作成日:2026.07.10
更新日:—
中級
制度・政策・審議会
#一般送配電
#制度・ルール文書
#託送料金
#レベニューキャップ
#発電側課金
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
一般送配電6社が託送収入の見通しを一斉に上方修正申請 ― 2026年11月から新託送料金、東電PGは2,516億円増
一般送配電6社が2026年7月10日、託送供給等に係る収入の見通しの変更(期中調整)承認申請を経済産業大臣に一斉に提出した。物価・労務費・金利の上昇分の反映で、承認後は同年11月1日から新たな託送料金が適用される予定である。
このページの要点
- 一般送配電6社(北海道電力NW・東京電力PG・中部電力PG・関西電力送配電・九州電力送配電・沖縄電力)が2026年7月10日、「託送供給等に係る収入の見通し」の変更(期中調整)承認申請を経済産業大臣に一斉に提出した。
- 第一規制期間(2023〜2027年度)5年合計の申請額は、東電PGが2,516億円増の7兆6,062億円、関西が1,496億円増の3兆7,626億円、中部が1,374億円増の3兆2,979億円、北海道が544億円増の1兆603億円、沖縄が157億円増の3,621億円。九州も同日申請している(額は同社別紙参照)。
- 背景は事業計画策定時に想定できなかった物価・労務費・金利の上昇である。国の審査と承認を経て託送供給等約款の変更届出を行い、2026年11月1日から新託送料金を適用予定。
出典:北海道電力NW・東京電力PG・中部電力PG・関西電力送配電・九州電力送配電・沖縄電力の各社プレスリリース(2026年7月10日)。
送電網を5年分どう運営するかの予算を、物価高と金利上昇を理由に各社そろって積み増す申請である。予算が増えれば送電網の利用料も上がる。蓄電池を含む系統利用者全員のコスト前提が11月から動く。
期中調整とは ― レベニューキャップ制度に組み込まれた事後の修正弁
今回の申請は例外的な措置ではなく、制度が最初から用意していた手続きである。
図1:期中調整はレベニューキャップ制度に組み込まれた修正弁
出典:一般送配電6社プレスリリース(2026年7月10日)、電気事業法第17条の2第4項。
一般送配電事業者6社が2026年7月10日、電気事業法第17条の2第4項に基づき「託送供給等に係る収入の見通し」の変更承認申請を経済産業大臣に提出した。北海道電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、関西電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の6社が同日に動いている。
レベニューキャップ制度では、規制期間の初めに事業計画をもとに5年分の収入の見通しを設定する。ところが物価や金利のように事業者の裁量では動かせない要因は、5年間そのままとは限らない。そこで制度側には、こうした外生的な費用変動を規制期間の途中で収入の見通しに反映させる期中調整という仕組みが置かれている。今回はその適用である。
電気事業法第17条の2第4項の規定に基づき、託送供給等に係る収入の見通しの変更(期中調整)について承認申請を行った。事業計画策定時には想定できなかった物価・労務費・金利の上昇分を収入の見通しに反映するものである。
— 一般送配電6社 プレスリリース(2026年7月10日)6社が同じ日に申請していることから、個社の判断ではなく制度のスケジュールに沿った一斉行動と読める。
6社の申請額と、内訳に出てくる3つの要因
金額の規模はエリアによって大きく違う。まず並べて見ておきたい。
図2:6社の申請額と、内訳に出てくる3つの要因
出典:一般送配電6社プレスリリース(2026年7月10日)。九州電力送配電の金額は同社別紙を参照。
第一規制期間(2023〜2027年度)の5年合計で見た申請額は、東京電力PGが2,516億円増の7兆6,062億円、関西電力送配電が1,496億円増の3兆7,626億円、中部電力PGが1,374億円増の3兆2,979億円、北海道電力NWが544億円増の1兆603億円、沖縄電力が157億円増の3,621億円である。九州電力送配電も同日に申請しており、金額は同社の別紙に記載されている。
