作成日:2026.08.24
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制度・政策・審議会
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
接続が決まる前に送電網を作る
——OCCTO貸付の2類型、財投枠は融資総額の3割まで
系統用蓄電池の開発で最大のボトルネックは、たいていの場合「系統の空きがない」ことです。空きを増やすには送電網を増強するしかありませんが、増強には長い時間がかかります。そして従来の順番はこうでした。誰かが接続を申し込む → 必要性が確認できる → 増強する。
2026年8月24日、第4回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会の資料2で、この順番を逆にする枠組みが示されました。接続希望が顕在化する前から送電網を先行整備し、その資金を電力広域的運営推進機関(OCCTO)が貸す。資料は「確認を受けた計画の整備については、電力広域的運営推進機関からの貸付けの対象に加える方向で必要な対応を進める」と明記しています。
本記事の実務価値は、貸付の条件が具体的な数値で出たことにあります。財政投融資を原資とする類型では、貸せるのは融資総額の3割以下(原則)。残りは民間金融機関が取る前提です。
接続が決まる前に送電網を作る枠組みができ、その資金はOCCTOが貸す。ただし財政投融資を原資とする類型で貸せるのは融資総額の3割以下(原則)であり、残る7割は民間金融機関が取る前提。系統整備のプロジェクトファイナンス市場が立ち上がるかどうかが、この制度の成否を決める。
1. なぜ「接続が決まる前」に整備するのか
出典:第4回 再エネ主力電源化小委 資料2 第1章(貸付制度は第2回 電力事業環境整備WG 資料4からの転載)。
送電網の増強は、必要性が確認できてから着工するのが原則でした。無駄な設備を作らないための建て付けです。ところがこの原則は、需要と電源の増え方が速いときには機能しません。データセンターの立地計画は数年単位で動きますが、送電網の増強は10年規模でかかることがあります。
資料2の第1章は、地内系統(エリア内の送電網)について、一般送配電事業者等が整備計画を作り、国とOCCTOがその内容を確認することで、先行的・計画的な整備を進める枠組みを示しました。
2. 計画の確認から貸付までの流れ
流れは3段です。
3段目が今回の要点です。資料2は「地域間連系線の例を参考に」と書いています。根拠となるのは、令和8年度特別国会で成立した改正電気事業法です。この法律には、大規模送電線・大規模電源の整備促進のほか、値差収益の国庫納付と、OCCTOへの補助を通じた整備への活用が含まれています。
3. 類型①と類型②の違い(原資・時期・上限)
類型①の対象費目には、工事費のほか調査・測量費用、先行発注関連費用等を含む。
貸付制度は2類型です。ここが本記事でいちばん実務に近い部分なので、表で整理します。
| 項目 | 類型① | 類型② |
|---|---|---|
| どういう場合か | 需要や電源の接続希望が顕在化する前から先行整備する場合 | 民間金融機関からの資金調達を行ってもなお必要な資金が不足する場合 |
| 原資 | 補助金 | 財政投融資 |
| 貸出時期 | 整備開始から、民間融資調達が可能となる時期まで | 民間融資調達開始から、設備運開まで |
| 貸出額 | 民間金融機関からの資金調達が可能となるまでに必要な額 | 融資総額の3割以下(原則) |
| 対象 | GX戦略地域(データセンター集積型)など、国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定 | (類型①のような地域限定の記載はなし) |
| 対象費目 | 工事費のほか、調査・測量費用、先行発注関連費用等を含む | — |
案件のライフサイクルで見ると、類型①がいちばん危ない時期を担当します。まだ接続希望が顕在化しておらず、民間金融機関が貸せる状態にない段階。ここを補助金原資で立て替える。そして民間が貸せる段階になったら類型②に移り、財政投融資を原資として、足りない分を融資総額の3割以下で埋めます。
4. 同年度に両方使えないという制約の意味
資料2は併用について、はっきり2つのことを書いています。一案件で、初期は類型①・リスクが下がった後は類型②と順に適用することは可能。ただし、同年度に両方の類型で貸し付けることはできない。
前者は自然な設計です。案件のリスクが下がるにつれて資金の出し手が変わっていく。後者が実務に効きます。同年度に併用できないということは、類型①から②への切替が年度単位で1回に制限されるということです。
5. 対象は「大規模かつ基幹的な系統」に限られる
ここは期待値を正しく持つために重要な部分です。資料2は対象範囲を限定しています。大規模かつ基幹的な系統に限り、一定以上の容量・電圧に係る設備を計画の対象とすることを基本とする、と。
さらに類型①の対象は、GX戦略地域(データセンター集積型)など、国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定と書かれています。つまり恩恵は2つの意味で偏ります。系統の階層(基幹系統かどうか)と、地域(GX戦略地域等かどうか)です。
6. 蓄電池の立地戦略にどう効くか
貸付制度の詳細は第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年8月25日)の資料で更新される可能性がある。
短期の案件収支に直接効く要素は、この資料にはありません。効くのは中期の系統見通しと立地戦略です。
接続希望の顕在化前に基幹系統が整備されれば、系統用蓄電池が接続できる余地は中期的に広がり、系統増強工事費負担金の水準にも影響し得ます。また類型①の対象が「国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみ」に絞られる予定であるなら、先行整備が起きる場所はあらかじめ絞られます。データセンターが集積する地域は、送電網が先に太くなる地域でもあるということです。
