作成日:2026.05.08
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
第3回分散型エネルギー推進戦略WG申込み3,000万kWで始まる『選別』
〜再エネ併設・系統用蓄電池は何が変わるのか〜
CONTENTS目次
要点まとめ
第3回分散型エネルギー推進戦略WGで示された「約3,000万kW」は、系統用蓄電池の契約申込み量です。
連系済み量64万kWとは別の段階であり、再エネ併設蓄電池も含みません。
実際に始まる「選別」の中心は、契約申込みより手前の接続検討です。ここには約1億7,200万kWが積み上がっており、1事業者あたりの件数上限が入る方向です。
系統用蓄電池は、件数上限、早期回答、保証金引上げ、分割払い厳格化へ進みます。一方、再エネ併設蓄電池は、現時点では支援継続と市場に合わせた活用が主軸です。
今回の議題は「系統用蓄電池」と「再エネ併設蓄電池」の2本
1.第3回WGは方向性、次世代電力系統WGは実務ルールを示している
2026年4月15日の第3回分散型エネルギー推進戦略WGでは、蓄電池を含む分散型エネルギーリソースを今後どう活用するかが整理されました。
蓄電池については、大きく2つに分けて読む必要があります。
1つは、送配電系統に単独で接続する系統用蓄電池です。
もう1つは、太陽光や風力などの再エネ発電設備と組み合わせる再エネ併設蓄電池です。
第3回WGは、主に「何を進めるか」を示した会議です。
一方で、「いつから始まるのか」「上限を超えた案件をどう扱うのか」「保証金や工事費負担金をどう見直すのか」といった実務ルールは、次世代電力系統WGで具体化されています。
そのため、今回の資料は、分散型エネルギー推進戦略WG=方針、次世代電力系統WG=手続の具体化、と分けて読むのが重要です。
2.「約3,000万kW」は連系済み量ではなく、再エネ併設蓄電池も含まない
最も誤解されやすいのが、「約3,000万kW」という数字です。資料では、2025年12月末時点で、系統用蓄電池の連系済み量は64万kW、契約申込み量は約3,000万kWと整理されています。
さらに、その手前の接続検討には約1億7,200万kWが積み上がっています。
つまり、約3,000万kWは「すでに稼働している量」ではありません。手続上、契約申込みまで進んでいる量です。
さらに重要なのは、この数字に再エネ併設蓄電池の導入量は含まれていない点です。再エネ併設蓄電池まで含めて「蓄電池全体で約3,000万kW」と読むのは正確ではありません。
系統用蓄電池で何が変わるのか
1.接続検討に1事業者あたりの件数上限が入る
今回の見直しで最も大きいのは、系統用蓄電池の接続検討に、1事業者あたりの件数上限を設ける方向が具体化していることです。
接続検討とは、電力会社に対して「この場所に設備をつなぐ場合、どのような工事が必要か、費用や期間はどれくらいか」を見てもらう入口手続です。
案件の事業性を判断するために欠かせない手続ですが、ここに申込みが集中しています。
開始時期は2026年8月1日予定です。
上限は全国一律ではなく、一般送配電エリアごとに設定されます。
資料上の2026年3月時点の試算では、北海道5、東北6、東京11、中部5、北陸8、関西10、中国5、四国5、九州8という数字が示されています。
ただし、これは試算値であり、最終的な上限数は各一般送配電事業者の公表を待つ必要があります。
2.上限超過分は書類確認されず、再申込み待ちになる場合がある
上限を超えた接続検討申込みについては、一般送配電事業者が申込書類の確認を行わず、上限超過が解消した後に改めて申込みを求める運用が示されています。
平たく言えば、「とりあえず大量に出して、列に置いておく」という方法が通りにくくなります。
ただし、受付済み案件が一律に取り消されるわけではありません。
2026年7月31日時点ですでに受付済みの上限超過分は、従来どおり回答される整理です。
一方、2026年8月1日時点で未受付の案件は、上限対象になります。実務上は、「申込み準備済み」ではなく「受付済み」かどうかが重要です。
大量に案件を持つ事業者は、どの案件を優先して進めるかを早めに決める必要があります。
3.土地書類、早期回答、保証金で「本気度」が見られる
接続検討や契約申込みでは、案件の実現性を確認する仕組みも強まります。
第3回WG資料では、接続検討で土地に関する書類提出を要件化し、契約申込みで土地使用権原の提出を要件化する方向が示されています。
土地使用権原とは、その土地を使う法的な権利のことです。
つまり、「本当にその場所で事業を進められるのか」が入口で見られるようになります。