内訳に現れる物価・金利・制御不能費用
内訳を公表している社を見ると、増額の構造がわかる。北海道電力NWの544億円増は、物価と金利の変動462億円、制御不能費用の実績乖離58億円、市場約定・公募結果24億円の積み上げである。中部電力PGの1,374億円増は物価等の変動1,011億円と金利変動324億円などで構成され、適用期間となる2026年11月から2028年3月の増加影響は年平均970億円と示されている。
5年合計の数字と、実際に料金へ乗る適用期間の数字は別物である。中部の例で言えば、5年で1,374億円という総額と、適用期間の年平均970億円は用途が違う。収支の前提を組み替えるときに参照すべきは後者の側になる。
11月1日の料金改定がBESS収支に効く2つの経路
蓄電池は充電側と放電側の両方で託送制度に触れる。だから影響は二重に入る。
系統用蓄電池は充電時に需要側として託送料金を負担し、放電側には発電側課金が適用される。つまり託送料金の単価改定は充電コストに直接効き、収入見通しの増額は発電側課金の水準を決める前提になる。2026年11月1日以降を対象にした収支計画は、どちらの経路も新しい単価で置き直す必要がある。
エリア別の増額幅の差も見落とせない。東京電力PGと関西電力送配電の増額が大きいということは、立地によってコスト前提の変化幅が違うということである。複数エリアで案件を比較している段階なら、この差は評価に入ってくる。
申請額がそのまま通るとは限らない点にも注意したい。今後は国の審査を経て経済産業大臣が承認し、各社が託送供給等約款の変更届出を行う流れになる。審査の過程で査定が入れば金額は圧縮される。確定するのは承認額と、約款に載る具体的な単価である。
- 各社の申請概要(別紙)からエリア別の増額規模を把握し、2026年11月以降の収支シミュレーションの託送費と発電側課金の前提を更新する。
- 5年合計の申請額ではなく、適用期間の年平均増加額(中部電力PGなら970億円)を前提の置き換えに使う。
- 料金制度専門会合での審査状況(査定)と、約款変更届出時の具体単価を継続して確認する。
- 複数エリアで案件を比較している場合、増額幅の差を立地評価のコスト比較に反映する。
読者別の緊急度
コスト前提が上がる方向の変化として把握しておきたい。
11月1日以降を対象にした収支計画の更新が必要になる。
入札戦略と立地比較の前提が変わる。承認額と約款単価の確定まで追う。
よくある質問(Q&A)
一般送配電6社は何を申請したのですか?
電気事業法第17条の2第4項に基づく「託送供給等に係る収入の見通し」の変更(期中調整)承認申請です。2026年7月10日に北海道電力NW・東京電力PG・中部電力PG・関西電力送配電・九州電力送配電・沖縄電力の6社が経済産業大臣へ一斉に提出しました。
各社の申請額はいくらですか?
第一規制期間(2023〜2027年度)5年合計で、東京電力PGが2,516億円増の7兆6,062億円、関西電力送配電が1,496億円増の3兆7,626億円、中部電力PGが1,374億円増の3兆2,979億円、北海道電力NWが544億円増の1兆603億円、沖縄電力が157億円増の3,621億円です。九州電力送配電も同日申請しており、金額は同社別紙に記載されています。
新しい託送料金はいつから適用されますか?
国の審査と経済産業大臣の承認を経て各社が託送供給等約款の変更届出を行い、2026年11月1日から新たな託送料金を適用する予定です。
なぜ収入の見通しを変更するのですか?
事業計画策定時には想定できなかった物価・労務費・金利の上昇を反映するためです。レベニューキャップ制度では、事業者の裁量によらない外生的な費用変動を規制期間の途中で収入の見通しに反映する期中調整の仕組みが用意されています。
系統用蓄電池の収支にはどう影響しますか?
影響は2つの経路で入ります。充電時は需要側として託送料金を負担するため単価改定が運用コストに直結し、放電側には発電側課金が適用されるため収入見通しの増額が課金水準の前提になります。2026年11月1日以降を対象とした収支計画は新単価で置き直す必要があります。
申請額はそのまま承認されるのですか?
