫東変電所以下の系統に当たるかを確かめ、接続検討で抑制見込み(抑制時間・抑制率)と個別の概算工事費の回答を受ける。増強案と並べて比べるなら、接続検討の段階で両方を頼む。
臨空苫東系統の追加で、対象は28系統に
北海道電力ネットワークが10月23日に公表した添付資料「充電制御装置を活用した系統用蓄電池の接続について」(全18ページ)で変わったのは、p.4の対象系統の一覧だ。「2026年10月23日以降の対象系統」として臨空苫東系統(臨空苫東変電所以下)が加わり、受付開始日は同日とされた。お知らせページの表も、変更前27系統、変更後28系統と書いている。
仕組みと費用の条件は、2023年1月20日の受付開始から続く枠組みのままである。背景は資料の冒頭にある。北海道エリアでは2021年度以降に蓄電池の接続申込みが増え、一部の送変電設備で順潮流側の空容量が不足した(p.2)。順潮流とは、蓄電池の充電や住宅・工場などの電気使用で生じる電気の流れのことだ。お知らせページは、蓄電池をつなぐには逆潮流(放電)と順潮流(充電)の双方向に空容量が要る、と注記している。充電側を増強で解消しようとすると工事が長期にわたることが多い。そこで、充電を抑える装置を付ける代わりに先につなぐ。方針は2022年9月14日の第41回 系統ワーキンググループで議論された(p.2)。
対象系統は7回に分けて増えてきた。2022年12月9日に西札幌・南札幌・恵庭・北芽室・室蘭・苫小牧の6系統、2023年10月13日に8系統、2024年9月27日に道東基幹系を含む8系統、2025年4月1日に3系統。2026年に入ってからは1系統ずつで、1月23日に南千歳、4月10日に東石狩、そして10月23日に臨空苫東が加わった(p.4)。
2026年の3系統には共通点がある。いずれも変電所が新設予定で、南千歳変電所は2027年9月、東石狩変電所は2031年9月、臨空苫東変電所は2030年3月がそれぞれ使用開始予定だ(p.4 注1〜注3)。申込みはいまからできても、系統そのものが使えるようになるのは数年先になる。
28系統のうち、北芽室・宇円別・東釧路・西春別・留辺蘂・女満別・西音更・道東基幹系の8系統は資料の中で赤字になっている。この8系統では、充電制御装置に加えて上位系変電所の連絡用変圧器(275kV/187kV)の増設工事が必要とされる(p.4、p.5 注3)。臨空苫東系統は赤字ではなく、この8系統には含まれない。
工事費は事業者負担、親局は3年以内の後続者と按分
充電制御装置は、北海道電力ネットワークの変電所に置く親局、事業者の蓄電所に置く子局、両者を結ぶ通信回線の3つでできている(p.6)。工事費は事業者が負担する。資料が示す現時点の想定は次のとおりだ(p.8)。
- 親局A(基幹系変電所に設置):15千万円程度(1億5,000万円程度)
- 親局B(ローカル変電所に設置):6千万円程度
- 子局(親局A・B共用):1千万円程度
どの親局が要るかは、制約設備がどこにあるかで変わる。p.8の例では、蓄電池Xは親局A・子局・通信回線の工事費を、蓄電池YとZは親局A・親局B・子局・通信回線の工事費を負担する。親局Aだけで済む場合でも、親局Aと子局を足すと1億6,000万円程度になる(編集部の合算。通信回線の費用は含まない)。個別の概算工事費は接続検討回答で示される(p.8 注2)。
負担の区分は機器ごとに違う。親局は北海道電力ネットワークが設置し、設置費用は工事費負担金として事業者が払う。ただし保守と設備更新は同社が行い、その費用も同社が持つ(p.9 注1)。子局は事業者が自分の負担で設置・保守・設備更新を行う。通信回線は、同社が設置するなら設置費用が工事費負担金になり、事業者が電気通信事業者のIP回線などの専用回線を用意することもできる(p.9 注3)。
先に手を挙げた事業者に関わるのが按分精算だ。親局の使用開始後3年以内にほかの事業者が同じ親局を使うことになれば、対象となる蓄電池の最大供給電力で親局の工事費を按分して精算する(p.9)。資料の例では、最大供給電力がX50MW・Y30MW・Z20MWなら、親局Aの共通工事費はXが50/100、Yが30/100、Zが20/100を負担し、親局BはYが30/50、Zが20/50を負担する(p.9 注2)。裏を返すと、3年以内に後続が現れなければ、最初の事業者が親局の費用を1社で抱えることになる。
