作成日:2026.08.06
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
【2026年度案】見積書だけでは足りない?長期脱炭素電源オークションで蓄電池メーカー・型番まで登録へ
〜最大12区分・同一電源で複数LIBメーカー混在不可・認定付きLIBを優先〜
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、2026年度の「長期脱炭素電源オークション募集要綱案」を公表しました。
今回、蓄電池事業者にとって重要なのは、10月の登録時点で、導入する可能性が最も高い蓄電池について、メーカー名や型番を具体的に示す必要があることです。
見積書だけでなく、メーカー発行の証明書面、安全性、サイバーセキュリティ、地元調整、廃棄、故障時の復旧体制まで確認されます。
さらに、同じ1電源では、異なる電池種や複数メーカーのリチウムイオン蓄電池を組み合わせられません。
経済安全保障推進法に基づく認定付きリチウムイオン蓄電池は、認定のないものより先に落札判定される案です。この記事では、すべての系統用蓄電池に関係する話なのか、2025年度から何が変わるのか、実務でどこまで準備すべきかを整理します。
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
・2026年10月19〜23日の登録では、その時点で導入する可能性が最も高い蓄電池について、セルからBMS・EMS・PCSまでメーカー名や型番を示します。
・見積書だけでなく、メーカー発行の証明書面、安全性、JC-STAR、地元調整、廃棄・復旧体制など、案件に応じて最大12区分の資料が必要です。
・同じ1電源で異なる電池種や複数LIBメーカーを組み合わせる構成は認められず、経済安保認定付きLIBが先に落札判定されます。ただし、認定だけで落札が保証されるわけではありません。
まず確認:今回の対象は30MW・6時間以上の蓄電池
1.すべての系統用蓄電池が対象ではない
今回の登録ルールは、すべての系統用蓄電池に一律で適用されるものではありません。長期脱炭素電源オークションへ蓄電池として参加するには、主に次の要件を満たす必要があります。
・新設またはリプレースであること
・本オークションに参加する送電端容量が3万kW以上であること
・1日1回以上、連続6時間以上の運転が可能であること
・連続発電可能時間の年平均値が6時間以上であること
送電端容量とは、蓄電所の中で使う電力などを差し引き、実際に電力系統へ送り出せる出力です。3万kWは30MWです。例えば、2MW級の高圧系統用蓄電池1基は、単独では最低容量要件を満たしません。
また、複数電源をまとめて30MWにする場合でも、募集要綱案では各電源が3万kWに達する必要があるとされています。したがって、小規模案件を複数まとめれば参加できる、と単純には考えられません。
2.2026年度募集要綱はまだ「案」
今回公表された文書は、2026年度に応札する事業者や電源の参加要件、登録方法、落札決定方法などを示す募集要綱の案です。そのため、現時点では次のように区別して読む必要があります。
・募集要綱案に具体的に書かれた内容
・今後予定されている登録・応札日程
・正式版や業務マニュアルで確定する実務上の細部
記事公開時には、正式版が公表されたかを再確認し、正式決定前であればタイトルと本文に「案」と明記する必要があります。
2026年度案で新たに強まる3つのポイント
1.10月登録で「導入可能性が最も高い製品」を具体化
蓄電池事業者は、2026年10月19日から23日までの電源等情報登録期間に、「蓄電池に係る事業計画」を提出します。記載するのは、登録時点で導入する可能性が最も高い蓄電池です。登録対象には、次の設備が含まれます。
・セル
・モジュール
・電池システム
・蓄電システム
・BMS
・EMS
・PCS
BMSは、電池の温度や電圧、充電状態を監視する仕組みです。EMSは、蓄電所全体の充放電を管理する仕組みです。PCSは、蓄電池の直流電気と、電力系統で使う交流電気を変換する装置です。
セルから蓄電システムまでは、メーカー名と型番を記載します。BMS・EMS・PCSについては、メーカー名と型番に加え、JC-STAR適合ラベル登録番号も記載します。
10月までに最終発注を終えることまでは求められていません。しかし、メーカーや型番が決まっていない状態で登録し、落札後に自由に製品を選ぶ仕組みでもありません。実務上は、登録前にメーカー候補を相当程度絞り込む必要があります。
2.同一電源で異なる電池種・複数LIBメーカーを混在できない
