作成日:2026.05.21
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制度・政策・審議会
OCCTO:調整力委
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
『第118回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会』停電コストと調整力はどうなる?
〜停電コストはどう扱われる?需給検証・調整力確保の注目審議〜
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
2026年度夏季は全エリアで予備率3%以上を確保できる見通しですが、東京エリアの8月夕方17時は、kW公募97.6万kWを織り込んでも3.5〜3.7%にとどまります。
これは蓄電池向けの新制度ではありませんが、東京エリアで「確実に出せるkW」を持つ事業者にとって、相対契約、DR・VPP、容量市場、需給調整市場の提案材料になります。
停電コストは正式指標ではなく参考試算ですが、需要家向けには「停電時に何を守るか」を説明する材料になり、BESSの非常時価値を見える化するきっかけになります。
今回の資料から事業者が得られるメリット
1.東京8月夕方のタイトさは、BESSの商談材料になる
今回資料の一番の実務メリットは、東京エリアの夏季夕方がどれだけタイトかを、一次情報ベースで説明できることです。
BESSの営業や事業開発では、「蓄電池は夕方に価値があります」と言うだけでは弱いです。
需要家、投資家、金融機関、オフテイカー、アグリゲーターに対しては、なぜその時間帯に価値があるのかを、制度資料や需給データで説明する必要があります。
今回の資料1では、東京エリアの8月夕方17時が、公募込みでも3%台という数字で示されています。
これは、BESS事業者にとって、商談で使いやすい材料です。ただし、商談での使い方には注意が必要です。
「必ず価格が上がる」「必ず収益が増える」とは言えません。正しくは、「東京エリアの夏季夕方に、確実に供出できるkWの価値を検討する根拠が強まった」です。
2.「確実に出せるkW」を契約価値として説明しやすくなる
蓄電池の価値は、単に設備容量が大きいことではありません。
重要なのは、必要な時間に、必要な出力を、契約どおりに出せることです。
kWは、その瞬間に出せる電気の力です。kWhは、どれだけの電気を蓄え、どれだけの時間出せるかを示します。
BESSでは、kWとkWhの両方が重要です。今回資料を踏まえると、東京エリアの夏季夕方では、次のような説明がしやすくなります。
・「この蓄電池は、8月の17時前後に何kWを何時間出せるのか」
・「その時間にSOC(State of Charge:蓄電池の充電率)をどの水準で維持できるのか」
・「非常時用途、卸市場、需給調整市場、相対契約のどれを優先するのか」
このように、今回資料は、BESSを単なる設備ではなく「時間帯価値を持つ供給力」として説明する材料になります。
3.停電コストは、非常時価値を説明する材料になる
今回の資料2では、停電コストの検討結果が示されています。
停電コストとは、停電によって発生する損失を金額で評価しようとする考え方です。
資料2では、WTP法(停電を避けるためにいくら払ってもよいかを聞く方法)と、直接損害測定法(停電で発生する損害額を聞く方法)による試算が整理されています。
使用電力量で加重平均した平均値では、WTP法が計画夏1,930円/kWh、突発夏2,259円/kWh、直接損害測定法が計画夏9,004円/kWh、突発夏9,423円/kWhです。
ただし、この数値は正式な政策評価指標ではありません。
資料2は、今回の停電コストに関する数値や調査結果は検討中であり、政策評価等に使用できるものではないと明記しています。
それでも、BESS事業者にはメリットがあります。停電コストの考え方を使うことで、需要家に対して「蓄電池は電気代削減だけでなく、止めてはいけない設備を守る投資でもある」と説明しやすくなるからです。
