作成日:2026.04.10
更新日:—
上級
制度・政策・審議会
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
託送料金は“5年一律”から“年度ごと段階引き上げ”へ ― レベニューキャップ第2規制期間の検討が始動
電力・ガス取引監視等委員会は第74回料金制度専門会合(2026年4月10日)で、2028年度に始まるレベニューキャップ第2規制期間に向けた検討課題を整理した。規制期間中一律だった託送料金を年度ごとに段階的に引き上げる方向を初めて提示し、次世代投資費用・調整力費用・統計査定も論点化。蓄電池の系統利用コストの土台に関わる議論が動き出した。
このページの要点
- 監視委の第74回料金制度専門会合(2026年4月10日)で、2028年度開始のレベニューキャップ第2規制期間に向けた検討課題(物価等上昇・事業報酬/目標計画の評価方法/次世代投資費用/統計査定の4領域)を事務局が整理し討議した(議事録)。
- 個別論点として「規制期間中一律の託送料金の見直し」を取り上げ、各年度の料金単価を段階的に引き上げる設定が合理的か議論。5年分単価の期初一括確認・約款記載で予見性を確保する案が示され、委員は概ね支持した(議事録)。
- 一般送配電事業者の2026・2027年度投資量見直し(送電8〜9割・変電7〜9割・配電8割・無電柱化5割程度の申請比見込み)も確認。省令改正を要する論点は2026年内〜2027年初頭に検討する想定スケジュールが示された(議事録)。
出典:電力・ガス取引監視等委員会 第74回料金制度専門会合 議事録(2026年4月10日開催・全24ページ)。
送電網の利用料である託送料金の、次期5年間(2028年度開始)のルールを設計する検討が始まった。5年間一律だった料金を年度ごとに段階的に引き上げる方式への転換案が示され、蓄電池の系統利用コストと次世代投資の扱いを左右する土台づくりが動き出した。
第74回料金制度専門会合で示された第2規制期間の論点全体像
2028年4月に始まる第2規制期間に向け、託送料金制度の主要論点が初めて体系的に整理された。
図1:第2規制期間に向けた検討課題の4領域 ― 物価等上昇・事業報酬/目標計画/次世代投資費用/統計査定
出典:電力・ガス取引監視等委員会 第74回料金制度専門会合 議事録(2026年4月10日)。省令改正を要する論点は2026年内〜2027年初頭に検討する想定。
電力・ガス取引監視等委員会の第74回料金制度専門会合は2026年4月10日16:00〜17:07に開催され、議題は2件だった。議題1は「一般送配電事業者による2026・2027年度の合理的かつ現実的な投資量の見直し」、議題2は「第2規制期間に向けた検討課題」である。本記事は全24ページの逐語議事録に基づく。
議題1では、送配電網協議会が第1規制期間の投資量を精査し、安定供給を前提に合理的・現実的な内容へ見直していると報告した。送電設備は接続事業者起因の計画変更・用地交渉難航等で申請比8〜9割、変電設備は機器長納期化等で7〜9割、配電の需要・電源対応は住宅着工減で8割程度、無電柱化は5割程度の見込みとされた。
効率化施策としては、撤去機器の流用、配電設備のスリム化、期待年数見直し、航空レーザー三次元測量、Webカメラ立会、引留グリップ等の横展開が説明され、事務局は翌期・期中調整の申請時に投資量見直しの妥当性を厳正審査し、効率化施策の横展開状況を確認するとした。
議題2では、第2規制期間に向けた検討課題が4つの領域に整理された。
| 領域 | 主な検討課題 |
|---|---|
| Ⅰ 物価等上昇・事業報酬 | 制度措置後の検証、ロスシェア/プロフィットシェア、物価・金利変動の反映方法、規制期間中一律の託送料金の見直し |
| Ⅱ 目標計画の設定・評価方法 | 7分野18項目の縦横比較(縦=自社過去実績、横=10事業者比較)の評価方法の再検討、レピュテーショナルインセンティブの省力化 |
| Ⅲ 次世代投資費用 | 脱炭素・レジリエンス・DX/AI・省人化等の位置づけと対象範囲(新規性・革新性)の明確化、便益評価方法、効率化係数0.5%非設定の整理 |
| Ⅳ 統計査定の精緻化 | 中央値査定から重回帰分析への見直し検討 |
2027年7月頃の第2規制期間料金審査を仮定し、省令改正を要する論点は2026年内〜2027年初頭に検討する想定スケジュールが示された。
— 第74回料金制度専門会合 議事録(2026年4月10日)規制期間中一律の託送料金を段階引き上げに見直す案を読み解く
「5年間ずっと同じ料金」を「年度ごとに少しずつ上げる」方式へ。予見性の担保が設計の鍵になる。
図2:規制期間中一律から年度ごと段階引き上げへ ― 合理性の3観点と5年分単価の期初一括確認
