作成日:2026.08.13
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系統アクセス/ノンファーム
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#契約・工事・連系
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
系統用蓄電池は“量”から“貢献”へ!補助金・接続・運用で国が示した次の評価軸
〜令和7年度補正の評価方針と、系統接続・DR・サイバー対策の全体像〜
資源エネルギー庁は2026年7月28日、「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループでの議論について」を公表しました。この資料は、7月28日に新制度を始めることを発表したものではありません。家庭や企業に置く蓄電池、DR、系統用蓄電池、再エネ併設蓄電池について、今後どのような設備・運用を支援し、どのようなルールを整えていくかをまとめた政策パッケージです。
その中で特に注目したいのが、2025年12月末時点で、系統用蓄電池の連系済み量が64万kWである一方、契約申込み量は約3,000万kWに達していることです。単純比較では約47倍の開きがあります。この大きな開きを前に、国が示した方向性は、蓄電池をただ増やすだけではありません。どこに設置し、どの市場で運用し、再エネや送電網にどう役立てるかまで含めて、電力システムへの貢献を重視するものです。
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
・系統用蓄電池は、連系済み64万kWに対し、契約申込みが約3,000万kWまで積み上がっています。ただし、この差だけで「大半の案件が失敗する」と判断することはできません。
・国は、蓄電池の導入量だけでなく、卸電力市場の活用、系統混雑の緩和、サプライチェーン、地域共生などを重視する方向を示しました。
・令和7年度補正では、一部が具体的な公募方針として示されましたが、接続制度やサイバー対策などには、まだ検討段階の内容も含まれます。
7月28日資料は「新制度の施行」ではなく政策パッケージの整理
2-1.今回具体化したのは令和7年度補正の公募方針
7月28日資料は、需要側蓄電池、DR、系統用蓄電池、再エネ併設蓄電池を一つの「分散型エネルギーリソース」として整理しています。
DR(デマンド・リスポンス)とは、電力の需給状況に合わせて、家庭や企業が電気を使う量や時間を変える取組です。
資料の大部分は、これまでのワーキンググループで示された課題と、今後の施策の方向性をまとめたものです。
その中で具体性が高いのが、令和7年度補正予算における系統用蓄電池導入支援事業の公募方針です。資料では、再エネ出力制御の抑制、サプライチェーン強靱化、地域共生について、採点審査での評価や必須要件が示されています。
ただし、これは「公募の方針」です。申請条件、配点、提出書類などの最終的な実務は、公表される公募要領で確認する必要があります。
2-2.接続・DR・サイバー対策の多くは今後の方向性
一方、次の内容は、7月28日から一斉に始まった新制度ではありません。
・系統情報の公開拡充
・ノンファーム型接続の検討
・系統用蓄電池の地域共生ガイドライン
・低圧機器のIoT化支援
・DRready対象機器の拡大
・JC-STAR★2以上の基準整備
・機器利用に関するガイドライン整備
「検討」「方針」「支援」「要件」といった言葉を区別して読むことが重要です。今回の資料から分かるのは、すべての制度内容や開始日が決まったことではなく、国が今後どこを重点化しようとしているかです。
連系済み64万kWに対し、契約申込みは約3,000万kW
3-1.単純比較で約47倍、ただし「失敗率」ではない
資料によると、2025年12月末時点の系統用蓄電池は、次の状況です。
・連系済み量:64万kW
・契約申込み量:約3,000万kW
契約申込み量は、連系済み量の約47倍です。ただし、ここでいう約3,000万kWは「接続検討の申込み」ではなく、契約申込み量です。
また、この数字には再エネ併設蓄電池の導入量は含まれていません。さらに、連系済み量はすでに運転段階へ進んだ設備、契約申込み量はこれから工事や契約手続きを進める案件です。