4.調整力資料は、蓄電池の高速応動価値を説明する材料になる
資料3では、2026年度の調整力確保計画が整理されています。調整力とは、需要と供給のズレを直す力です。
資料3では、一次は10秒、二次①・二次②は5分、三次①は15分、三次②は60分といった応動時間が示されています。
また、出力変化速度の分布では、電源種別として蓄電池が明示されています。
図上では、蓄電池は高い出力変化速度側に位置しており、高速応動リソースとして見ることができます。
これは、BESS事業者にとって大きな説明材料です。蓄電池は、単に電気をためる設備ではなく、短時間で出力を変えられるリソースです。
需給調整や周波数安定化の文脈で価値を説明しやすくなります。ただし、資料3の結論は、2026年度は全エリア・全商品で調整力を確保できる見通しです。
蓄電池専用枠ができたわけではありません。価値はありますが、制度変更が決まったわけではない。この線引きが重要です。
東京エリアの8月夕方は、公募込みでもタイトに見る
1.最小予備率時17時で東京は8月前半3.5%・8月後半3.7%
今回の最大の読みどころは、東京エリアの8月夕方です。資料1では、2026年度夏季の最小予備率時を17時として評価しています。
最小予備率時とは、供給力の余裕が最も小さくなりやすい時間帯です。夏の場合、太陽光発電の出力が下がる夕方が重要になります。
この17時評価で、東京エリアの予備率は、7月前半6.1%、7月後半4.6%、8月前半3.5%、8月後半3.7%、9月4.2%です。
全エリアで3%以上は確保できる見通しですが、東京の8月は最低基準にかなり近い水準です。
BESS事業者にとって、ここは商務上の重要ポイントです。日中に充電し、夕方に放電する運用、または夕方に供出できる状態を維持する運用の価値を検討しやすくなります。
ただし、これは価格上昇の保証ではありません。資料から言えるのは、東京の8月夕方が需給検証上タイトに評価されている、ということです。
2.3月時点では東京8月17時が2.4%、kW公募未考慮だった
今回の評価をより強く読む理由は、3月時点の再算出との比較にあります。
資料1では、第117回委員会からの再算出として、東京エリアの8月・最小予備率時17時が2.4%と示されています。
この再算出は、東京エリアのkW公募を未考慮とされています。一方、今回の評価では、東京エリアのkW公募落札量97.6万kWを織り込んだうえで、8月前半3.5%、8月後半3.7%になっています。
つまり、東京エリアの8月夕方は、追加供給力を織り込んでようやく最低基準3%を上回っている、と読めます。
BESS事業者にとってのメリットは、この「17時前後のkW」が説明しやすくなることです。
投資家向けには需給上の必要性を、需要家向けにはピーク・非常時対策を、アグリゲーター向けには供出可能量の価値を説明する材料になります。
3.kW公募97.6万kWは「落札済み供給力の織り込み」
資料1では、第117回委員会以降に判明した供給力変化として、発電機作業のトラブル停止などに加え、東京エリアのkW公募落札量97.6万kWを反映したとされています。
これは「これから新たに97.6万kWを募集する」という意味ではありません。
すでに落札済みの供給力を、2026年度夏季の需給見通しに織り込んだという意味です。
そのため、kW公募に落札済みのリソースにとっては、夏季夕方などに契約どおり供給力として使える状態を維持する重要性が高まります。
一方、kW公募に落札していない蓄電池には、今回資料から直接の公募収入が発生するわけではありません。
未落札のBESSにとって今回資料が示すのは、直接収益ではなく、東京エリアの夏季夕方に「確実に出せるkW」をどう商務上評価するかという検討材料です。
4.未落札リソースは「直接収入」ではなく、次の契約材料として使う
未落札の蓄電池事業者にとって重要なのは、「公募に落ちたから関係ない」と切り捨てないことです。
今回資料は、新たな公募収入を与えるものではありません。しかし、東京エリアの8月夕方がタイトであることは、別の契約で価値を説明する材料になります。
