作成日:2026.07.23
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
送電線の“使える量”はどこまで増やせる?〜東京最大52万kW・関西最大60万kW〜【OCCTOが示した5つの混雑対策】
N-1電制と運用容量の再計算で何が変わる?蓄電池事業者が知るべき「接続枠との違い」
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は2026年6月26日、混雑が見込まれるエリア内の送電線について、運用容量の算出方法と混雑緩和策を確認しました。
注目されるのは、東京北線で示された最大52万kWと、関西Aフェンスで示された830万kWから890万kWへの拡大試算です。
ただし、東京の52万kWはN-1電制の対象発電機の定格出力を用いた最大値、関西の60万kWは一定の発電所稼働条件による試算です。いずれも、蓄電池の接続枠が同じ量だけ増えることを意味しません。
本記事では、今回何が確認され、何が予定や参考試算にとどまるのか、蓄電池事業者は実務でどこを確認すべきかを整理します。
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
・OCCTOは、混雑が見込まれる地内系統について、運用容量の算出と混雑対策が合理的かを確認しました。
・東京北線では最大52万kW、関西Aフェンスでは条件次第で最大60万kWの拡大効果が示されました。
・ただし、これらは蓄電池の接続可能量ではなく、個別案件の接続可否を示す数字ではありません。
今回の資料で何が確認されたのか
1.対象は混雑が見込まれる基幹系統の上位2電圧
今回の議題は、「混雑が見込まれる地内系統の運用容量の算出等の確認について」です。
地内系統とは、東京、関西、北海道など、同じ一般送配電エリアの中にある送電線や変電所を指します。
確認対象は、基幹系統(大量の電気を運ぶ主要な送電網)のうち、上位2つの電圧階級に当たる設備です。
具体的には、次の設備が対象となりました。
2030年度の混雑見通しで混雑対象となった設備 近い将来に混雑するおそれがある設備 現時点で混雑が確認されている設備
OCCTOは一般送配電事業者へのアンケートを通じて、対象設備の制約要因、適用済みの混雑対策、未適用の場合の検討状況を確認しました。
2.OCCTOの結論は「現時点で不合理ではない」
確認の結果、対象となった地内系統では、N-1電制や算出断面の細分化などが適用済み、または今後適用される予定でした。
OCCTOは、抽出した地内系統の運用容量について、「現時点において不合理なものではなかった」と整理しています。
ここで重要なのは、新しい系統接続ルールが決定されたわけではないことです。
今回は、各一般送配電事業者が行っている運用容量の算出と混雑緩和策を、OCCTOが点検した報告です。今後も中長期の混雑見通しなどに合わせて、定期的に確認するとしています。
運用容量と5つの混雑対策
1.運用容量は4つの制約をすべて満たす範囲
運用容量とは、送電線や変圧器を安全かつ安定的に運用するために設定される、電気の流れの上限です。
送電線が平常時に耐えられる量だけではなく、設備が故障した場合にも大規模停電や設備損傷を避けられるよう、次の4つの条件を考慮します。
・熱容量
送電線や変圧器が過熱しないための制限です。
・同期安定性
発電機が同じリズムを保って運転できなくなることを防ぐ制限です。
・電圧安定性
電圧が大きく低下し、正常に送電できなくなることを防ぐ制限です。
・周波数維持
電気の需要と供給のバランスが崩れ、周波数が大きく変化することを防ぐ制限です。
今回確認された設備では、熱容量が制約要因となっているケースが大半でした。一部では、同期安定性や電圧安定性が制約となっています。
2.既存設備を有効に使う5つの混雑対策
OCCTO資料で示された対策を、初心者向けに5つに整理すると次のとおりです。
1つ目は、短時間容量の活用です。
故障後に短時間で発電出力を下げたり、電気の経路を切り替えたりできる場合、設備が一時的に耐えられる容量を使います。
資料の例では、常時容量100%に対して短時間容量150%を用いるケースが示されています。
2つ目は、N-1電制です。
N-1電制とは、送電線1回線や変圧器1台など、一つの設備が故障したときに発電出力を瞬時に抑制または遮断する仕組みです。
故障時の過負荷を防ぐことで、平常時の運用容量を拡大できる場合があります。
3つ目は、N-2故障時の電源制限です。
N-2は、2回線や1ルートの停止など、N-1より厳しい故障条件を想定する考え方です。
具体的な故障条件は、対象系統によって異なります。
4つ目は、算出断面の細分化です。
算出断面とは、運用容量を計算するときの季節、需要、発電所の運転状況などの条件です。