装置を付ける時期は2通りある(p.10)。契約申込みの時点で順潮流側に空容量が無い制約設備なら、蓄電池の接続までに付ける。空容量がある制約設備なら、ほかの事業者の申込みで空容量が足りなくなると見込まれた時点で同社が追加設置の時期を知らせ、その時期までに付ける。後から追加で付ける装置の費用も事業者の負担である。
混雑すると充電を一律に抑える、損失の補償はない
制約設備になるのは、対象系統の基幹系の連絡用変圧器と送電線などで、配電用変圧器と配電設備は除かれる(p.5)。資料の図では、連絡用変圧器(275kV/187kV、187kV/66kV)と送電線(66kV)が制約設備として描かれている。装置の対象になる蓄電池は、連絡用変圧器以下に特別高圧または高圧でつながるものだ。道東基幹系だけは、187kV西春別線と釧路北線が制約設備になる(p.5 注2)。
親局は、制約設備の潮流と設備情報(CB・LS)を常時見ている(p.6)。順潮流が運用容量を超えたと検出すると子局へ制御信号を送り、事業者は蓄電池の充電電力(kW)を抑える。信号は、順潮流が運用容量を下回るまで複数回送られる(p.7 注1)。
収益に直結するのは、同じ制約設備に複数の蓄電池がつながっているときの分け方だ。資料は「契約申込の受付順にかかわらず」、各蓄電池の定格充電電力に対して一律の割合で抑えるとしている(p.7)。早く申し込んだから抑制が軽くなるわけではない。同じ設備に後から蓄電池が増えれば、抑制のかかり方が変わる可能性もある(編集部の読み)。
充電制御に伴う損失は補償いたしません。
出典:北海道電力ネットワーク「充電制御装置を活用した系統用蓄電池の接続について」p.9抑制で失った分は戻ってこない。抑制時間と抑制率の見込みは接続検討回答で個別に示される(p.3 注2)ので、その数字を収益計画に入れてから接続方法を決めることになる。
放電側と配電側の扱いも別に確かめておきたい。この取り扱いは順潮流側の不足を装置で補うもので、逆潮流側にはノンファーム型接続が適用される(p.17)。配電設備の空容量が足りない場合は、配電設備の増強が別に要る(p.17)。さらに、国の審議会などで蓄電池の充電の扱いや運用に新しい整理がされた場合は、原則として新しいルールに基づく運用へ移る(p.17)。
申込みの流れ:二つの案を並べて検討し、契約申込で一つを選ぶ
新規の申込みでは、充電制御装置を付けて接続する案(①)と、付けずに送変電設備を増強して接続する案(②)について、北海道電力ネットワークがそれぞれの工事規模などを示し、事業者が接続検討の方法を選ぶ(p.11)。
| 希望 | 必要な手続き(資料 p.11) |
|---|---|
| ①のみ | 「充電制御装置の設置を前提とした接続検討申込について」(同意書①)を提出 |
| ②のみ | 送変電設備の増強を前提とした接続検討を実施 |
| ①と②の両方 | 同意書①の提出と2件分の検討料の入金で、2つの接続検討を並行して実施 |
契約申込みのときは、①か②のどちらか一方を選ぶ。両方を選ぶことはできない(p.11 注)。接続検討申込書類のドラフト確認開始から「判断材料提示①」までは、2〜3週間程度かかる場合がある(p.17)。
進行中の案件の扱いも書かれている。受付開始日の時点で接続検討中なら、同意書①を出せば①での検討に切り替えられ、回答期限は同意書①の受付日から3か月後に再設定される。①と②を並行させるには追加1件分の検討料が要る(p.13)。増強前提の接続検討回答を受けて、まだ契約申込みをしていない案件は、同意書①と追加1件分の検討料で①の検討ができる。回答日から1年を過ぎた申込みは回答が無効になり、新規の扱いになる(p.14)。
