作成日:2026.07.07
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
同じ「蓄電」でも7万円台と20万円に!国の電源オークション案で何が変わる?
〜第4回長期脱炭素電源オークションで示された、蓄電池・長時間蓄電の上限価格案を解説〜
2026年6月23日、経済産業省・資源エネルギー庁の電力安定供給ワーキンググループで、第4回長期脱炭素電源オークションに向けた制度見直し案が示されました。
公式ページでは、同会合の開催日が2026年6月23日、資料3が「長期脱炭素電源オークションについて」と公表されています。
今回、蓄電池業界が特に見るべきポイントは、同じ「電気をためる」技術でも、通常の蓄電池はおおむね7万円台/kW/年、長時間蓄電は20万円/kW/年と、上限価格案に大きな差が出ている点です。
ただし、これは現時点では決定事項ではなく、WGで示された案です。
この記事では、初心者にもわかる言葉で制度の意味を整理しながら、蓄電池事業者や投資家が実務で何を確認すべきかを解説します。
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
・第4回長期脱炭素電源オークションに向け、蓄電池は70,675〜74,417円/kW/年、長時間蓄電は200,000円/kW/年の上限価格案が示されました。
・蓄電池は最新の補助金採択案件をもとに算定され、長時間蓄電は揚水新設と同じ上限価格に置く考え方です。
・ただし、これはWG資料で示された案であり、正式な募集要綱や最終決定とは分けて読む必要があります。
今回示されたのは「決定」ではなく第4回入札に向けた案
1.2026年6月23日のWG資料で示された論点
今回の資料は、第4回長期脱炭素電源オークションに向けた制度見直しを議論するためのものです。
資料では、資本コスト、バイオマスの扱い、LNGの上限価格、脱炭素電源の上限価格、制度適用期間の5点が論点として整理されています。
資料の日付は2026年6月23日で、資料内では「来年1月に予定されている第4回入札」とされています。
そのため、本文では「2027年1月に予定される第4回入札に向けた案」と読むのが自然です。
2.蓄電で見る中心は上限価格と制度適用期間
蓄電池・長時間蓄電の読者にとって、中心になるのは2つです。1つ目は上限価格です。
上限価格とは、オークションで事業者が応札できる価格の上限、つまり「ここより高い価格では出せない」という天井です。
2つ目は制度適用期間です。制度適用期間とは、落札した電源が制度上の容量収入を得られる期間のことです。
今回、長時間蓄電については、この期間の上限を30年に短縮する案も示されています。
そもそも長期脱炭素電源オークションとは
1.容量収入で大きな初期投資を支える制度
長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源への新規投資を促すため、2023年度から始まった入札制度です。
資料では、脱炭素電源を対象に入札を実施し、落札電源には固定費水準の容量収入を原則20年間得られるようにすることで、初期投資の回収に対する予見可能性を与える制度と説明されています。
ここでいう容量収入とは、実際に売った電気の量ではなく、「必要なときに電気を供給できる力」に対して支払われる収入です。
たとえるなら、消防車が火事に備えて待機していることにも価値がある、という考え方に近いです。
2.上限価格は必ず受け取れる金額ではない
注意したいのは、上限価格=必ず受け取れる金額ではないという点です。実際の収入は、オークションでの落札価格をもとに決まります。
また資料では、本制度での収入は「落札価格-還付する収益」と示されています。ここでいう還付とは、卸市場や非化石市場などから得た収益の一部を戻す仕組みです。
つまり、上限価格はあくまで入札時の天井であり、事業の採算は落札価格、建設費、運転維持費、市場収入、還付ルールによって変わります。
蓄電池は7万円台:まず総括表とエリア別表を分けて読む
1.総括表では70,675〜74,417円/kW/年
第4回入札の上限価格案では、蓄電池は70,675〜74,417円/kW/年と示されています。
第3回の76,205〜80,657円/kW/年からは、総括表ベースで下がっています。
ここでいう円/kW/年は、「1kWの供給力を1年間確保する場合の単価」です。
kWは、一度に出せる電気の力を表します。重要なのは、20万円は通常の蓄電池の価格ではないことです。
20万円/kW/年は、後述する長時間蓄電の上限価格案です。
2.エリア別では71,140〜74,906円/kW/年
蓄電池は、エリア別の上限価格案も示されています。
資料では「揚水(リプレース)・蓄電池」として、北海道71,768円、東北71,140円、東京74,906円、中部71,563円、北陸71,273円、関西71,754円、中国71,154円、四国71,621円、九州72,813円/kW/年とされています。
総括表では70,675〜74,417円/kW/年、エリア別表では71,140〜74,906円/kW/年です。記事や社内資料で数字を書く場合は、総括表の数字なのか、エリア別表の数字なのかを分けて書く必要があります。
3.算定根拠は令和7年度補助金の採択案件
蓄電池の上限価格は、最新の補助金事業の採択案件データを踏まえて設定されています。
資料では、第4回入札のモデルとして、令和7年度当初の「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」で採択された、3万kW以上の蓄電池を参照しています。
第4回入札のモデルでは、平均出力は5.7万kW、運転継続時間は3.4時間、建設費は41.6万円/kW、運転維持費は0.7万円/kW/年です。
実務では、自社案件の建設費、運転継続時間、劣化、接続費、運転維持費が、このモデルとどれだけ違うかを見ることが重要です。
長時間蓄電は20万円:蓄電池とは別枠で読む