段階が異なるため、この差をそのまま「約98%が失敗する」「約98%が架空案件である」と読むことはできません。この数字が示しているのは、連系まで進んだ設備に比べて、将来案件が非常に多く積み上がっているという事実です。
3-2.2040年度280万〜1,000万kWは政府目標ではない
資料では、系統用・再エネ併設蓄電池の2040年度導入見通しとして、280万〜1,000万kWという幅が示されています。ただし、資料は、この数値について政府目標ではないと明記しています。外部機関が、現在の導入状況や将来のコスト、電力システム全体の費用を抑える考え方などを基に試算した「見通し」です。したがって、
・2040年度に最低280万kWを導入する政府目標
・1,000万kWまで必ず導入される予測
・約3,000万kWの契約申込みがすべて連系する見通し
という意味ではありません。
系統用蓄電池は「容量」だけでなく「どう使うか」が評価軸に
4-1.調整力だけでなくアービトラージにも活用
資料は、現在の系統用蓄電池について、調整力としての活用が中心であり、アービトラージへの活用は限定的だと整理しています。
調整力とは、電気の需要と供給のずれを短時間で調整する力です。アービトラージとは、電力価格が安い時間に充電し、高い時間に放電して価格差を活用する運用です。
国は、今後、調整力だけでなくアービトラージにも活用し、再エネの余剰電力を吸収できる蓄電池を重点的に導入・運用する方向を示しています。
これは、蓄電池の価値を「何MWあるか」だけでなく、「いつ充電し、いつ放電するか」で評価する考え方です。
4-2.系統混雑を緩和する立地・運用を促す
蓄電池は、どこに設置しても同じように電力系統へ貢献するわけではありません。送電線が混雑しやすい場所で、混雑を悪化させない時間に充電し、必要な時間に放電できれば、系統増強や再エネ出力制御の抑制に役立つ可能性があります。
そのため資料では、系統混雑の緩和に貢献する立地や運用へ誘導する必要性を課題として挙げています。事業者にとっては、単に土地価格や接続費だけで場所を選ぶのではなく、その地点で蓄電池がどのような運用を求められる可能性があるかも重要になります。
4-3.再エネ併設蓄電池はFITからFIPへの移行も視野
再エネ発電所に併設する蓄電池については、FITからFIPへの移行などを通じて、再エネを電力市場へ統合していく方向が示されています。
FITは、再エネ電気を固定価格で買い取る制度です。FIPは、市場で電気を売る収入に一定のプレミアムを上乗せする制度です。再エネ併設蓄電池を使えば、発電した電気をそのまま売るだけでなく、価格や系統状況に応じて充電・放電する運用が可能になります。ただし、資料に示されたのは導入促進の方向性です。FITからFIPへの移行が全案件に義務化されたわけではありません。
令和7年度補正で示された4つの評価・要件
5-1.卸電力市場の利用計画は高評価、運用実績も確認
令和7年度補正の公募方針では、年間に電力市場で取引する電力量のうち、卸電力取引市場での取引量を一定割合以上とする事業計画を、採点審査で高く評価するとしています。
卸電力取引市場とは、発電事業者や小売電気事業者などが電気を売買する市場です。重要なのは、計画を書くだけでは終わらないことです。採択後は、事業計画に沿った運用が行われたかを「活用状況報告書」で確認するとされています。
つまり、補助金審査は設備導入時だけでなく、導入後の使い方まで確認する方向です。なお、「一定割合」が何%なのかは、7月28日資料には記載されていません。
5-2.将来の系統混雑緩和策への協議は必須
将来、系統混雑を緩和する新しい仕組みが整備された場合、必要なエリアでは、その仕組みの適用について一般送配電事業者との協議に応じることが必須要件とされています。
ここで求められているのは、現時点で特定の制御方式を導入することではありません。将来、制度が整備された場合に、一般送配電事業者との協議を拒まず、必要な対応を検討することです。
実際の対象エリア、制御方法、費用負担などは、今後整備される制度によって決まります。
5-3.認定メーカーの「自社拠点製造セル」を高評価
サプライチェーン強靱化では、経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定を受けたメーカーが、自ら保有する製造拠点で製造したセルを採用する案件を高く評価するとしています。
セルとは、蓄電池を構成する最小単位の電池です。第三者への委託やOEMにより、認定メーカーが保有する拠点以外で製造されたセルは、この高評価の対象には含まれません。
