作成日:2026.07.28
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託送料金/制度改定
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
電気代は上がる?送配電8社が「収入上限」を合計8,845億円増額申請
〜2026年11月の新料金を予定、託送料金と蓄電池ビジネスへの影響を整理〜
2026年7月10日、北海道・東北・東京・中部・関西・四国・九州・沖縄の一般送配電事業者8社が、託送料金の基礎となる「収入の見通し」の変更承認を経済産業大臣に申請しました。
8社が公表した増加額をBESS NEWS編集部が単純合計すると、5か年で8,845億円です。これは国が公表した一括の申請額ではなく、8社それぞれの公表値を足した数字です。
ただし、今回行われたのはあくまで変更の申請です。申請額や新しい託送料金はまだ確定しておらず、各社は国の審査と承認を経て、2026年11月1日から新料金を適用する予定としています。
本記事では、何が公表され、何がまだ決まっていないのかを整理したうえで、家庭や企業の電気代、系統用蓄電池を含む蓄電池ビジネスへの影響と、実務担当者が次に確認すべき項目を解説します。
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
・一般送配電事業者8社が、5か年の「収入の見通し」を合計8,845億円増やす変更承認申請を行いました。
・8,845億円は各社公表値の編集部単純合計で、家庭の電気代の値上げ総額ではありません。
・新料金は2026年11月1日からの適用予定ですが、承認額、料金単価、蓄電池への影響はまだ確定していません。
何が申請され、何がまだ未定なのか
1.送配電8社が「収入の見通し」の変更承認を申請
今回、変更承認を申請したのは、次の8社です。
・北海道電力ネットワーク
・東北電力ネットワーク
・東京電力パワーグリッド
・中部電力パワーグリッド
・関西電力送配電
・四国電力送配電
・九州電力送配電
・沖縄電力
一般送配電事業者とは、各地域の送電線、配電線、変電所などを管理し、発電所から家庭や企業まで電気を運ぶ会社です。8社が変更を申請した「収入の見通し」とは、一般送配電事業者が事業計画を実施するために必要と見積もった、5か年の費用総額です。
託送料金を設定する際の基礎となります。
ここで重要なのは、8社が申請したことは確定した事実ですが、その申請内容がそのまま承認されたわけではないという点です。
2.2026年11月1日は「適用予定日」で、料金単価は未定
2026年7月10日の公表資料時点では、次のように整理できます。
決まっていること
・8社が2026年7月10日に変更承認を申請した
・各社が5か年の収入の見通しと増加額を公表した
今後の予定
・国が申請内容を審査する
・経済産業大臣の承認後、各社が託送料金を設定する
・各社は2026年11月1日から新料金を適用する予定としている
まだ決まっていないこと
・最終的に承認される収入上限
・低圧・高圧・特別高圧ごとの料金単価
・基本料金と電力量料金への配分
・家庭や企業の実際の電気代への影響
・蓄電池案件ごとの運営費や収益への影響
・小売電気事業者が料金にどう反映するか
低圧・高圧・特別高圧とは、電気を受け取る電圧の区分です。一般に、家庭や小規模店舗は低圧、工場や商業施設は高圧、大規模工場などは特別高圧を利用します。
各社は、経済産業大臣の承認後、承認された収入の見通しを基に託送料金を設定し、託送供給等約款の変更届出を行う予定です。
託送供給等約款とは、送配電網を利用する際の料金や契約条件を定めた公式ルールです。
なぜ見直すのか―収入上限と託送料金の仕組み
1.レベニューキャップ制度は送配電網の5年間の予算枠
2023年度から、一般送配電事業者の託送料金にはレベニューキャップ制度が導入されています。
レベニューキャップとは「収入の上限」という意味です。一般送配電事業者は、送配電設備の更新、保守、災害対策、再生可能エネルギーの受け入れなどに必要な5年間の費用を算定し、経済産業大臣の承認を受けます。
道路にたとえると、次のような関係です。