2026年度案では、次の構成を1つの電源・ユニット・号機として登録することは認められません。
・リチウムイオン蓄電池と、それ以外の蓄電池を組み合わせる構成
・複数メーカーのリチウムイオン蓄電池を組み合わせる構成
LIBとは、Lithium-ion Batteryの略で、リチウムイオン蓄電池を意味します。例えば、同じ登録電源にA社製LIBとB社製LIBを組み合わせ、調達先を分散する構成は認められません。
一方、同じ事業地全体で複数メーカーを一切使えない、とまでは書かれていません。ただし、別電源に分ける場合でも、原則として各電源が30MW以上・6時間以上の要件を満たす必要があります。したがって、「別ユニットに分ければ簡単に解決できる」とは限りません。
3.経済安保認定付きLIBを先に落札判定
2026年度案では、経済安全保障推進法に基づく蓄電池の供給確保計画について、認定を受けたメーカーのセルを使うLIBが優先されます。認定付きLIBを先に落札判定し、その後もLIBの募集上限40万kWに空きがある場合に、認定のないLIBが判定対象となります。
ただし、認定付きLIBであれば必ず落札できるわけではありません。認定付きLIB同士でも、原則として応札価格の低い電源から判定されます。
また、認定対象となるのは、認定メーカーや、そのメーカーが株式・持分の50%超を支配する子会社・孫会社が、自ら保有する製造拠点で製造したセルです。第三者の工場へ製造を委託したOEM品は、認定付きセルとして扱われません。メーカー名だけでなく、実際の製造会社と製造拠点まで確認する必要があります。
最大12区分の資料は何を確認するのか
1.12区分すべてが全案件で必要とは限らない
「蓄電池に係る事業計画」には、添付資料1から12までの枠があります。主な内容は次のとおりです。
・添付資料1:見積書、メーカー発行の証明書面
・添付資料2〜3:安全性証明、類焼試験資料
・添付資料4:経済安保認定の証明
・添付資料5:リユース電池の第三者証明
・添付資料6:過去10年間の発煙・発火事故と対策
・添付資料7:JC-STAR、セキュリティ対策、システム構成図
・添付資料8:地元調整資料、説明会等の議事録
・添付資料9〜10:広域認定、廃棄依頼を拒まない旨の誓約
・添付資料11〜12:早期復旧、交換用セル・PCSの供給体制
経済安保認定やリユース電池、事故実績など、採用する設備や案件条件によって必要資料は異なります。したがって、「すべての案件で同じ12点が必須」ではなく、案件に応じて最大12区分と理解するのが正確です。
2.見積書に加えてメーカー発行の証明書面が必要
添付資料1の見積書には、主に次の内容が必要です。
・発行日
・宛名
・納入先
・出力kW・容量kWh
・型番
・単価
・個数
・合計金額
・非LIBの場合はセル製造国・地域
さらに、その案件で使用する蓄電池について、有効な見積書を発行していることをメーカーが証明する書面も必要です。この証明書面は、当該メーカーが発行したものに限られます。
一方、募集要綱案には「メーカー確認書」という正式名称はありません。代理店やEPC事業者が作成した見積書が一律に認められない、とまでは書かれていません。重要なのは、別途メーカー自身の証明書面を取得できるかどうかです。
3.安全・セキュリティ・地元調整・廃棄・復旧まで審査
審査は、蓄電池の価格や容量だけではありません。安全性では、主にLIBについて、JIS C 8715-2またはIEC 62619への適合を示す第三者証明や、類焼試験の証明・温度記録・試験写真などを提出します。
セキュリティでは、BMS・EMS・PCSなどの主要機器について、JC-STARの★1適合ラベルを示します。さらに、対象機器、機器同士のつながり、外部通信、クラウド接続、セキュリティ対策が分かるシステム構成図も必要です。
地元調整では、次の関係者へ説明・相談します。
・土地の地権者
・立地市町村の企業立地担当部署
・敷地境界から100m以内の住民
・敷地境界から100m以内の事業者
対象は2026年度内に実施した説明会等で、ポスティングだけの対応は認められません。説明会等の議事録も必須です。ただし、近隣住民全員の同意書が必要、と書かれているわけではありません。求められているのは、説明・相談を行い、立地に支障が生じていないことを資料で示すことです。
このほか、廃棄物処理法上の広域認定、メーカーが廃棄依頼を拒まない旨の誓約、故障時の復旧体制、交換用セルやPCSの供給体制まで確認されます。
登録後の変更と不備対応は自由ではない
1.メーカー・型番の変更には再提出・再審査