たとえば、相対契約では、夕方の供出可能性を価格条件に反映できる可能性があります。
DR・VPPでは、17時前後にどれだけ確実に出せるかをアグリゲーターとの契約条件に反映できる可能性があります。
容量市場や需給調整市場に参加する場合も、実際に供出できるkW、SOC管理、停止リスク、通信・制御の確実性が重要になります。
ただし、これらは今回資料だけで決まるものではありません。各市場・契約のルール、参加要件、精算条件、ペナルティ条件を別途確認する必要があります。
BESS事業者別の実務メリット
1.東京エリアの系統用蓄電池:17時前後の運用価値を再設計できる
東京エリアで系統用蓄電池を持つ事業者にとって、今回資料は運用設計を見直す材料になります。
特に確認すべきなのは、8月の17時前後に、どれだけのkWをどれだけの時間出せるかです。
kWだけでなく、kWhも必要です。大きな出力を一瞬だけ出せても、必要時間を満たせなければ契約価値は下がります。
実務では、次のような見直しが必要です。17時前後のSOCをどの水準で維持するか。
日中充電と夕方放電の運用をどう組むか。 卸市場、需給調整市場、相対契約、非常時用途の優先順位をどう決めるか。
劣化コストを含めて、夕方放電の採算をどう見るか。 予備率がタイトな時間帯に、PCS・通信・EMSが正常に動くか。
このように、今回資料は「設備を持っているだけで価値が上がる」という話ではありません。価値を出せる運用に設計し直すための材料です。
2.kW公募落札済みリソース:契約履行と停止管理の重要性が高まる
東京エリアのkW公募落札量97.6万kWは、今回の需給見通しに織り込まれています。
つまり、落札済みリソースは、2026年度夏季の需給対策上の前提になっています。
落札済みリソースが蓄電池である場合、契約履行、SOC確保、故障・停止管理、通信・EMSの可用性が重要になります。
事業者にとってのメリットは、自社リソースの重要性を説明しやすくなることです。
金融機関や投資家に対しては、単なる任意の市場参加ではなく、需給見通しに織り込まれた供給力としての位置づけを説明しやすくなります。
ただし、今回資料だけでは、落札リソースの個別内訳や蓄電池の比率までは確認できません。
個別案件では、公募結果、契約書、実施要領側の確認が必要です。
3.未落札の蓄電池:相対契約・DR・VPP提案の材料になる
未落札の蓄電池にとっても、今回資料には使い道があります。直接の公募収入は発生しません。しかし、東京エリアの8月夕方がタイトであるという一次情報は、相対契約やDR・VPP提案で使える説明材料になります。たとえば、需要家や小売電気事業者に対して、次のような提案ができます。
・「8月の17時前後に一定のkWを確保する契約」
・「夕方ピーク時に放電できるSOCを維持する運用」
・「需給ひっ迫時に放電・需要抑制を組み合わせるDR提案」
・「非常時のバックアップと通常時の市場活用を分けた運用設計」
ただし、ここでも言いすぎは禁物です。今回資料だけで、相対契約価格やDR報酬が上がると断定することはできません。
使えるのは、「東京エリアの夕方kWには説明可能な需給上の価値がある」という文脈です。
4.需要家側蓄電池:BCPと電力コスト対策を同時に説明しやすくなる
需要家側蓄電池にとってのメリットは、BCP(事業継続計画)と電力コスト対策を一体で説明しやすくなることです。
停電コストの資料は、停電による損失を考えるきっかけになります。
たとえば、冷蔵・冷凍設備、製造ライン、医療・通信設備、データセンター、物流拠点などでは、短時間の停電でも大きな損失が出る可能性があります。
今回の停電コストは正式な政策評価指標ではありませんが、需要家に対して次の問いを投げかける材料になります。
・「 停電した場合、何分で損害が出るのか」
・「止めてはいけない負荷はどれか」
・「既存の非常用発電機やUPSで何時間守れるのか」
・「蓄電池を入れると、ピーク対策と非常時対策をどこまで両立できるのか」
つまり、需要家側蓄電池の提案では、単なる電気代削減だけではなく、「止めてはいけない設備を守る価値」を説明しやすくなります。