ただし、これは「OEMセルを使った案件はすべて補助対象外」という意味ではありません。7月28日資料が示しているのは、認定メーカーの自社拠点製造セルを使う場合に、採点審査で高く評価するという方針です。
5-4.騒音対策など地域共生を高評価
系統用蓄電池の設置・運用に当たり、騒音対策など地域との共生に配慮した計画を高く評価する方針も示されました。
蓄電所では、PCS、変圧器、空調設備などから音が発生します。法令上の基準を満たすだけでなく、住宅との距離、夜間運転、機器配置、防音対策などを早い段階から検討することが重要です。
資料では、地域と共生し、長期に電力システムへ貢献する事業者を評価する仕組みも検討するとしています。
5-5.NITEガイドライン準拠などは次年度以降も含めて検討
安全性向上に向けたNITEガイドラインへの準拠については、7月28日資料で示された今回の具体的な評価項目・必須要件として、直ちに全面適用されるものではありません。
NITEは、製品事故や安全性などを扱う独立行政法人製品評価技術基盤機構です。資料では、制度面を含めて詳細設計を進め、次年度以降も予算措置が続く場合に、実施可能なものから評価へ盛り込む方向で検討するとしています。
したがって、「令和7年度補正からNITEガイドライン準拠が一律必須になった」と書くのは正確ではありません。
系統接続は「早める」と「実現性を確かめる」を同時に進める
6-1.情報公開とノンファーム型接続で接続可能性を高める
資料では、系統用蓄電池の迅速な系統接続に向けて、系統情報の公開拡充やノンファーム型接続の導入などを挙げています。
ノンファーム型接続とは、送電線の容量を常に確保する代わりに、混雑時の出力制御などを受け入れて接続する仕組みです。系統の空き容量、将来の混雑、接続予定設備などの情報が増えれば、事業者は土地取得や接続検討に進む前に、案件の実現性を判断しやすくなります。
ただし、7月28日資料だけでは、充電側ノンファーム型接続の正式な開始日や全国共通の詳細ルールまでは示されていません。
6-2.土地使用権原と保証金で申込みの規律を強化
一方で、資料は接続を早めるだけでなく、系統接続の適切な規律確保も掲げています。具体策として挙げられているのは、次のような内容です。
・土地使用権原の要件化
・契約申込み時の保証金引上げ
・接続手続きに必要な情報の確認
ここから読み取れるのは、接続可能性を広げる施策と同時に、土地や資金の準備が進んだ実現性の高い案件を見極めようとする方向です。
今後のBESS事業では、系統枠を押さえてから土地や資金を考えるのではなく、用地、資金調達、設備仕様、運用計画を早い段階からそろえる重要性が高まります。
需要側はIoT・DRready、共通課題はサイバーセキュリティ
7-1.低圧機器のIoT化と報酬を組み合わせる
需要側では、家庭用・業務産業用蓄電池などを継続的に導入するとともに、実際にDRへ活用できる機器を増やす方向が示されています。
IoT化とは、機器を通信ネットワークにつなぎ、遠隔で状態を確認したり制御したりできるようにすることです。資料が挙げた主な施策は、次のとおりです。
・既設機器・設備のIoT化支援を低圧へ拡大
・家庭用燃料電池やEV充電器・充放電器のDRready化
・経済DRや市場取引に基づくDR実績の把握
・低圧機器のIoT化と報酬を組み合わせたDR支援
DRreadyとは、外部からの指示などに応じて、電力使用量を調整できる機能を備えた状態です。国は、機器を設置するだけでなく、通信・制御できる状態にし、実際に動かした実績を把握する方向へ進めようとしています。
7-2.ERAB全体と機器の両方で対策する
分散型エネルギー機器が通信でつながるほど、サイバー攻撃や不正操作への対策が重要になります。資料では、サイバーセキュリティを次の2段階で整理しています。
・ERABシステム全体
ERABサイバーセキュリティガイドラインに準拠し、事業者、通信、制御システムを含む全体の安全性を確保します。
・PCSなどの機器
電力分野特有のリスクや、制御システムに必要な機能を考慮し、JC-STAR★2以上の基準整備・導入や、適切な機器利用に関するガイドライン整備を検討します。
ERABとは、蓄電池、EV、発電設備などをまとめて制御し、電力市場や需給調整に活用する仕組みです。JC-STARは、IoT機器のセキュリティ要件への適合性を示す制度です。ここでも注意したいのは、7月28日からすべての蓄電池設備にJC-STAR★2取得が義務付けられたわけではないことです。資料に書かれているのは、基準の整備や導入を進める方向性です。