登録時点で示すのは、導入する可能性が最も高い蓄電池です。その後、登録した事業計画の内容を変更する場合は、落札後に計画を再提出し、再審査に合格しなければ変更は認められません。主な対象は次のとおりです。
・メーカー・型番
・安全設計
・発煙・発火事故への対応
・セキュリティ対策
・地元調整
・廃棄・リサイクル体制
・故障時の復旧・部品供給体制
特に、非LIBで登録したセル製造国・地域は、登録後に変更できません。つまり、「仮のメーカーで登録し、落札後に最も安い製品へ自由に切り替える」という調達方法には、再審査で認められないリスクがあります。
2.修正できるのは不合格となった項目
提出資料に不備があり、その旨を通知された場合は再申込みができます。ただし、修正できるのは不合格となった項目だけです。一度合格となった項目は、同じ電源等情報登録審査の途中では修正できません。
また、次のような場合は、応札が認められません。
・必要資料を提出できない
・記載欄が空欄である
・必要なチェックがない
・内容が不十分である
登録後に整えればよいと考えるのではなく、提出前にメーカー、EPC、応札事業者が内容を照合しておく必要があります。
2025年度から変わる点・変わらない点
1.新規・明確化されたのは設備構成、メーカー証明、経済安保
2025年度の正式募集要綱と比べると、2026年度案で特に変わるのは次の点です。
・異なる電池種の組み合わせ
2025年度は、LIBと非LIBを組み合わせる場合、出力比率が最も大きい電池種で申告する仕組みでした。2026年度案では、同じ1電源として組み合わせること自体を認めません。
・複数LIBメーカー
2026年度案では、複数メーカーのLIBを同じ1電源に組み合わせることを明確に禁止しています。
・見積関係の資料
2026年度案では、見積書の必要記載事項が具体化され、メーカー発行の証明書面も追加されました。
・経済安保認定
認定有無の登録、認定証明資料の提出、認定付きLIBを先に落札判定する仕組みが加わりました。
・非LIBのセル製造国
2025年度は、出力比率が最大の国・地域を記載し、それ以外の国・地域や比率は変更可能でした。2026年度案では、1電源内のセル製造国・地域を1つに限定します。
2.JC-STARや地元調整などは従来から存在
注意したいのは、最大12区分の資料すべてが、2026年度から新しく追加されたわけではないことです。2025年度にも、次の内容はすでに求められていました。
・セルからPCS・EMSまでのメーカー・型番
・有効期限内の見積書
・JIS・IECへの適合証明
・類焼試験資料
・発煙・発火事故の資料
・JC-STARとシステム構成図
・敷地境界から100m以内を含む地元調整
・広域認定、廃棄、復旧、交換部品の供給体制
2026年度案では、地元調整について「2026年度内に実施」「ポスティング不可」「議事録必須」といった条件がより具体的になりました。
今回の変更を、「12種類の新しい書類が一斉に追加された」と説明するのは正確ではありません。正しくは、従来からある審査に加え、設備構成の制限、メーカー証明、経済安保認定による優先判定などが追加・明確化されたと整理できます。
実務で今から確認すべきこと
1.10月19〜23日の登録から逆算して準備
2026年度案で示された主な予定は次のとおりです。
・事業者情報登録:2026年10月13日〜10月16日
・電源等情報登録:2026年10月19日〜10月23日
・電源等情報審査:2026年10月26日〜12月8日
・期待容量登録:2026年12月9日〜12月15日
・応札受付:2027年1月19日〜1月26日
蓄電池に係る事業計画は、原則として10月19日から23日の登録期間中に提出します。実務では、次の順番で準備すると整理しやすくなります。
1.参加する1電源の範囲を決める
2.メーカー・型番・セル製造拠点を確認する
3.見積書とメーカー発行の証明書面を取得する
4.安全・JC-STAR・事故情報を確認する
5.地元調整を実施し、議事録を作成する
6.廃棄・復旧・交換部品の資料をそろえる
登録開始後にメーカーへ一斉に資料を依頼するのではなく、事前に資料一覧と担当者を決めておく方が安全です。
2.蓄電池計画とは別に接続検討回答書も確認
最大12区分の資料とは別に、電源等情報登録では設備容量を確認する資料として、接続検討回答書も求められます。募集要綱案では、回答書を提出できない場合、オークション参加資格通知書が発行されず、応札できないとされています。
証憑としては、2023年6月21日以降に発行された接続検討回答書について、有効期限を問わず受け付ける案です。すでに接続契約申込み以降へ進んでいる場合は、そのことが分かる資料と回答書を提出します。
