作成日:2026.06.23
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
予約した電気”を使わないと費用請求?30MW以上の大口需要に新ルール案!
〜「蓄電池」から「電源システム」へ。国の新戦略を、購入・投資・事業判断に使える形で整理します〜
2026年6月10日に開催された第11回「次世代電力系統ワーキンググループ」で、データセンターや大規模工場などが確保した電力系統の容量を、計画どおり使わない場合の新たな規律が議論されました。
ここでいう“予約した電気”とは、電気そのものの取り置きではありません。将来の使用に備えて確保する系統容量(送電線や変電所で電気を安全に流せる余力)のことです。
今回示された「30MW以上」「1年猶予」「原則6年」などは、主に制度案です。一方、工事費負担金の支払期限など、一部の手続きは2026年10月1日の運用開始が予定されています。何が案で、何が開始予定なのかを分けて見ていきます。
CONTENTS目次
要点まとめ
・最終契約電力30MW以上の大口需要に、容量開放や費用精算を適用する案が示されました。
・契約電力に関する規律は2027年度初頭の開始を目指し、手続き面の規律は2026年10月1日の開始予定です。
・大口需要の容量が開放されることで、蓄電池の接続対策が不要になる可能性も議論されましたが、扱いは未定です。
今回の議題はこの2本
1.主題は大口需要による系統容量の「空押さえ」対策
資料1では、データセンターや大規模工場などが確保した系統容量を計画どおり使わない場合の対策が議論されました。主な論点は、次の2つです。
・使われていない容量をほかの利用者に開放する「容量開放」
・需要家のために整備した設備の費用を精算する「費用精算」
今回の記事では、この需要側の空押さえ対策を中心に解説します。
2.系統用蓄電池の接続検討上限とは別の制度
同じWGの資料2では、系統用蓄電池を中心とした接続検討件数の上限も示されています。接続検討とは、蓄電池や発電設備を電力系統につなげるか、送電線や変電所の状況を調べる手続きです。ただし、接続検討上限と今回の大口需要規律は別の制度です。
・接続検討上限は、大量の申込みが集中する問題への対策
・大口需要規律は、確保済みの容量が使われない問題への対策
対象者と開始時期が異なるため、同じルールとして扱わないことが重要です。
なぜ大口需要への規律が必要なのか
1.「予約した電気」とは系統容量のこと
電力系統は、送電線や変電所を多くの事業者や需要家が共同で利用する仕組みです。
地域や設備ごとに流せる電気の量には限りがあります。そのため、大口需要家が将来使用する予定の容量を確保すると、その分だけ、ほかの利用者が使える余力は小さくなります。
座席数が限られた会場で、利用予定のない席を長期間予約し続ければ、ほかの人が入れません。
電力系統でも、これに近い状態が起こります。さらに、大口需要に備えて変電所や変圧器を増設した後に計画が縮小すると、使われない設備と費用が残ります。
資料1では、こうした費用が託送料金、つまり送配電網を利用するための料金に影響するおそれも示されています。
2.段階別契約では使われない容量が残りやすい
段階別契約とは、電気の使用量を複数の段階に分けて増やす契約です。たとえば、次のような計画です。
・1年目は10MW
・3年目は30MW
・最終的には50MW
途中段階の開始を延期したり、使用量を引き下げたりしても、最終段階の50MWを変更しなければ、50MW分の系統容量が確保され続ける場合があります。そこでWGでは、途中段階で使われない容量を戻す「容量開放」と、最終規模に到達しない場合の「費用精算」を分けて検討しています。
何が示されたのか
1.まず「案・予定・未定」を分けて読む
今回の資料で示された内容は、次のように分けられます。
「案」として示されたもの
・大規模需要の基準を最終契約電力30MW以上とする
・既存契約にも容量開放や費用精算を適用する
・費用精算までの猶予を1年とする
・段階別契約の最長期間を原則6年とする
「開始予定」とされているもの
・工事費負担金の支払期限など、手続き面の規律を2026年10月1日から運用する
「開始を目指す」とされているもの
・契約電力に関する規律を2027年度初頭から適用する
「未定」のもの
・容量開放の対象地域を判断する具体的な基準
・費用精算額の計算方法
・蓄電池側で不要になった対策費の補償
数字が示されたことと、制度として正式に決定したことは同じではありません。