負担が大きいのは、増強前提で契約申込みまで済ませた案件だ。原則は契約申込み時の条件で接続する。充電制御装置つきに変えたいなら、契約申込みを取り下げて新規に申し込む必要がある。確保した系統容量は開放されてタイムスタンプは無効になり、契約申込み時の保証金は返還されない。進捗によっては、託送供給等約款「72」に基づいて実費を請求される場合もある(p.15)。
なお、対象28系統は、2025年4月以降の接続検討に適用される早期連系追加対策(充電制限)の適用対象外である(p.16)。
臨空苫東で計画する事業者が確かめること
資料からは読み取れないことがある。まず、臨空苫東系統で何MWまでつなげるか。資料の「最大200MW」は系統ごとの上限で、周波数変動等の制約による値であり、系統によって接続可能量が異なると注記されている(p.3 注3)。臨空苫東系統の値は書かれておらず、本稿では未確認とする。200MWを上回る申込みがあった場合は契約申込の受付順で接続可否を判断し、接続できない蓄電池は送変電設備の増強が必要になる(p.3)。
次に、臨空苫東変電所の所在地と電圧も資料には無い。分かるのは変電所名と、新設予定で2030年3月に使用開始予定という点だけだ。候補地がこの系統に当たるかは、北海道電力ネットワークへの確認と接続検討で確かめるしかない。
抑制の水準も同じで、接続検討回答を待つことになる。資料が示すのは仕組みと条件までで、どの程度の時間、どの程度の率で充電が抑えられるかは案件ごとに異なる。
よくある質問
Q1. 充電制御装置を活用した系統用蓄電池の接続とは何ですか?
Q2. 臨空苫東系統ではいつから申し込めますか?
Q3. 臨空苫東系統には何MWまで接続できますか?
Q4. 充電制御装置の工事費はいくらで、誰が負担しますか?
Q5. 充電を抑制されたときの損失は補償されますか?
Q6. 増強前提で契約申込みを済ませた案件も、充電制御装置つきに切り替えられますか?
Q7. 早期連系追加対策(充電制限)とは別の取り扱いですか?
編集部の見立て
- 早くつなげても、運転開始は変電所の工程しだい。2026年に追加された3系統は、いずれも新設予定の変電所の系統だった。臨空苫東の場合、受付は始まっても変電所の使用開始予定は2030年3月で、それより前に蓄電池を動かせる道筋は資料からは読めない。「増強を待たない」ことと「すぐ動かせる」ことは別だと見ておくべきだろう。
- 判断を分けるのは工事費より抑制率。親局の費用は先行者に偏りうるが、3年以内に後続が出れば按分で戻る。一方の充電抑制は、受付順に関係なく一律の割合でかかり、補償も無い。同じ設備に後から蓄電池が増えた場合に抑制がどう変わるかは資料に書かれていないので、接続検討回答の抑制率を、計画上の前提として最初に置くことになる。
- ①②の並行検討は、切り替えの保険になる。増強案と並べて比べられるのは接続検討の段階までで、契約申込みで一方に絞った後に乗り換えると、保証金を失い、確保した容量も手放す(p.15)。2件分の検討料を払ってでも両案を並べておく価値はある、と編集部は考える。
いつまでに何を確かめるか
| 時期 | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| いま | 候補地が臨空苫東系統(臨空苫東変電所以下)に当たるか。所在地は資料に記載が無いため北海道電力ネットワークに確認する | 資料 p.4 |
| 接続検討の申込み時 | ①のみか、①②の並行(同意書①と2件分の検討料)か | 資料 p.11 |
| 申込み準備中 | ドラフト確認開始から判断材料提示①まで2〜3週間程度かかる場合がある | 資料 p.17 |
| 接続検討回答時 | 抑制見込み(抑制時間・抑制率)と個別の概算工事費。親局A・Bのどちらが要るか | 資料 p.3・p.8 |
| 契約申込みの前 | ①か②のどちらか一方を選ぶ。200MWの枠を上回れば契約申込の受付順で判断される | 資料 p.3・p.11 |
| 親局の使用開始後3年以内 | 同じ親局を使う後続事業者が出れば、最大供給電力で按分して精算 | 資料 p.9 |
| 2030年3月(使用開始予定) | 臨空苫東変電所の使用開始予定時期 | 資料 p.4 |
編集体制と事実確認プロセス
BESS NEWSの記事はこう作っています
- BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者・執行団体が自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
- 本稿の数値・日付・条件は、北海道電力ネットワークの添付資料(全18ページ)の全ページからテキストを抽出して読み、該当ページと1件ずつ突き合わせました。ページ番号は資料に印刷されたスライド番号(表紙=1)です。対象系統の数(変更前27系統・変更後28系統)は、お知らせページの表とも照合しました。p.4で上位系変電所の増設工事が要る8系統は、PDFの文字色(赤字)で確認しています。
- 資料に記載が見当たらない事項は「未確認」として推測で埋めていません。本稿では、臨空苫東系統の接続可能量(MW)、臨空苫東変電所の所在地と電圧、抑制時間・抑制率の水準、子局の仕様(資料は別途提示とする)が未確認です。
- 「編集部の見立て」の3項目、親局Aと子局の合算(1億6,000万円程度)、後続の蓄電池が増えた場合の抑制の変化に関する記述、図1の累計は、編集部の解釈または集計です。
数値照合表
本文に出した主要な数値を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。
| # | 項目 | 本文の値 | 一次情報(出典・該当箇所) |
|---|---|---|---|
| 1 | 資料の日付 | 2026年10月23日 | 添付資料 p.1 |
| 2 | 申込みの受付開始(制度全体) | 2023年1月20日以降 | 添付資料 p.2 |
| 3 | 方針を議論した審議会 | 第41回 系統ワーキンググループ(2022年9月14日) | 添付資料 p.2 注2 |
| 4 | 接続可能量の上限 | 系統ごとに最大200MW(系統により異なる) | 添付資料 p.3・注3 |
| 5 | 対象系統の数 | 28系統(変更前27系統) | 添付資料 p.4/お知らせページ【対象系統】 |
| 6 | 臨空苫東系統の受付開始日 | 2026年10月23日 | 添付資料 p.4 |
| 7 | 新設変電所の使用開始予定 | 臨空苫東 2030年3月/南千歳 2027年9月/東石狩 2031年9月 | 添付資料 p.4 注1〜注3 |
| 8 | 対象系統の追加の推移 | 6→8→8→3→1→1→1系統(2022年12月9日〜2026年10月23日) | 添付資料 p.4 |
| 9 | 連絡用変圧器の増設が要る系統 | 8系統(臨空苫東は含まない) | 添付資料 p.4(赤字)・p.5 注3 |
| 10 | 工事費(現時点の想定) | 親局A 15千万円程度/親局B 6千万円程度/子局 1千万円程度 | 添付資料 p.8 |
| 11 | 親局の按分精算の期間 | 使用開始後3年以内 | 添付資料 p.9 |
| 12 | 按分の例 | X50MW・Y30MW・Z20MW→親局A 50/100・30/100・20/100、親局B 30/50・20/50 | 添付資料 p.9 注2 |
| 13 | 制約設備の電圧 | 連絡用変圧器 275kV/187kV・187kV/66kV、送電線 66kV | 添付資料 p.5 |
| 14 | 判断材料提示①までの期間 | 2〜3週間程度 | 添付資料 p.17 |
| 15 | 接続検討中案件の回答期限 | 同意書①受付日の3か月後に再設定 | 添付資料 p.13 |
出典(一次情報)
- 北海道電力ネットワーク「充電制御装置を活用した系統用蓄電池の接続について」(添付資料・全18ページ)(2026年10月23日 公表)
- 北海道電力ネットワーク「充電制御装置を活用した系統用蓄電池の接続(対象系統の追加)について」(2026年10月23日 公表)
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。
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