5.アグリゲーター:分散リソースの「夕方kW」を束ねる提案がしやすくなる
アグリゲーターにとって、今回資料は分散リソースを束ねる提案の材料になります。
東京エリアの8月夕方がタイトであるなら、1つ1つは小さい蓄電池や需要抑制でも、束ねることで価値を持ちやすくなります。
重要なのは、単に設備台数を集めることではなく、17時前後に実際に供出できるkWをどれだけ確保できるかです。
アグリゲーターが確認すべきなのは、次の点です。
・需要家ごとのSOC管理が可能か。
・発動時に制御権限を持てるか。
・通信断や制御失敗時の責任分界が明確か。
・需要家の通常業務と放電・抑制が競合しないか。
・発動時の精算方法と劣化費用の負担が決まっているか。
今回資料は、アグリゲーターに直接の新制度を与えるものではありません。しかし、東京エリアの夕方kWを束ねる意義を説明する材料にはなります。
停電コストと調整力を、収益機会にどうつなげるか
1.停電コストは「売上」ではなく、レジリエンス提案の根拠にする
停電コストをBESSの売上として扱ってはいけません。停電コストは、停電で失われる価値を見える化する考え方です。
BESSの売上は、契約、料金、市場価格、発動頻度、設備費、保守費、劣化費用などで決まります。
しかし、停電コストの考え方は、レジリエンス提案に使えます。レジリエンスとは、災害や停電が起きても事業や生活を止めにくくする力のことです。
需要家向け提案では、次のように整理できます。
1.「通常時の価値」
ピークカット、電力料金削減、市場活用、DR・VPP参加。
2.「非常時の価値」
重要設備の継続、食品廃棄の回避、生産停止の軽減、医療・通信設備の保護。
この2つを分けることで、BESSの価値を過大評価せず、かつ安売りもしない提案ができます。
2.調整力は全体として充足見通しだが、蓄電池の高速応動価値は見える
資料3では、2026年度は全エリア・全商品で調整力を確保できる見通しとされています。
これは、「調整力が不足しているから蓄電池がすぐ高値になる」という意味ではありません。
一方で、蓄電池は出力変化速度の速いリソースとして資料上に示されています。
一次、二次①、二次②など、応動速度が重要な商品との関係では、BESSの特徴を説明しやすくなります。
事業者にとってのメリットは、蓄電池の価値を「電力量」だけでなく「応答速度」と「確実性」で説明できることです。
ただし、実際に収益化するには、商品要件、契約、通信、制御、SOC管理、発動時精算、未達時の扱いを確認する必要があります。
3.東北の一次・二次②は、広域運用込みで充足と読む
資料3では、東北エリアの一次・二次②について、エリア単独では調整力を確保しきれない状況が確認されています。
具体的には、東北エリア単独で一次は30MW程度、二次②は380MW程度の未充足が示されています。
一方で、東京を含む隣接エリアとの広域運用を考慮すれば、調整力必要量に対して設備量が充足するとされています。
東北東京間連系線の東北向きでは、最小で2,000MW程度の空容量実績があり、最大不足量380MWに対して十分な空きがあることも確認されています。
この情報の使い方は慎重にする必要があります。東北エリアでは、高速応動リソースの役割が見えやすい。これは事実です。
しかし、広域運用込みでは充足する見通しです。
したがって、「東北では蓄電池が必ず高値で約定する」とは言えません。事業者にとっては、東北での案件検討時に、エリア単独のニーズ、広域運用、連系線制約、競合リソースを確認する材料になります。
4.計画外停止率4.9%への見直しは、信頼性を訴求する材料になる
資料3では、調整力確保状況の確認に用いる計画外停止率を、これまでの3.6%から今回より4.9%へ見直すとされています。
計画外停止率とは、設備が予定外に止まる可能性を見る指標です。この見直しは、蓄電池だけの話ではありません。
しかし、BESS事業者にとっては、信頼性を訴求する材料になります。蓄電池が価値を持つためには、単に出力が速いだけでは足りません。
必要なときに止まらないこと、指令に応じること、通信やEMSが安定していることが重要です。