蓄電池メーカーの資料だけをそろえても、接続検討回答書がなければ応札へ進めない可能性があるため、別の管理項目として確認する必要があります。
3.提出期限の延長は自動ではない
募集要綱案では、提出書類は原則として電源等情報登録時に提出します。ただし、新設電源などで、登録時に合理的な理由によって書類を提出できない場合は、提出期限を延長する場合があるとも記載されています。
一方、「蓄電池に係る事業計画」では、規定された資料を提出できない場合や、記載内容が不十分な場合、応札が認められない可能性があるとされています。したがって、期限延長は自動的な救済措置ではありません。
どの資料が、どのような理由なら延長対象になるのかは案の段階では明確ではないため、延長を前提とした準備計画は避けるべきです。
4.まだ未定の論点
現時点では、次の点は正式版や容量市場業務マニュアル、OCCTOへの個別確認が必要です。
・正式版での最終的な提出資料・審査条件
・登録ファイルの形式や具体的な操作手順
・提出期限延長が認められる条件
・同じ事業地で別電源・別ユニットとする場合の具体的な区切り方
・共用するEMS・PCS・変圧器がある場合の登録方法
・登録後の変更で再審査される具体的な範囲
特に複数メーカーを別電源へ分ける場合、各電源が30MW以上・6時間以上の要件を満たす必要があるため、登録単位を分ければ解決するとは限りません。一次情報に具体例が示されるまでは、個別案件で断定しないことが重要です。
よくある誤解(Q&A)
Q
2MW程度の系統用蓄電池も今回の対象ですか?
A: 単独では対象になりません。蓄電池は、本オークションに参加する送電端容量が30MW以上であることなどが必要です。
Q
10月までに蓄電池を最終発注する必要がありますか?
A: 最終発注済みであることまでは求められていません。ただし、導入する可能性が最も高いメーカー・型番を示し、有効な見積書やメーカー発行の証明書面を提出する必要があります。
Q
最大12区分の資料は、全案件ですべて必要ですか?
A: いいえ。経済安保認定、リユース電池、事故実績など、設備や案件の条件によって必要資料が異なります。
Q
同じ事業地では複数のLIBメーカーを使えないのですか?
A: 同じ事業地全体で禁止されているとは書かれていません。明記されているのは、複数メーカーのLIBを同じ1電源・ユニット・号機に組み合わせられないという内容です。ただし、別電源に分ける場合も各電源の最低容量要件に注意が必要です。
Q
経済安保認定付きLIBなら必ず落札できますか?
A: 必ず落札できるわけではありません。認定付きLIBが先に判定されますが、認定付きLIB同士でも応札価格などによる競争があります。
Q
地元住民全員から同意書を取得する必要がありますか?
A: 全員の同意書が必要とは書かれていません。地権者、自治体、敷地境界から100m以内の住民・事業者へ説明・相談し、議事録などで状況を示す必要があります。
出典(一次情報のみ)
電力広域的運営推進機関「容量市場 長期脱炭素電源オークション募集要綱(応札年度:2026年度)及び長期脱炭素電源オークション 容量確保契約約款に関する意見募集」
https://www.occto.or.jp/iken/000606.html掲載・更新日:2026-07-21
意見提出期限:2026-08-03 17:00
参照日:2026-08-03
電力広域的運営推進機関「容量市場 長期脱炭素電源オークション募集要綱(応札年度:2026年度)(案)」
https://www.occto.or.jp/assets/2026_tyouki_bosyuyoko.pdf公表日:2026-07-21
主な参照箇所:募集スケジュール、参加要件、電源等情報登録、落札電源の決定方法、様式4「蓄電池に係る事業計画」
参照日:2026-08-03
電力広域的運営推進機関「容量市場 長期脱炭素電源オークション募集要綱(応札年度:2025年度)」
https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/jitsujukyukanren/files/250903_boshuyoukou_long_2025.pdf発行日:2025-09-03
主な参照箇所:様式4「蓄電池に係る事業計画」
参照日:2026-08-03
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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