・送配電網:電気を運ぶための道路
・収入上限:道路の整備や補修に使う5年間の予算枠
・託送料金:その道路を利用するための料金
第一規制期間は、2023年度から2027年度までです。一般送配電事業者は、承認された収入上限を基に託送料金を設定します。
2.増額理由は物価・労務費・金利だけではない
今回の申請の主な背景として、各社は次の費用上昇を挙げています。
・送電線や変電設備などに使う資材価格の上昇
・工事や保守を担う人材の労務費上昇
・借入れや社債などの金利上昇
・施工人材や資材の供給網を維持するための取引価格上昇
労務費とは、工事や保守を行う人の賃金などにかかる費用です。レベニューキャップ制度が検討された2021年当時は、物価などの変動が比較的小さかったため、第一規制期間では将来の物価上昇分を費用にあらかじめ含めない整理となっていました。
しかし、その後、物価、人件費、金利が大きく上昇したため、制度上の取扱いが見直されました。また、8,845億円の増加額が、すべて物価や金利の上昇だけで構成されているわけではありません。
会社によっては、次の費用も含まれています。
・過去の実績が確定した費用の精算
・容量拠出金などの実績変動
・公募や約定結果によって変わった費用
・一般送配電事業者の判断だけでは増減を抑えにくい費用
こうした費用は、資料上で制御不能費用や外生的費用と呼ばれることがあります。具体的な内訳は会社ごとに異なります。
8社の申請額と「8,845億円」の正しい読み方
1.8社の5か年増加額を一覧で確認
以下の金額は、各社が公表した資料に基づきます。
北海道電力ネットワーク
・今回申請した5か年総額:1兆603億円
・現行からの増加額:544億円
東北電力ネットワーク
・今回申請した5か年総額:2兆5,097億円
・現行からの増加額:1,104億円
東京電力パワーグリッド
・今回申請した5か年総額:7兆6,062億円
・現行からの増加額:2,516億円
中部電力パワーグリッド
・今回申請した5か年総額:3兆2,979億円
・現行からの増加額:1,374億円
関西電力送配電
・今回申請した5か年総額:3兆7,626億円
・現行からの増加額:1,496億円
四国電力送配電
・今回申請した5か年総額:8,216億円
・現行からの増加額:378億円
九州電力送配電
・今回申請した5か年総額:2兆6,360億円
・現行からの増加額:1,276億円
沖縄電力
・今回申請した5か年総額:3,621億円
・現行からの増加額:157億円
BESS NEWS編集部による単純合計
・今回申請した5か年総額:22兆564億円
・現行からの増加額:8,845億円
増加額が最も大きいのは、東京電力パワーグリッドの2,516億円です。
次いで、関西電力送配電の1,496億円、中部電力パワーグリッドの1,374億円、九州電力送配電の1,276億円となっています。なお、各社資料では億円未満を端数処理しているため、表示された変更前と変更後の金額を差し引いた結果と、公表された増加額が一致しない場合があります。
2.8,845億円は電気代の値上げ総額ではない
8,845億円は、8社の2023年度から2027年度までの5か年の収入上限の増加額を単純に足した数字です。したがって、次のような読み方は誤りです。
・家庭の電気代が合計8,845億円上がる
・1年間で8,845億円の値上げが行われる
・2026年11月に8,845億円を一度に回収する
・すべての託送料金が同じ割合で上がる
・蓄電池の運営費が同じ割合で増える
第一規制期間は2028年3月31日までで、新料金の適用予定日は2026年11月1日です。予定どおりに適用された場合、新料金の対象期間は2026年11月から2028年3月までの17か月となります。
これは、各社が示した予定日と第一規制期間の終了日から算出した編集部整理です。一部の会社は、5か年の増加額とは別に、残り17か月へ反映した場合の年換算額も公表しています。
ただし、この年換算額も、家庭の年間電気料金の増加額ではありません。一般送配電事業者側の収入の見通しを、1年当たりに換算した参考値です。
誰にどのような影響があり得るのか
1.家庭・企業は小売電気料金への反映を確認