投資家・事業者が今から確認すべき6項目
7月28日資料を事業計画へ落とし込む場合は、少なくとも次の6項目を確認する必要があります。
1.蓄電池を何のために運用するのか
調整力だけでなく、卸電力市場、再エネ余剰の吸収、系統混雑緩和など、複数の使い方を整理します。
2.接続地点が電力システムへどう貢献するのか
空き容量だけでなく、将来の混雑や再エネ出力制御との関係を確認します。
3.補助金申請後も計画どおり運用できるのか
卸電力市場での取引計画だけでなく、活用状況報告書で示せる実績管理の体制が必要です。
4.セルのメーカーと製造拠点を確認できるか
メーカー名だけでなく、認定の有無、自社製造拠点か、OEMかを確認します。
5.地域共生策を事業費へ織り込んでいるか
騒音、景観、住民説明、保守体制などを設計初期から検討します。
6.土地・資金・通信・サイバー対策を同時に準備できるか
系統接続だけを先行させず、土地使用権原、保証金、EMS・PCS、通信、セキュリティまで一体で管理する必要があります。
よくある誤解(Q&A)
Q
2026年7月28日から新しい蓄電池制度が始まったのですか?
A: いいえ。資料は、これまでの議論と今後の方向性を整理したものです。ただし、令和7年度補正の公募方針については、具体的な評価・要件が示されています。
Q
契約申込み約3,000万kWのすべてが連系するのですか?
A: そのような見通しは示されていません。契約申込み量と連系済み量は手続きの段階が異なり、将来の取下げや計画変更もあり得ます。
Q
2040年度280万〜1,000万kWは政府目標ですか?
A: いいえ。外部機関が一定の前提で試算した導入見通しであり、政府目標とは異なります。
Q
卸電力市場で何%以上取引すれば高評価になりますか?
A: 7月28日資料には具体的な割合は書かれていません。最終的な公募要領で確認する必要があります。
Q
OEMセルを使うと補助対象外になりますか?
A: 7月28日資料は、そのようには書いていません。OEMセルは、認定メーカーの自社拠点製造セルとしての「高評価」の対象には含まれないという整理です。
Q
NITEガイドラインへの準拠は今回から必須ですか?
A: 7月28日資料では、次年度以降も予算措置が続く場合に、実施可能なものから評価へ盛り込む方向で検討するとされています。
Q
JC-STAR★2はすでに全設備の必須条件ですか?
A: いいえ。資料では、基準の整備や導入を進める方向が示されている段階です。
出典(一次情報のみ)
資源エネルギー庁「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループでの議論について」
公表日:2026-07-28
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/003_01_00.pdf資源エネルギー庁「第50回省エネルギー小委員会 事務局資料2 分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループでの議論について」
公表日:2026-06-26
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/050_02_00.pdf電力広域的運営推進機関「系統の接続および利用ルールについて〜系統用蓄電池〜」
作成日:2025-04-01
https://www.occto.or.jp/assets/grid/business/documents/chikudenchi_20250901.pdf資源エネルギー庁「第7回次世代電力系統ワーキンググループ 資料1-1 系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」
公表日:2026-02-09
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/007_01_01.pdf監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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