作成日:2026.05.14
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
電気は足りなくなる?電力制度改革は実装段階へ
〜第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の議事録で見えた「予備率3%」と5つの焦点〜
CONTENTS目次
要点まとめ
経済産業省・資源エネルギー庁は、第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」のページに議事録を掲載しています。
会合日は2026年3月27日、公式ページの最終更新日は2026年5月7日です。
2026年度の電力需給は、夏季・冬季ともに、全エリアで「安定供給に最低限必要な予備率3%」を確保できる見通しとされています。
ただし、一部電源の運転計画などを前提に含むため、「もう絶対に安心」とは言い切れません。
今回の焦点は、
①電気事業法改正案、②次世代電力産業、③燃料調達、④2026年度電力需給、⑤インバランス料金
とWG再編です。蓄電池ビジネスでは、特に市場整備、系統整備、需給調整の動きを確認する必要があります。
今回公表された内容:議事録掲載と5つの論点
1.公式ページで確認できる事実
公式ページには、第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の資料1〜10、参考資料、議事要旨、議事録が掲載されています。
開催日は2026年3月27日、最終更新日は2026年5月7日です。ここで注意したいのは、公式ページから確認できるのは「最終更新日」と「議事録PDFが掲載されていること」です。
そのため、記事では「2026年5月7日に議事録を公表した」と断定するより、「最終更新日が2026年5月7日の同ページに議事録が掲載されている」と書く方が正確です。
議事録によると、会合は2026年3月27日11時から13時52分までオンラインで開催されました。主な議題は、電気事業法改正案、次世代電力産業、燃料確保と電力・ガス安定供給、2026年度電力需給見通し、インバランス料金制度、WG再編です。
2.「決定」「案」「見通し」を分けて読む
今回の資料は、複数のテーマが一度に扱われています。
そのため、何が決まったのか、何が案なのか、何が見通しなのか
を分けて読む必要があります。まず、「議事録が掲載されていること」は公式ページで確認できる事実です。
一方、「電気事業法の一部を改正する法律案」は、2026年3月24日に閣議決定された法案です。
閣議決定とは、政府として法案を国会に提出する意思決定のことですが、法律が成立したという意味ではありません。
記事では「改正案」と表記する必要があります。また、2026年度の電力需給は「見通し」です。
現在の供給計画などを前提にした将来予測であり、発電所の停止、燃料価格、異常気象などで変わる可能性があります。
2026年度の電力需給:予備率3%は最低限の余白
1.夏冬とも全エリアで3%確保の見通し
資料8では、2026年度の夏季・冬季の電力需給見通しが示されています。
電力需給とは、電気を使う量と供給できる量のバランスのことです。
電気は大量に作り置きしにくいため、需要と供給をほぼ同じタイミングで合わせる必要があります。
ここで重要なのが予備率です。
予備率とは、電気を最も多く使う時間帯に対して、どれくらい余分な供給力があるかを示す割合です。
必要な電気が100で、供給できる電気が103なら、予備率はおおむね3%です。
資料8では、2026年度夏季・冬季ともに、全エリアで10年に一度の厳しい暑さ・寒さを想定しても、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しとされています。
2.ただし前提条件には注意が必要
「予備率3%を確保できる見通し」は、安心材料です。
ただし、「停電リスクがない」という意味ではありません。資料8では、東京エリアなどについて、柏崎刈羽原発6号機が2026年3月27日時点では営業運転に至っていないものの、見通し上は運転している計画として予備率に計上されています。
また、東京エリアでは、一般送配電事業者によるkW公募で最大約120万kWの追加供給力も見込まれています。
kWとは、瞬間的にどれだけ電気を出せるかを示す単位です。
一方、kWhは、どれだけの量の電気を使ったかを示す単位です。