商談では、次のような観点を示すとよいです。
計画外停止を減らす保守体制。 PCS・BMS・EMSの監視体制。 通信障害時のバックアップ手順。 SOC不足を防ぐ運用ルール。 劣化を織り込んだ供出可能量の管理。
ただし、今回資料には、4.9%への見直しによって蓄電池の募集量が増える、蓄電池専用枠ができる、といった記載はありません。
明日から確認すべき実務チェックポイント
1.17時前後に本当に出せるkWとkWhを確認する
東京エリアのBESS事業者がまず確認すべきなのは、8月の17時前後に本当に出せるkWとkWhです。
kWは出力、kWhは持続時間に関わります。たとえば、2MWを出せても30分しか続かないのか、2時間続けられるのかで、契約価値は変わります。確認すべき項目は次の通りです。
・17時時点の標準SOC
・夏季高温時の出力制限
・劣化後の実効容量
・非常時用途で確保しておく予備分
・他市場・他契約との同時利用制約
・放電後の再充電計画
ここを確認しないまま「夕方に価値がある」と言っても、実際の収益にはつながりにくいです。
2.SOC・PCS・通信・EMSを「収益条件」として管理する
BESSの収益は、市場価格だけで決まりません。必要な時間に動けるかどうかで決まります。
そのため、SOC、PCS、通信、EMSは単なる技術項目ではなく、収益条件です。SOCが足りなければ、出したい時間に放電できません。
PCSが制限されれば、契約したkWを出せません。通信が不安定なら、指令応動に支障が出ます。
EMSの制御が不十分なら、複数契約の優先順位を守れません。今回資料を踏まえると、東京エリアの夏季夕方に価値を出すには、技術運用を商務条件と一体で管理する必要があります。
3.相対契約では、時間帯価値と確実性を価格に反映する
相対契約を検討する事業者は、今回資料を使って、時間帯価値と確実性を価格に反映する交渉ができます。
単に「蓄電池から電気を出します」ではなく、次のような条件を整理すべきです。
対象期間は7〜9月か、特に8月か。 対象時間は17時前後か、それより広い夕方帯か。
供出するkWと継続時間はどれだけか。 発動指令は誰が出すか。 発動しなかった場合の扱いはどうするか。
SOC確保のための機会損失を価格に入れるか。 劣化費用をどちらが負担するか。今回資料は、こうした条件交渉の背景資料になります。
東京エリアの夕方がタイトに評価されているため、「夕方に確実に出せるkW」には説明可能な価値があるからです。
4.ROIは非常時価値と制度・市場収益を分けて試算する
BESSのROI(投資利益率)を考えるときは、非常時価値と制度・市場収益を分ける必要があります。
非常時価値とは、停電時に工場、冷蔵・冷凍設備、医療・通信設備、店舗営業などを守る価値です。
今回の停電コストは、この非常時価値を考える材料になります。
制度・市場収益とは、需給調整市場、容量市場、相対契約、DR・VPP、ピークカットなどから得られる収益です。
これは、停電コストとは別のルールで決まります。概念的には、次のように整理できます。
ROI=(非常時に守れる価値 + 制度・市場・契約から得られる収益- 設備導入費 - 運用保守費 - 劣化・更新費)÷ 投資額
ここで重要なのは、停電コストをそのまま売上にしないことです。一方で、停電コストを無視する必要もありません。
需要家にとって「止まらない価値」は、BESSの重要な導入理由になり得ます。
まだ決まっていないこと、断定してはいけないこと
1.蓄電池向けの新公募・新義務・新市場ルールは確認できない
今回資料は、蓄電池向け新制度を示す資料ではありません。東京エリアのkW公募97.6万kWは、既に落札済みの供給力を需給見通しに織り込んだものです。 新たに蓄電池向けの公募が始まる、蓄電池に新しい義務が課される、蓄電池専用枠ができる、といった内容は今回資料からは確認できません。
2.市場価格上昇や高値約定は資料だけでは断定できない
東京エリアの8月夕方がタイトであることは、確実に供出できるkWの価値を検討する材料になります。