出典:第74回料金制度専門会合 議事録(2026年4月10日)。会合時点の検討・想定。
今回の会合で最も注目されるのが、個別論点として具体的に議論された規制期間中一律の託送料金の見直しである。後年度に費用が積み上がる構造を踏まえ、各年度の料金単価を段階的に引き上げる設定が合理的かが検討された。合理性の根拠として挙げられたのは、①収支の安定化、②費用発生時期に即した公平な負担、③資金調達コストの抑制、の3つの観点である。
現行(第1規制期間)
規制期間中一律の託送料金。5年間同じ料金単価を維持する一方、後年度に費用が積み上がる構造との間にずれが生じる。
見直し案(第2規制期間)
各年度の料金単価を段階的に引き上げる設定。5年分の単価を期初に一括確認し約款に記載することで、小売事業者・需要家の予見性を確保する。
予見性の担保策として、5年分の単価を期初に一括して確認し、約款に記載する案が提示された。料金が毎年度変わっても、その水準が期初にすべて確定・公表されていれば、料金を支払う側は中長期の計画を立てられる、という設計思想である。
委員からは段階的設定への支持(華表・松村・新家・村松委員)、公表から変更まで最低6か月程度の周知期間の要望(池田オブザーバー)、期中調整の枠組みとセットでの導入の確認、調整力費用(揚水随契・kW公募等)の扱いの論点化、料金が恣意的な利益操作にならない視点の必要性等の意見が出た。
— 第74回料金制度専門会合 議事録(2026年4月10日)段階的設定は委員に概ね支持されたが、期中調整の枠組みとセットで運用すること、公表から変更までの周知期間を確保すること、恣意的な利益操作を防ぐ視点を持つことなど、制度設計上の条件も同時に付された。今後の想定スケジュールは次のとおりである。
次世代投資費用・調整力費用の扱いと蓄電池の系統コストへの含意
託送料金は系統用蓄電池の系統利用コストの基盤。料金方式・費用範囲の見直しは事業性評価の前提を動かす。
託送料金は系統用蓄電池の系統利用コストの基盤であり、第2規制期間(2028年度〜)の料金設定方式の見直しは、中長期の事業性評価の前提を左右する。特に「規制期間中一律→年度ごと段階引き上げ」への転換は、各年度の託送料金水準の予見可能性に直結し、蓄電池の充放電コスト・収益試算に影響する。
次世代投資費用 ― 蓄電池・フレキシビリティ投資の費用認容に関わる枠組み
次世代投資費用については、脱炭素・レジリエンス・DX/AI・省人化等の位置づけと対象範囲(新規性・革新性の観点)の明確化、便益説明の具体性・合理性の統一が検討課題とされた。効率化係数(年0.5%)は引き続き非設定とする整理である。この対象範囲の明確化は、系統側蓄電池やフレキシビリティ投資の費用認容の枠組みに関わりうる論点だ。
調整力費用と統計査定 ― 需給調整市場との接続点
調整力費用(揚水随契・短期供給力のkW公募費用)を託送料金(レベニューキャップ)でどう扱うかも今後の論点として明示された。需給調整市場の制度設計と託送料金制度が接続する領域であり、蓄電池の調整力ビジネス環境にも波及しうる。また、第1規制期間で決定係数が低く中央値査定だった項目については、説明変数の見直しにより重回帰分析へ移行する方向が示された。
- 蓄電池事業者・アグリゲーターは、第2規制期間(2028年度〜)の託送料金が年度ごと段階引き上げとなる可能性を中長期の系統利用コスト試算に織り込む。
- 系統側蓄電池・フレキシビリティ投資を検討する事業者は、次世代投資費用の対象範囲(脱炭素・DX等の位置づけ)の議論の行方を継続フォローする。
- 省令改正を要する論点が2026年内〜2027年初頭に検討される想定スケジュールを踏まえ、本会合の今後の議論(調整力費用の扱い含む)を注視する。
読者別の緊急度
次期託送料金制度の方向性として把握しておくとよいが、直接の判断材料は先。
設計・コスト試算担当は次世代投資費用・託送料金方式の変更を今月中に確認すべき。
市場参加者・制度担当は第2規制期間の論点整理の起点として今週中に押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
レベニューキャップの第2規制期間はいつから始まりますか?
2028年4月(2028年度)に開始されます。2027年7月頃の料金審査開始を仮定し、省令改正を要する論点は2026年内〜2027年初頭に検討する想定スケジュールが示されました。
託送料金の見直し案はどのような内容ですか?
規制期間中一律だった託送料金を、各年度の料金単価を段階的に引き上げる設定へ見直す案です。5年分の単価を期初に一括確認し約款に記載することで、小売事業者・需要家の予見性を確保するとしています。
なぜ段階的な引き上げが合理的とされるのですか?