夏季と冬季を分けるなど、条件を細かく設定することで、実態に近い運用容量を算出します。
5つ目は、電源態勢を踏まえた見直しです。
電源態勢とは、どの発電所が何台動いているかという運転状況です。
最新の稼働想定を反映して再計算することで、年間の一律値よりも精緻な運用容量を設定できます。
東京52万kW・関西60万kWの正しい読み方
1.東京北線はN-1電制を予定、52万kWは最大値の目安
275kV東京北線は、2029年度と2030年度の系統混雑想定で、混雑が見込まれています。
このため、費用対便益を評価したうえでN-1電制の対象発電機を選び、実際に混雑が発生するまでにN-1電制装置を構築する予定です。
資料には最大52万kWと記載されています。
ただし、この52万kWは、N-1電制の対象となる発電機の定格出力です。実際の混雑緩和量は、対象発電所の運転出力や、その時点の混雑量によって変わります。
したがって、常に52万kWの余力が生まれることや、52万kWの接続枠が増えることを示す数字ではありません。
2.関西Aフェンスは条件次第で830万kWから890万kWへ
関西Aフェンスの東向き運用容量は、年間を通じて830万kWとされています。
Aフェンスとは、複数の送電線を一つの境界としてまとめ、その境界を流れる電気の合計を管理する考え方です。
関西Aフェンスの運用容量は、500kV系統の電圧を支える原子力発電所の運転台数に大きく影響されます。
2026年夏について、最新の原子力稼働想定を反映して試算した結果は次のとおりです。
・原子力4台稼働:830万kW
・原子力5台稼働:890万kW
差は60万kWです。
ただし、890万kWは原子力5台が稼働する条件での試算です。年間の公表値が890万kWに正式変更されたという意味ではありません。
3.関西の3系統では13万・13万・18万kWを確認
関西エリアでは、電源態勢を反映した運用容量の見直しにより、次の緩和量が示されています。
・新綾部線:13万kW
・北河内線:13万kW
・丹波線:18万kW
これらは、運用容量を見直す前と後の差です。
一方、3系統はいずれもループ系統であり、N-1電制のシステムが複雑になることや、効果量が小さいことなどから、N-1電制の適用は困難と整理されています。
混雑対策はN-1電制だけではなく、系統の構成に応じて再計算や経路変更などを使い分ける必要があります。
何が確認済みで、何がまだ未定なのか
1.今回確認されたこと
今回確認された主な内容は次のとおりです。
・制約要因は熱容量が大半を占める
・一部では同期安定性や電圧安定性が制約となる
・多くの対象系統で混雑対策が適用済み、または適用予定
・現時点で運用容量の算出に不合理なものは確認されなかった
・今後もOCCTOと一般送配電事業者が定期的に確認する
なお、北陸、四国、九州、沖縄については、今回の抽出条件では、基幹系統において混雑が見込まれる地内系統はないとされています。
これは、各エリアに混雑が一切ないという意味ではありません。系統や潮流が変われば、今回挙げられていない場所が混雑する可能性があります。
2.予定・参考試算にとどまること
東京北線のN-1電制は、今回の作業会時点では適用予定です。
また、東京の52万kWは対象発電機の定格出力による最大値であり、固定された緩和量ではありません。
関西の890万kWも、原子力5台稼働を前提とした参考試算です。
整理すると、次のようになります。
・東京北線のN-1電制:予定
・東京52万kW:最大値の目安
・関西830万kW:年間の公表値
・関西890万kW:原子力5台稼働時の参考試算
数字だけを切り取らず、その位置づけまで確認することが重要です。
3.一部の系統では対策を検討中
すべての系統で、混雑対策が決まっているわけではありません。
資料では、対策を適用できない理由や、検討が続いている理由として、次の事情が示されています。
・潮流を調整できる発電所がない
・電気の経路を変更できない
・変圧器が1台しかない
・ループ系統で制御システムが複雑になる
・現在の混雑量では費用対便益が成立しない
北海道の西春別変圧器や、中国の新小野田火力関連送電線などでは、N-1電制の見直しや適用可否が検討中です。
「混雑があるから必ず運用容量を増やせる」という話ではなく、技術面と費用面の両方から判断されます。
蓄電池事業者への影響と実務上の注意点
1.運用容量の拡大は接続可能量の増加ではない
今回の最も重要な誤解ポイントです。 運用容量は、送電線に安全に流せる電気の上限です。
一方、接続可能量は、新しい発電所や蓄電池をその系統へ接続できる容量です。
今回の資料には、蓄電池の新規接続可能量は示されていません。
したがって、次のような読み替えはできません。
「東京で最大52万kWの混雑緩和」
イコール
「東京で蓄電池を52万kW追加接続できる」
「関西で最大60万kWの運用容量拡大」