しかし、市場価格、相対契約価格、需給調整市場での約定可能性、容量市場上の評価は、それぞれ別の制度・契約・需給条件で決まります。
したがって、「東京の8月夕方は必ず高値になる」「蓄電池の収益が必ず増える」とは書けません。
正確には、「東京エリアの夏季17時前後に、確実に出せるkWの重要性を検討する材料が強まった」です。
3.停電コストの正式指標化は今後の再調査・詳細調査を待つ
資料2では、2025年度は初回調査であり、基礎的な停電コストを試算する目的だったとされています。
最大提示額の設定に改善が必要なため、2026年度に同じシナリオでの再調査を実施するとされています。
また、アデカシー評価(将来の供給力が足りるかを見る評価)や故障影響度評価(設備故障が起きたときの影響を見る評価)に焦点を当てた詳細調査も実施するとされています。
そのため、停電コストについては、現時点で「正式な単価が決まった」とは言えません。
BESS案件では、自社設備が守る負荷、停電時の損害、非常用電源の有無、復旧時間、契約条件を別途整理する必要があります。
よくある誤解(Q&A)
Q
東京エリアの8月夕方は、蓄電池にとって必ず儲かる時間帯ですか。
A: いいえ。資料1では、東京エリアの8月夕方17時の予備率が公募込みでも3%台にとどまるため、kW価値を検討する材料にはなります。ただし、市場価格の上昇や個別案件の収益を保証するものではありません。
Q
東京エリアのkW公募97.6万kWは、これから新しく募集されるのですか。
A: いいえ。今回資料では、第117回委員会以降に判明した供給力変化として、東京エリアのkW公募落札量97.6万kWを需給見通しに反映したとされています。新規募集の告知ではありません。
Q
kW公募に落札していない蓄電池にも、直接収入が発生しますか。
A: いいえ。今回資料だけで、未落札リソースに直接の公募収入が発生するわけではありません。相対契約、DR・VPP、容量市場、需給調整市場などでの価値は、別途ルールと契約条件を確認する必要があります。
Q
資料1別紙の「揚水供給力」は、蓄電池の供給力として読んでよいですか。
A: いいえ。揚水供給力は基本的に揚水発電の供給力であり、BESSの供給力枠として読むべきではありません。
Q
停電コストは正式な単価として使えますか。
A: いいえ。資料2は、今回の停電コストに関する数値や調査結果は検討中であり、政策評価等に使用できるものではないと明記しています。
Q
調整力が不足しているので、蓄電池に特別需要が発生したと読めますか。
A: いいえ。資料3では、2026年度は全エリア・全商品で調整力を確保できる見通しです。東北エリアの一次・二次②はエリア単独では不足が見られますが、広域運用込みで充足すると整理されています。
出典(一次情報のみ)
電力広域的運営推進機関「第118回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」
更新日: 2026-05-13 参照日: 2026-05-14
電力広域的運営推進機関「第118回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 議事次第」
発行日: 2026-05-14 参照日: 2026-05-14
電力広域的運営推進機関「資料1 電力需給検証報告書(案)について」
発行日: 2026-05-14 参照日: 2026-05-14
電力広域的運営推進機関「資料1別紙 需給検証報告書データ集」
発行日: 2026-05-14 参照日: 2026-05-14
電力広域的運営推進機関「資料2 停電コストの検討について(報告)」
発行日: 2026-05-14 参照日: 2026-05-14
電力広域的運営推進機関「資料3 2026年度調整力の確保に関する計画の取りまとめについて(報告)」
発行日: 2026-05-14 参照日: 2026-05-14
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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