後年度に費用が積み上がる構造を踏まえ、収支の安定化、費用発生時期に即した公平な負担、資金調達コストの抑制の観点から合理的かが検討されました。委員からは段階的設定への支持が示されています。
会合ではどのような意見が出ましたか?
段階的設定への支持(華表・松村・新家・村松委員)、公表から変更まで最低6か月程度の周知期間の要望(池田オブザーバー)、期中調整の枠組みとセットでの導入の確認、調整力費用(揚水随契・kW公募等)の扱いの論点化、料金が恣意的な利益操作にならない視点の必要性などの意見が出ました。
次世代投資費用の扱いはどうなりますか?
脱炭素・レジリエンス・DX/AI・省人化等の位置づけと対象範囲(新規性・革新性)の明確化、便益説明の具体性・合理性の統一が検討されます。効率化係数(年0.5%)は引き続き非設定とする整理です。
蓄電池事業にはどのような影響がありますか?
託送料金は系統用蓄電池の系統利用コストの基盤であり、年度ごとの段階引き上げは充放電コスト・収益試算に影響します。次世代投資費用の対象範囲や調整力費用(揚水随契・kW公募費用)の扱いも、蓄電池の投資環境・調整力ビジネスに関わる論点です。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 「規制期間中一律の託送料金」を年度ごと段階引き上げに見直す方向性が初めて具体的に提示され、5年分単価の期初一括確認・約款記載で予見性を担保する設計が示された点は、託送料金の予見可能性を重視する蓄電池事業者の注視点となる。
- 次世代投資費用に効率化係数(年0.5%)を設定しない整理が維持され、脱炭素・レジリエンス・DX/AI・省人化等の位置づけと対象範囲の明確化が論点化されたことは、系統側蓄電池・フレキシビリティ投資の費用認容の枠組みに関わる。
- 調整力費用(揚水随契・短期供給力のkW公募費用)をレベニューキャップでどう扱うかが論点として明示され、需給調整市場の制度設計と託送料金制度の接続が今後深まる方向にある。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
電力・ガス取引監視等委員会の第74回料金制度専門会合(2026年4月10日)は、2028年度開始のレベニューキャップ第2規制期間に向けた検討課題を整理し、規制期間中一律だった託送料金を年度ごとに段階的に引き上げる案を初めて提示した。5年分単価の期初一括確認・約款記載で予見性を確保する設計で、委員は概ね支持。あわせて一般送配電の2026・2027年度投資量見直し(送電8〜9割等の申請比見込み)を確認し、次世代投資費用の範囲・調整力費用の扱い・統計査定の精緻化(中央値→重回帰)も論点化した。託送料金は蓄電池の系統利用コストの基盤であり、省令改正論点が2026年内〜2027年初頭に検討される想定スケジュールを踏まえ、今後の議論を注視したい。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力・ガス取引監視等委員会 第74回料金制度専門会合(2026年4月10日)議事録(全24ページ)
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_system_injunction/ - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/監視委/20260410_監視委_議事録.pdf
本記事は2026年4月10日開催の会合の議事録のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。第2規制期間の制度内容・スケジュールは会合時点の検討・想定であり、今後の審議で変更される可能性があります。
安心して選ぶためのJC-STAR★1
〜BESS関連製品53件を登録番号付きで公開〜BMS/PCS/EMS/ESS関連の★1適合ラベル取得製品(当社再照合:2026-04-17、IPA製品リスト最終更新:2026-04-15)
2026.04.23
技術・仕様・EMS
ピックアップ記事
はじめての系統用蓄電池(BESS):役割・3つの市場・安全が5分でわかる
2025.09.21
技術・仕様・EMS
その他記事一覧
はじめての系統用蓄電池(BESS) PCS・BMS・EMSが一目でわかる超入門 最初に覚える4つ:kW・kWh・Cレート・RTE 初心者投資家向け・商品別に"実務でわかる"解説2026年版 需給調整市場(EPRX)入門 【BESS向け】 JEPX(卸電力市場)入門 スポット/時間前のしくみと系統用蓄電池(BESS)の使い方まで一気に理解 容量市場(OCCTO)とは?
BESSの参加条件と収益の見方を、図解でやさしく解説 系統用蓄電池(BESS)の系統連系ガイド【2025年版】 — 申請から受給開始まで7ステップ — 消防危第200号解説 - リチウムイオン蓄電池の新設置基準
― 箱ごとに指定数量の倍数を合算しない運用・耐火性収納箱の要点解説 ― 意外と間違える:消防危303号の要点
—『離隔距離は各消防判断』と"合算しない"の条件を3分で理解 発電事業「10MWないと事業者になれない?」を正しく理解
BESS(蓄電池)にも対応した電気事業法の解説 民家から◯mは誤解:騒音規制は"測定位置×dB"が正解
民家からの距離基準は存在しないー正しい測定位置とdB値による判断 系統用蓄電池は第一種特定工作物?
— 都市計画法の位置づけと開発許可の要点