2.対象は最終契約電力30MW以上、既存契約も含む案
対象となる「大規模需要」は、最終契約電力30MW以上の特別高圧需要家とする案です。
最終契約電力とは、段階的に電気の使用量を増やす計画で、最終的に契約する電力の大きさです。
30MWは30,000kWです。主にデータセンターや大規模工場などが想定されています。
この30MWという基準は、2020年度以降に新設され、現在契約が成立している特別高圧需要家のうち、上位約1割が対象になるよう設定する考え方です。
また、新規の申込みだけでなく、すでに契約済みでも最終契約電力に達していない需要家を対象に含める案です。
適用開始は2027年度初頭を目指すとされています。ただし、契約を複数に分けて30MW未満に見せる「容量分割」が行われていないかを確認し、必要に応じて対象を見直す方針も示されています。
3.容量開放と費用精算は対象場面が異なる
容量開放と費用精算は、同じ仕組みではありません。
容量開放は、段階別契約の途中段階で、契約電力を引き下げたり、供給開始を延期したりする場合を対象とする案です。
全国一律ではなく、接続申込みが多く、空き容量が少ない地域などに対象を絞る方向です。
一方、費用精算は、通常契約や段階別契約の最終契約電力が計画どおり設定されない場合を対象とします。
こちらは系統が混雑しているかどうかにかかわらず、全エリアに適用する案です。
資料では、一般送配電事業者が要した費用を小売電気事業者へ請求する整理が示されています。
需要家へ直接請求すると明記されているわけではありません。
需要家が最終的にどのように負担するかは、今後の規程や小売電気事業者との契約を確認する必要があります。
4.猶予は1年、段階別契約は原則6年の案
容量開放と費用精算には、需要家が計画を変更する余地として、それぞれ1年間の猶予を設ける案が示されています。
また、段階別契約の最長期間を原則6年とする案も示されました。
これは、現在の段階別契約のおよそ9割をカバーする期間として設定されたものです。
ただし、一般送配電事業者側の系統工事に時間がかかり、6年を超える場合などの例外は今後整理されます。
1年を超える延期についても、災害で設備が被災した場合など、明確に確認できる事情に例外を限定する案です。
資機材の納入遅れや一般的な建設遅延が、必ず例外として認められるわけではありません。
5.2026年10月1日予定の手続きは30MW未満にも関係
契約電力に関する規律とは別に、次の手続きは2026年10月1日から運用を開始する予定です。
・供給承諾から3か月以内に、小売電気事業者を介して工事費負担金を入金する
・需要家都合の不備や変更が契約申込みに生じた場合、申込みを取り消す
・契約電力の変更が技術検討に影響する場合、改めて申込みを行う
供給承諾とは、一般送配電事業者が、提示した条件で電気を供給できると認めることです。
工事費負担金とは、電力供給に必要な送電線や変電設備の工事費の一部を、申込者側が負担するものです。
重要なのは、これらの手続きの対象が「30MW以上」ではなく「特別高圧需要家」とされている点です。
30MW未満でも、特別高圧で受電する計画であれば確認が必要です。なお、技術検討結果の回答と供給承諾を同時に通知する運用は、今回の資料では引き続き提案段階です。
誰に影響し、実務で何を確認すべきか
1.大口需要家は契約電力と建設工程を照合
30MW以上を計画するデータセンターや大規模工場は、次の項目を早めに確認する必要があります。
・最終契約電力
・各段階の契約電力
・最初の供給開始予定日
・最終規模での供給開始予定日
・建物や設備の完成予定日
・実際に電力需要が立ち上がる時期
・工事費負担金の社内決裁と支払工程
・計画変更時の小売電気事業者への連絡手順
既存契約も対象となる案のため、「すでに契約済みだから関係ない」とは限りません。最終契約電力と実際の事業計画に大きな差がある場合は、関係規程の改定前から見直しを検討する必要があります。
2.蓄電池事業者は接続条件の前提変更に注意
第11回WGの議事要旨では、大口需要の容量開放によって、すでに契約した蓄電池の順潮流側対策が不要になる可能性が指摘されました。
順潮流側対策とは、ここでは蓄電池が系統から電気を受けて充電する方向に関係する設備対策です。
ただし、これはWGで決定された制度ではなく、オブザーバーから示された問題提起です。
すでに発注した対策費を補償できるかという質問に対して、事務局は、民法上の対象となるかを含めて実例を踏まえて検討すると回答しています。