1.長時間蓄電は200,000円/kW/年の案
長時間蓄電、資料上の表現ではLDESは、200,000円/kW/年の上限価格案が示されています。
LDESは「Long Duration Energy Storage」の略で、長い時間にわたって電気をためて供給する技術を指します。
初心者向けには、通常の蓄電池が「大きなモバイルバッテリー」に近いとすれば、長時間蓄電は「長く使える大きな貯水タンク」のような役割と考えるとイメージしやすいでしょう。
2.20万円は実コストの平均ではなく揚水新設との横並び
長時間蓄電の20万円は、実際の長時間蓄電案件の平均コストを集計した数字ではありません。
資料では、LDESは参照できる価格データがないため、同じ募集上限の中で競争相手となる揚水新設と同じ上限価格としている、と説明されています。
ここでいう揚水とは、電気が余っているときに水を高い場所へくみ上げ、必要なときに水を落として発電する仕組みです。
電気を水の形でためる、大規模な蓄電のような存在です。つまり、長時間蓄電の20万円は、「実コストが20万円と確認された」という意味ではなく、制度上、揚水新設と同じ上限価格に置く案として読むべきです。
3.制度適用期間は上限30年に短縮する案
長時間蓄電は、上限価格だけでなく制度適用期間も確認が必要です。
資料では、制度適用期間は従来20年を基本としつつ、40年を上限としていると説明されています。
そのうえで、一部電源の上限価格を引き上げるため、支援額の総額が増えすぎないよう、一般水力・揚水新設・原子力・LNG専焼について、制度適用期間の上限を40年から30年に短縮する案が示されています。
LDESも揚水新設と同様に上限価格を引き上げるため、制度適用期間の上限を30年に短縮する案です。
要するに、長時間蓄電は「1年あたりの上限価格は高くするが、制度適用期間の上限は短くする」という調整が示されています。
実務担当者が次に確認すべきこと
1.蓄電池事業者はエリア・建設費・運転継続時間を確認
蓄電池事業者がまず見るべきなのは、自社案件のエリアです。エリア別表では東京が74,906円/kW/年、東北が71,140円/kW/年など、地域によって上限価格案が異なります。
次に見るべきなのは、自社案件のコストがモデルからどれだけ外れているかです。第4回モデルの建設費は41.6万円/kW、運転継続時間は3.4時間です。
これより建設費が高い、または運転条件が異なる案件では、上限価格だけを見ても採算は判断できません。
特に、接続費、工期、電池劣化、運転維持費、市場収入、還付ルールは、落札後の収益に直接影響します。
2.長時間蓄電事業者と投資家は要件・期間・落札価格を確認
長時間蓄電事業者は、自社技術が正式な募集要綱でどのように扱われるかを確認する必要があります。
今回の資料ではLDESの上限価格案は示されていますが、個別技術ごとの詳細な認定条件までは、この資料だけでは判断できません。
投資家や金融機関は、上限価格ではなく、落札価格と還付後の収入を見る必要があります。
資料上、本制度での収入は「落札価格-還付する収益」です。ROI、つまり投資回収の見方は、概念的には「収入から費用を引いたものを初期投資で割る」考え方です。
ただし、一次情報には個別案件のROI計算は示されていないため、案件ごとの前提で別途試算する必要があります。
まだ未定・注意すべきポイント
1.正式な募集要綱で変わる可能性がある
今回の資料は、WGで示された案です。資料中にも「としてはどうか」という表現が多く、最終決定資料として読むべきではありません。
そのため、記事では「決定した」ではなく、「案が示された」「提示された」「見直し案として議論された」と書くのが適切です。
2.資本コストは5.5%案と電源別の扱いを分けて読む
資本コストについては、2025年度の平均金利1.51%を引用し、ベースの5%に0.5%を加算して5.5%とする案が示されています。
また、電源種ごとの資本コストは4.5〜6.5%とされています。実務上の注意点は、蓄電池と長時間蓄電を同じように扱わないことです。
蓄電池は上限価格表で4.5%・1.5倍、長時間蓄電は上限価格表で6.5%・2倍と示されています。
特に長時間蓄電は、資本コスト表と上限価格表で見え方が異なるため、記事では細かいWACC解釈に踏み込みすぎず、上限価格表では200,000円/kW/年、備考では6.5%・2倍と示されていると整理するのが安全です。
よくある誤解(Q&A)
Q
蓄電池も20万円/kW/年になるのですか?
A: いいえ。20万円/kW/年は長時間蓄電、資料上のLDESの上限価格案です。通常の蓄電池は、総括表では70,675〜74,417円/kW/年です。
Q
上限価格が7万円台なら、その金額を必ず受け取れるのですか?
A: いいえ。上限価格は応札価格の天井です。実際の収入は、落札価格や還付する収益などで変わります。
Q
今回の内容はもう決定ですか?
A: いいえ。2026年6月23日のWG資料で示された案です。正式な募集要綱や最終決定とは分けて読む必要があります。
Q
長時間蓄電の20万円は、長時間蓄電の実コストを集計した数字ですか?
A: いいえ。資料では、LDESは参照できる価格データがないため、揚水新設と同じ上限価格としていると説明されています。
出典(一次情報のみ)
経済産業省「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 電力安定供給ワーキンググループ(第3回)」
開催日:2026-06-23 最終更新日:2026-06-23 参照日:2026-06-29
資源エネルギー庁「資料3 長期脱炭素電源オークションについて」
発行日:2026-06-23 参照日:2026-06-29
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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