もう一つ、値差収益の国庫納付という論点があります。改正電気事業法には値差収益の国庫納付が含まれており、OCCTOへの補助を通じて整備に活用されます。値差収益とは、エリアをまたぐ電力取引で生じる価格差に由来する収益です。間接的には、市場参加者が系統整備の原資を負担する構造になっているとも読めます。
- GX戦略地域(データセンター集積型)の指定地域を確認し、自社案件の所在エリアとの重なりを整理する。
- 所在エリアの一般送配電事業者が地内系統の整備計画を策定・提出しているかを、同社公表とOCCTO公表で追跡する。
- 系統増強工事費負担金の見通しを、先行整備が進む前提と進まない前提の2本で持つ。
- 第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年8月25日)の配布資料で、貸付制度の実施方針の詳細を確認する。今回の詳細は第2回(2026年7月28日)資料4の転載として示されたものなので、第3回の資料で更新される可能性があります。
よくある質問
地内系統とは何ですか。
エリア内の送電網のことです。エリアをまたぐ地域間連系線と対比される呼び方で、資料2の第1章はこの地内系統の計画的な整備を扱っています。
OCCTOの貸付には2つの類型があるとのことですが、何が違うのですか。
類型①は需要や電源の接続希望が顕在化する前から先行整備する場合で、原資は補助金、貸出時期は整備開始から民間融資調達が可能となる時期まで、貸出額は民間金融機関からの資金調達が可能となるまでに必要な額です。類型②は民間金融機関からの資金調達を行ってもなお必要な資金が不足する場合で、原資は財政投融資、貸出時期は民間融資調達開始から設備運開まで、貸出額は融資総額の3割以下(原則)です。
財政投融資を原資とする類型②では、いくらまで貸してもらえるのですか。
融資総額の3割以下が原則とされています。残りは民間金融機関からの融資で調達する前提です。
類型①と類型②は同時に使えますか。
一案件で初期は類型①・リスク低減後は類型②と順に適用することは可能ですが、同年度に両方の類型で貸し付けることはできないと整理されています。
どの系統でも先行整備の対象になるのですか。
なりません。対象は大規模かつ基幹的な系統に限られ、一定以上の容量・電圧に係る設備を計画の対象とすることが基本とされています。さらに類型①については、GX戦略地域(データセンター集積型)など、国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定と示されています。
系統用蓄電池の事業計画には、いつどう反映すればよいですか。
短期の案件収支に直接効く数値は資料2に示されていません。反映先は中期の系統見通しと立地戦略です。GX戦略地域の指定状況と自社案件の所在エリアの重なりを整理し、系統増強工事費負担金の見通しを先行整備が進む前提と進まない前提の2本で持つのが現実的です。
値差収益の国庫納付とは何ですか。
令和8年度特別国会で成立した改正電気事業法に含まれる仕組みで、値差収益を国庫に納付し、OCCTOへの補助を通じて系統整備に活用するものです。値差収益はエリアをまたぐ電力取引で生じる価格差に由来する収益であり、間接的には市場参加者が系統整備の原資を負担する構造になっているとも読めます。
まとめ
- 2026年8月24日の第4回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会 資料2 第1章で、地内系統の計画的な整備をOCCTO貸付の対象に加える方向が示された。一般送配電事業者等が計画を作成し、国とOCCTOが内容を確認する枠組み。
- 貸付は2類型。類型①=接続希望の顕在化前の先行整備・原資は補助金・貸出時期は整備開始から民間融資調達が可能となる時期まで。類型②=民間調達でも不足する場合・原資は財政投融資・貸出額は融資総額の3割以下(原則)。
- 一案件で順に適用することは可能だが、同年度に両類型で貸し付けることはできない。
- 対象は大規模かつ基幹的な系統に限られ、類型①はGX戦略地域(データセンター集積型)など国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定。
- 時間軸は、再エネ起因の系統が2050年カーボンニュートラル、大規模需要起因の系統が今後10年程度。
- 短期収支ではなく立地戦略に効く情報。第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年8月25日)の配布資料で詳細を追う。
発行・監修
出典(一次情報)
- 第4回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会 開催資料ページ(2026年8月24日)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/004.html
- 資料2「電力ネットワークの次世代化について」(PDF)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/004_02_00.pdf
- 資料1「事業用太陽光発電におけるFIT/FIP制度の支援重点化について」(PDF・系統用蓄電池への言及はなし)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/004_01_00.pdf
※ 貸付制度の類型・原資・貸出時期・貸出額は、資料2に【参考】として転載された第2回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年7月28日)資料4の内容です。
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