また、高圧で配電系統に接続する発電等設備では、申込み時に「上位系統増強を受け入れるか」「工事費負担金の上限額はいくらか」を示せる運用が2026年4月から始まると整理されています。
条件に合わないと分かった案件には、早期に連系否が返る仕組みです。
契約申込みでも、系統用蓄電池に限った暫定対策として、2026年4月以降に契約申込みを受領する案件から、保証金額の増額と工事費負担金の分割払い厳格化が適用されます。
資料の支払いイメージでは、契約申込み時の保証金は全工事費負担金100%、分割払いは初回10%、2回目50%、3回目75%です。
要するに、今後は「場所を確保しているか」「資金を用意できるか」「条件が合わない場合に早く判断できるか」が、これまで以上に重要になります。
4.充電側ノンファーム型接続は方向性であり、足元は暫定対策
系統用蓄電池では、充電側の接続ルールも重要な論点です。
ノンファーム型接続とは、系統容量を常に固定的に確保するのではなく、混雑時などには出力制御を受けることを前提に接続する方式です。
現在、放電側ではノンファーム型接続が進んでいますが、充電側では容量を確保する必要が残っています。
政府は、充電側でもノンファーム型接続を目指す方針を示しています。
ただし、これはすぐに全国で使える完成制度ではありません。
計画値制御による本格導入には5〜7年かかると整理されています。
足元では、N-1充電停止装置や特定時間帯の充電制限に同意する案件を対象に、系統増強なしで早くつなぐ暫定対策の見直しが先に進みます。
ここは誤解しやすい点です。将来の本命は充電側ノンファーム型接続ですが、今すぐの実務では暫定対策の条件確認が必要です。
再エネ併設蓄電池はどう読むべきか
1.主軸は締め付けではなく、支援継続と市場活用
再エネ併設蓄電池については、系統用蓄電池と同じように一律で締め付けられる、と読むのは正確ではありません。
第3回WG資料では、再エネ併設蓄電池について、導入支援を継続し、導入ポテンシャルや実態を把握する方向が示されています。
背景にあるのは、FITからFIPへの移行などを通じた再エネの市場統合です。
FITは、再エネで発電した電気を固定価格で買い取る制度です。
FIPは、市場価格に一定の上乗せを行う制度です。
FIPでは市場価格が反映されるため、「いつ発電した電気を売るか」が重要になります。
蓄電池を併設すれば、価格が低い時間帯に電気をため、価格が高い時間帯に売ることができます。
出力制御が発生しやすい時間帯の電気を活用する手段にもなります。
そのため、再エネ併設蓄電池は、単なる非常用設備ではなく、再エネを市場に合わせて使うための調整手段として位置づけられています。
2.ただし蓄電池が主たる設備なら扱いが変わり得る
一方で、「再エネ併設」と名が付けば常に別枠、というわけでもありません。
次世代電力系統WGの資料では、他電源と併設する場合でも、設備容量などから蓄電池が主たる設備と判定される場合には、系統用蓄電池向けの暫定対策の対象になり得ると示されています。
実務では、「発電所に蓄電池が付いている案件」なのか、「蓄電池が主で、発電設備が付いている案件」なのかを確認する必要があります。
同じ併設案件でも、設備容量や運用計画によって扱いが変わる可能性があります。
特に、大容量の蓄電池を組み合わせる案件では、系統用蓄電池向けの保証金や分割払いルールの対象になるかを確認すべきです。
実務で確認すべきことと、まだ未定のこと
1.まず受付済みか未受付かを確認する
事業者が最初に確認すべきなのは、自社案件がどの手続段階にあるかです。
連系済みなのか、契約申込み済みなのか、接続検討中なのか、まだ接続検討の申込み前なのかで、影響は変わります。
特に今回の件数上限では、2026年7月31日時点で受付済みか、2026年8月1日時点で未受付かが大きな分かれ目です。
「社内で準備している」だけでは足りません。
一般送配電事業者側で受付済みになっているかを確認する必要があります。
2.エリア別の上限、土地、資金計画を確認する
接続検討の上限は、一般送配電エリアごとに設定されます。
そのため、自社の申込み件数もエリア別に管理する必要があります。
全国合計ではなく、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州のどのエリアで何件あるかを確認することが重要です。
あわせて、土地関係書類と資金計画も前倒しで確認すべきです。
土地使用権原を確保できるか、保証金や工事費負担金をどのタイミングで用意できるかが、案件の進み方に直結します。
今後は、候補地を多く並べるだけでは不十分です。
接続、土地、資金の3点で、優先順位を付けることが必要になります。
3.まだ決まっていない点は「試算」「予定」「検討中」として扱う