決まっていません。今後は国の審査を経て経済産業大臣が承認し、各社が託送供給等約款の変更届出を行います。審査の過程で査定・圧縮される可能性があるため、承認額と約款に載る具体単価の確定を継続して確認する必要があります。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- レベニューキャップ制度では、物価や金利といった外生的要因による費用変動を規制期間の途中で収入の見通しに反映できる。今回は2023年11月承認分に続く調整で、6社が同じ日に申請していることから制度スケジュールに沿った一斉行動と読める。
- 内訳を見ると要因が分解できる。北海道電力NWは物価・金利の変動462億円に制御不能費用の実績乖離58億円と市場等の約定・公募結果24億円を加えて544億円増。中部電力PGは物価等変動1,011億円と金利変動324億円などで1,374億円増となり、適用期間(2026年11月〜2028年3月)の増加影響は年平均970億円と示されている。
- BESSへの影響経路は2つある。①充電(受電)は需要側として託送料金を負担するため単価改定が運用コストに直結する。②放電(発電側)にはkW・kWh課金が既に導入されており、収入見通しの増額は課金水準の前提になる。2026年11月1日以降の収支シミュレーションは新単価での更新が必要である。
- 6月24日に申請された託送供給等約款の変更(用地権原の2か月要件など・2026年10月1日実施予定)は今回とは別の手続きである。10月にルール、11月に料金と、系統利用の前提がこの秋に連続して変わる点は工程管理上の論点になる。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、一次資料に記載された決定事項ではありません。
この記事のまとめ
一般送配電6社が2026年7月10日、電気事業法第17条の2第4項に基づく託送収入見通しの変更(期中調整)承認申請を一斉に提出した。5年合計で東京電力PGが2,516億円増、関西が1,496億円増、中部が1,374億円増、北海道が544億円増、沖縄が157億円増。九州も同日申請している。理由は想定できなかった物価・労務費・金利の上昇で、承認を経て11月1日から新託送料金が適用される予定である。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づいて解説する編集部。審議会資料・約款・公募要領を原文で確認して記事化しています。
監修
BESS NEWS編集長
託送制度と発電側課金の実務を担当。本記事の申請額は各社プレスリリースの記載値と突き合わせ、5年合計と適用期間の数値を区別して確認した。
出典(一次情報)
- 東京電力PG プレス(PDF)
https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2026/pdf/26x2301.pdf - 関西電力送配電 プレス(PDF)
https://www.kansai-td.co.jp/corporate/press-release/2026/pdf/0710_1j_01.pdf - 中部電力PG プレス
https://powergrid.chuden.co.jp/news/press/1218086_3281.html - 北海道電力NW お知らせ
https://www.hepco.co.jp/network/info/2026/1253138_2077.html - 九州電力送配電 プレス
https://www.kyuden.co.jp/td/press/2026/260710.html - 沖縄電力 プレス(PDF)
https://www.okiden.co.jp/shared/pdf/news_release/2026/260710.pdf
本記事は2026年7月10日時点で公表された一次資料に基づきます。以後の改訂・追加公表は反映していません。
安心して選ぶためのJC-STAR★1
〜BESS関連製品53件を登録番号付きで公開〜BMS/PCS/EMS/ESS関連の★1適合ラベル取得製品(当社再照合:2026-04-17、IPA製品リスト最終更新:2026-04-15)
2026.04.23
技術・仕様・EMS
ピックアップ記事
はじめての系統用蓄電池(BESS):役割・3つの市場・安全が5分でわかる
2025.09.21
技術・仕様・EMS
その他記事一覧
はじめての系統用蓄電池(BESS) PCS・BMS・EMSが一目でわかる超入門 最初に覚える4つ:kW・kWh・Cレート・RTE 初心者投資家向け・商品別に"実務でわかる"解説2026年版 需給調整市場(EPRX)入門 【BESS向け】 JEPX(卸電力市場)入門 スポット/時間前のしくみと系統用蓄電池(BESS)の使い方まで一気に理解 容量市場(OCCTO)とは?
BESSの参加条件と収益の見方を、図解でやさしく解説 系統用蓄電池(BESS)の系統連系ガイド【2025年版】 — 申請から受給開始まで7ステップ — 消防危第200号解説 - リチウムイオン蓄電池の新設置基準
― 箱ごとに指定数量の倍数を合算しない運用・耐火性収納箱の要点解説 ― 意外と間違える:消防危303号の要点
—『離隔距離は各消防判断』と"合算しない"の条件を3分で理解 発電事業「10MWないと事業者になれない?」を正しく理解
BESS(蓄電池)にも対応した電気事業法の解説 民家から◯mは誤解:騒音規制は"測定位置×dB"が正解
民家からの距離基準は存在しないー正しい測定位置とdB値による判断 系統用蓄電池は第一種特定工作物?
— 都市計画法の位置づけと開発許可の要点