イコール
「関西で蓄電池の接続枠が60万kW増える」
個別案件の接続可否は、今回の資料だけでは判断できません。実務では、一般送配電事業者から示される接続検討回答を確認する必要があります。
2.影響を確認すべき事業者
今回の資料を特に確認すべきなのは、次の事業者です。
・混雑が見込まれる上位系統につながる蓄電池事業者
・接続検討中の事業者
・系統混雑を事業計画のリスクとして評価する投資家
・充放電計画を策定するアグリゲーター
・東京北線や関西Aフェンス周辺の系統に関係する事業者
ただし、同じエリア内でも、接続地点によって通過する送電線や変圧器は異なります。エリア全体の数字だけで案件への影響を判断することはできません。
3.実務で確認すべき5つの項目
蓄電池事業者は、次の5点を確認する必要があります。
1.接続検討回答
接続条件、増強工事、工期など、個別案件に示された条件を確認します。
2.接続地点より上位の系統
最寄りの変電所だけでなく、その先の送電線やフェンスまで確認します。
2.接続地点より上位の系統
最寄りの変電所だけでなく、その先の送電線やフェンスまで確認します。
3.混雑する方向
蓄電池は充電時と放電時で、電気の流れる方向への影響が変わります。
4.季節と時間帯
運用容量は、季節、需要、発電所の稼働状況によって変動します。
5.数字の位置づけ
正式な公表値、予定、最大値、参考試算を分けて管理します。
今回の52万kWや60万kWを、そのまま接続可能量や収益計算の前提に使うことは避けるべきです。
まとめ
OCCTOは、混雑が見込まれる地内系統について、運用容量の算出と混雑緩和策が合理的かを確認しました。
確認の結果、多くの系統でN-1電制、算出断面の細分化、電源態勢を踏まえた再計算などが適用済み、または適用予定となっていました。
東京北線の最大52万kWは、N-1電制対象発電機の定格出力による最大値です。
関西Aフェンスの最大60万kWは、原子力5台稼働時に830万kWから890万kWへ拡大できるという参考試算です。
どちらも、蓄電池の接続枠が同じ量だけ増えることを示していません。
蓄電池事業者は、今回の数字を上位系統の運用変化を把握する材料として使い、実際の接続可否は個別の接続検討回答で確認する必要があります。
よくある誤解(Q&A)
Q
東京では蓄電池を52万kW追加接続できるのですか。
A: いいえ。52万kWは、N-1電制対象発電機の定格出力を用いた最大値です。蓄電池の接続可能量ではありません。
Q
関西の運用容量は890万kWに決まったのですか。
A: いいえ。890万kWは、2026年夏に原子力5台が稼働する条件での参考試算です。年間の公表値は830万kWです。
Q
N-1電制を導入すれば必ず空き容量が増えますか。
A: 必ず増えるわけではありません。対象発電機の運転状況、系統構成、混雑量、費用対便益によって効果が変わります。
Q
今回、新しい接続ルールが決まったのですか。
A: いいえ。今回の資料は、運用容量の算出方法と混雑対策を確認した報告です。
Q
北陸、四国、九州、沖縄には混雑がないのですか。
A: 今回の条件で抽出した基幹系統に、混雑が見込まれる地内系統がなかったという意味です。エリア内のすべての設備に混雑がないとは限りません。
出典(一次情報のみ)
会合名:第10回 将来の運用容量等の在り方に関する作業会
開催日:2026-06-26
中心資料:資料3「混雑が見込まれる地内系統の運用容量の算出等の確認について」
資料発行日:2026-06-26
対象範囲:混雑が見込まれる基幹系統の上位2電圧
東京北線:N-1電制は適用予定
関西890万kW:原子力5台稼働時の参考試算
参照日:2026-07-21
電力広域的運営推進機関
第10回 将来の運用容量等の在り方に関する作業会
https://www.occto.or.jp/iinkai/unyouyouryou_sagyoukai/10.html開催日:2026-06-26
電力広域的運営推進機関
第10回 将来の運用容量等の在り方に関する作業会 資料1「議事次第」
https://www.occto.or.jp/assets/unyouyouryousagyoukai_10_01.pdf発行日:2026-06-26
電力広域的運営推進機関
第10回 将来の運用容量等の在り方に関する作業会 資料3「混雑が見込まれる地内系統の運用容量の算出等の確認について」
https://www.occto.or.jp/assets/unyouyouryousagyoukai_10_03.pdf発行日:2026-06-26
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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