今回の資料では、すでに方向性が示されたものと、まだ最終確定していないものが混在しています。
たとえば、接続検討の件数上限は2026年8月1日開始予定ですが、エリア別の上限数は各社公表待ちです。
北海道5、東北6、東京11、関西10などの数字は、2026年3月時点の試算値です。
充電側ノンファーム型接続も、導入を目指す方向性は示されていますが、本格導入には5〜7年かかる整理です。
現時点で全国一律に使える完成制度ではありません。
補助についても、必要性の高い系統用蓄電池を優先的に支援する方向は示されていますが、具体的な選別基準は今後の制度設計や公募要領を確認する必要があります。
記事や社内資料では、「決定」「予定」「試算」「検討中」を混同しないことが重要です。
よくある誤解(Q&A)
Q
約3,000万kWの蓄電池が、近く一斉に動き出すのですか。
A: いいえ。約3,000万kWは契約申込み量であり、連系済み量ではありません。2025年12月末時点の連系済み量は64万kWです。
Q
約3,000万kWには再エネ併設蓄電池も含まれますか。
A: 含まれません。 第3回WG資料では、再エネ併設蓄電池の導入量は含まないと注記されています。
Q
接続検討の上限が入ると、受付済み案件も取り消されますか。
A: 一律に取り消されるわけではありません。 2026年7月31日時点で受付済みの上限超過分は、従来どおり回答される整理です。
Q
再エネ併設蓄電池も、系統用蓄電池と同じように締め付けられますか。
A: 一律ではありません。 再エネ併設蓄電池は、現時点では支援継続と市場活用が主軸です。 ただし、蓄電池が主たる設備と判定される場合は、系統用蓄電池向け措置の対象になり得ます。
Q
充電側ノンファーム型接続は、もう使える制度ですか。
A: 完成制度ではありません。 本格導入には5〜7年かかる整理であり、足元ではN-1充電停止装置や充電制限を前提とする暫定対策の確認が必要です。
出典(一次情報のみ)
経済産業省「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ(第3回)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/distributed_energy_wg/003.html更新日:2026年4月15日/参照日:2026年4月21日
資源エネルギー庁「分散型エネルギーリソースに関する施策の方向性及び具体策(第3回分散型エネルギー推進戦略WG 資料2)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/distributed_energy_wg/pdf/003_02_00.pdf発行日:2026年4月15日/参照日:2026年4月21日
資源エネルギー庁「分散型エネルギーリソースの施策の方向性を踏まえた対応について(第3回分散型エネルギー推進戦略WG 資料1)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/distributed_energy_wg/pdf/003_01_00.pdf発行日:2026年4月15日/参照日:2026年4月21日
資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について(第9回次世代電力系統WG 資料1)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/009_01_00.pdf発行日:2026年3月27日/参照日:2026年4月21日
資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について(第10回次世代電力系統WG 資料2)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/010_02_00.pdf発行日:2026年4月16日/参照日:2026年4月21日
資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について(第7回次世代電力系統WG 資料1-1)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/007_01_01.pdf発行日:2026年2月9日/参照日:2026年4月21日
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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