蓄電池事業者は、次の内容を記録しておくことが重要です。
・接続条件が示された時点の系統状況
・一般送配電事業者から求められた対策内容
・工事や機器の発注状況
・解約条件やキャンセル費用
・設計変更に必要な費用
容量が開放されたとしても、蓄電池の接続条件が自動的に変わるとは限りません。
何がまだ未定なのか
1.容量開放の地域基準と費用の計算方法
容量開放の対象地域は、系統の空き容量をもとに判断する方向です。ただし、どの程度の空き容量になれば対象とするのか、具体的な基準はまだ示されていません。
また、変電所や変圧器などを複数の需要家が利用する場合、個別需要家のためにかかった実費を分けることが難しくなります。
資料では、需要規模に応じた推定方法を用いる案が示されていますが、計算式や対象費用は未定です。
現時点で需要家ごとの費用負担額を正確に試算することはできません。
2.蓄電池の既発注費補償と最終的な規程
容量開放によって不要になった蓄電池側の設備対策について、補償の有無や条件は決まっていません。このほか、次の論点も今後の検討事項です。
・段階別契約が6年を超えられる具体的な条件
・容量開放後の通知方法と時期
・30MW基準を見直す条件
・費用精算の対象となる設備費
・既存契約への具体的な適用方法
実務では、WG資料だけで判断を完結させず、今後公表される約款や要領の改定内容を確認する必要があります。
よくある誤解(Q&A)
Q
30MW以上への新ルールは、すでに正式決定したのですか?
A: いいえ。30MW、1年の猶予、原則6年などは、第11回WGで示された案です。今後、関係規程の改定が必要です。
Q
供給開始が1年遅れたら、需要家に直接請求書が届くのですか?
A: 資料では、一般送配電事業者が小売電気事業者へ費用を請求する整理です。需要家の最終的な負担方法や金額は、今後の規程や契約によります。
Q
容量開放も費用精算も、全国一律ですか?
A: 同じではありません。容量開放は対象地域を絞る案ですが、費用精算は全エリアに適用する案です。
Q
30MW未満なら、今回の変更はすべて関係ありませんか?
A: そうとは限りません。2026年10月1日開始予定の手続き規律は、30MW以上ではなく特別高圧需要家が対象です。
Q
容量が開放されれば、蓄電池は必ず接続しやすくなりますか?
A: 必ずではありません。接続地点や系統状況、契約時期によって異なります。蓄電池への影響は現時点では検討論点です。
出典(一次情報のみ)
本記事は、2026年6月10日に開催された第11回「次世代電力系統ワーキンググループ」の開催ページ、資料1、資料2、議事要旨を参照しています。開催ページの最終更新日は2026年6月15日です。
契約電力に関する規律は、2027年度初頭からの適用開始を目指す案です。工事費負担金の支払期限など、手続き面の規律は、2026年10月1日付で関係規程類を改正し、同日から運用を開始する予定とされています。
参照日:2026年6月18日
編集上の分類には、添付の「設定_カテゴリ Ver.2.0」を参照しています。
経済産業省「第11回 次世代電力系統ワーキンググループ」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/011.html開催日:2026-06-10 最終更新日:2026-06-15 参照日:2026-06-18
資源エネルギー庁「資料1 局地的な大規模需要に対する規律確保について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/011_01_00.pdf発行日:2026-06-10 参照日:2026-06-18
資源エネルギー庁「資料2 系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/011_02_00.pdf発行日:2026-06-10 参照日:2026-06-18
資源エネルギー庁「第11回 次世代電力系統ワーキンググループ 議事要旨」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/011_gijiyoshi.pdf会議日:2026-06-10 参照日:2026-06-18
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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