予備率3%は、道路でいえば「最低限の空き車線」のようなものです。
通常時には安心材料になりますが、事故や渋滞が重なれば余裕は小さくなります。
電力でも、設備の計画外停止、燃料価格の上昇、想定を超える猛暑・厳寒が起きれば、需給は厳しくなり得ます。
電力制度改革の焦点:送電線・市場・燃料リスク
1.電気事業法改正案は投資と市場整備が柱
経産省は2026年3月24日、「電気事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定されたと発表しました。
改正案の柱の1つは、大規模送電線と大規模電源の整備促進です。
大規模送電線とは、大量の電気を遠くまで運ぶための設備です。
大規模電源とは、大きな発電所など大量の電気を供給できる設備です。
改正案では、送電線整備計画や大規模電源整備計画を経済産業大臣が認定し、電力広域的運営推進機関が財政投融資などを活用して必要資金を貸し付ける仕組みが示されています。
また、電力取引市場の整備も重要です。中長期市場は、将来の一定期間分の電気をあらかじめ取引する市場です。
需給調整市場は、電気の需要と供給のズレを調整する力を取引する市場です。
改正案では、これらの市場を法律上位置付け、経済産業大臣が指定・監督できる仕組みを設ける方向が示されています。
蓄電池は短時間で充放電できるため、需給調整や市場取引と関係し得ます。
ただし、今回の一次情報は、蓄電池の収益や参加条件を直接決めるものではありません。
2.燃料調達は在庫があってもリスクが残る
資料7では、日本の燃料調達の状況が整理されています。 2025年時点で、日本の原油輸入は中東依存度94.0%、ホルムズ依存度93.0%です。 一方、LNGは中東依存度10.8%、ホルムズ依存度6.3%で、原油に比べて調達先の分散が進んでいます。 LNGとは液化天然ガスのことで、天然ガスを冷やして液体にし、船で運びやすくした燃料です。
火力発電や都市ガスに使われます。資料7では、2026年1月末時点で石油備蓄が約8カ月分あること、電力・ガス会社が400万トン程度のLNG在庫を持っていることも示されています。
これはホルムズ海峡を経由するLNG輸入量の約1年分に相当すると説明されています。
ただし、在庫があることと、燃料価格が上がらないことは別問題です。
燃料価格が上がれば、火力発電コストや電力市場価格に影響する可能性があります。
3.インバランス料金とWG再編は実装段階のサイン
インバランスとは、電気の発電計画や需要計画と、実際の発電量・使用量のズレのことです。
このズレに対して発生する料金がインバランス料金です。資料9では、2026年10月1日以降、kW需給ひっ迫時補正インバランス料金のC値、つまり上限価格を300円/kWh、D値を50円/kWhとする見直し方針が示されています。
さらに、対象日の直前7日間でスポット市場価格200円/kWh以上のコマが30コマに到達した場合、翌日から上限価格を100円/kWhに引き下げる累積価格閾値制度を新設する方針も示されています。
また、資料10では、制度設計WGと制度検討作業部会を改組し、「電力安定供給WG」「電力事業環境整備WG」「中長期取引市場検討WG」を設置する方針が示されています。
中長期取引市場検討WGは、1年程度の時限設置とされています。
これは、電力制度改革が「方向性を議論する段階」から、「市場ルールを具体的に設計する段階」に進んでいることを示しています。
BESS NEWS視点:蓄電池事業者が確認すべきこと
1.市場制度の詳細が収益機会を左右する
今回の資料は、蓄電池だけを主役にしたものではありません。
しかし、BESS事業者に関係する論点は多く含まれています。
BESSとは、Battery Energy Storage Systemの略で、蓄電池システムのことです。
電気をためて、必要なときに出す設備です。
特に重要なのは、需給調整市場、中長期市場、インバランス料金です。
市場制度が整えば、蓄電池が調整力や供給力として評価される場面が広がる可能性があります。
ただし、今回の一次情報には、蓄電池の具体的な収益単価や参加条件は書かれていません。
実務では、中長期市場の商品設計、需給調整市場との併用可否、アグリゲーター経由の参加条件などを確認する必要があります。
アグリゲーターとは、複数の蓄電池、発電設備、需要家設備をまとめて制御し、市場取引や需給調整に参加する事業者のことです。
2.系統整備と個別接続条件は分けて見る
今回の電気事業法改正案では、大規模送電線や大規模電源への投資促進が示されています。
これは長期的には、再エネや蓄電池の導入環境にも関係し得ます。
ただし、系統整備が進むことと、個別のBESS案件がすぐ接続しやすくなることは同じではありません。
系統とは、発電所や蓄電池から需要家へ電気を送るネットワークのことです。
蓄電池を事業として使うには、系統へつなぐための条件確認が必要です。
実務では、接続検討、連系可能容量、工事負担金、出力制御、保護装置、通信要件などを案件ごとに確認する必要があります。
今回の一次情報は、個別案件の接続条件を示すものではありません。
3.ROIは制度変更だけで判断しない
ROIとは、投資したお金に対してどれだけ回収できるかを見る考え方です。
今回の一次情報には、蓄電池事業の具体的な収益単価は記載されていません。
そのため、ROIは一般論として次のように考えます。
ROI =(市場収入 + 電気料金削減効果 + 非常用・BCP価値 − 運用費 − 劣化・交換費 − 接続関連費)÷ 初期投資
BCPとは、災害や停電時にも事業を続けるための計画です。
制度変更だけを見て収益を過大評価するのは危険です。
実際には、蓄電池の劣化、充放電回数、PCS交換、保守費、接続工事費、入札参加要件、系統制約まで見て判断する必要があります。
よくある誤解(Q&A)
Q
予備率3%なら、2026年度は絶対に安心ですか?
A:
いいえ。
夏季・冬季とも予備率3%を確保できる見通しですが、設備停止、燃料価格、異常気象などのリスクは残ります。
Q
今回の議事録は、蓄電池制度を直接変えるものですか?
A:
直接の蓄電池制度改正ではありません。
ただし、需給調整市場、中長期市場、インバランス料金、系統整備は、蓄電池事業の環境に関係します。
Q
電気事業法改正案は、もう成立した法律ですか?
A:
いいえ。
一次情報では「改正案」が閣議決定されたとされています。記事では、成立済みの法律のように書かないことが重要です。
Q
インバランス料金の見直しは実施済みですか?
A: いいえ。資料9では、2026年10月1日以降の見直し方針として示されています。
Q
今回の資料で蓄電池の収益性は判断できますか?
A:
判断できません。
収益性は、今後の市場設計、案件条件、接続費用、運用費、劣化費用などを合わせて確認する必要があります。
出典(一次情報のみ)
経済産業省・資源エネルギー庁「第5回 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」
開催日: 2026-03-27 / 最終更新日: 2026-05-07 / 参照日: 2026-05-11
経済産業省・資源エネルギー庁「第5回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 議事録」
会合日: 2026-03-27 / 参照日: 2026-05-11
経済産業省「『電気事業法の一部を改正する法律案』が閣議決定されました」
発表日: 2026-03-24 / 参照日: 2026-05-110
経済産業省・資源エネルギー庁「資料4 次世代の電力産業の構築に向けて」
発行日: 2026-03-27 / 参照日: 2026-05-11
経済産業省・資源エネルギー庁「資料7 燃料調達をめぐる動向と電力・ガスの安定供給について」
発行日: 2026-03-27 / 一部表記修正: 2026-04-03 / 参照日: 2026-05-11
経済産業省・資源エネルギー庁「資料8 2026年度の電力需給見通しについて」
発行日: 2026-03-27 / 参照日: 2026-05-11
経済産業省・資源エネルギー庁「資料9 電力・ガス取引監視等委員会からの建議を受けた対応について」
発行日: 2026-03-27 / 見直し予定日: 2026-10-01以降 / 参照日: 2026-05-11
経済産業省・資源エネルギー庁「資料10 制度設計WG・制度検討作業部会の見直しについて」
発行日: 2026-03-27 / 参照日: 2026-05-11
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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