託送料金とは、送配電網を使って電気を届けるための利用料です。主に小売電気事業者などが、一般送配電事業者に支払います。
東北電力ネットワークは、電気の使用条件によって異なるとしたうえで、一般的に家庭の電気料金の2~3割程度を託送料金が占めると説明しています。
託送料金が上がれば、小売電気事業者の費用も増える可能性があります。その費用が料金プランに反映されれば、家庭や企業の電気代にも上昇方向の影響が出ます。
ただし、実際の負担額は次の条件で変わります。
・低圧・高圧・特別高圧の区分
・基本料金と電力量料金への配分
・契約電力
・毎月の使用電力量
・小売電気事業者の料金方針
・現在契約している料金プラン
現時点で「家庭の電気代が一律に何%上がる」と断定することはできません。
2.蓄電池への影響は料金単価と運用方法で変わる
今回の8社の申請資料には、蓄電池向けの具体的な新料金単価は記載されていません。
そのため、現時点では「系統用蓄電池の運営費が何%増える」「蓄電池事業の利益が何円減る」といった計算はできません。一般論として、蓄電池への影響には次の両面があります。
コストが増える可能性
・充電に使う電気の購入費が上がる
・基本料金や契約関連費用が上がる
・大きな電力で充電する設備では、契約電力の影響を受ける
経済効果が大きくなる可能性
・電気料金が高い時間の購入量を減らせる
・最大需要電力を抑えて基本料金を削減できる
・太陽光発電の自家消費を増やせる
ピークカットとは、蓄電池を使って、工場や店舗が一度に使う最大電力を抑える運用です。したがって、今回の見直しが蓄電池にとって必ずプラス、または必ずマイナスになるとは限りません。接続エリア、電圧区分、契約内容、充放電の方法によって結果が変わります。
蓄電池事業者が今確認すべきこと
1.充電側と放電側を分けて契約・料金を確認
系統用蓄電池では、系統から電気を受け取る充電側(需要側)と、系統へ電気を送り出す放電側(発電側)を分けて確認する必要があります。
OCCTOは2026年6月1日、系統用蓄電池の契約申込みについて、発電側と需要側の両方の契約受付を要件とする整理を、系統アクセスの流れに反映しました。
ただし、これは今回の収入上限申請とは別の運用変更です。新しい託送料金を定めたものではありません。
実務担当者は、次の項目を整理しておくと、新単価の公表後に影響を計算しやすくなります。
接続エリア
・どの一般送配電事業者の区域に接続しているか
電圧区分
・低圧、高圧、特別高圧のどれに該当するか
充電側・需要側の契約
・基本料金
・電力量料金
・契約電力
・最大需要電力
・充電する時間帯
放電側・発電側の契約
・適用されるサービス
・料金の有無と計算方法
・計量条件
・契約単位
小売電気事業者との契約
・託送料金の変更が料金に反映されるか
・反映される場合、いつから適用されるか
・契約変更や通知の手続きが必要か
2.新単価の公表後に事業採算を再計算
蓄電池案件の年間収支は、一般論として次のように整理できます。
年間収支=年間収入+電気料金削減額-充電電力費-託送・契約関連費-運用保守費
これは今回の一次資料に掲載された公式の計算式ではなく、案件の採算を確認するための一般的な整理です。新料金が未公表の現段階では、次の3つのケースを準備しておくと、影響を確認しやすくなります。
・現在の料金が続くケース
・新料金によって費用が一定程度増えるケース
・想定以上に費用が増えるケース
ただし、新料金が公表される前の計算は、あくまで参考試算です。契約や投資判断に使う確定値ではありません。
また、8,845億円の増加率を、そのまま自社案件の充電費や運営費の増加率として使うことはできません。
新しい約款と料金表が公表された後、次の条件を使って案件ごとに再計算する必要があります。
・接続エリア
・電圧区分
・契約電力
・年間充電量
・最大充電電力
・充電する時間帯
・充放電時の損失
・発電側と需要側の契約条件
今後の流れと次に見るべき一次情報
1.申請から新料金適用までの流れ
今後の手続きは、次の順番で進む予定です。
1.一般送配電事業者8社が収入の見通しの変更承認を申請
申請日:2026年7月10日
2.国が申請内容を審査
申請額や事業計画の内容を確認します。
3.経済産業大臣が収入の見通しを承認
審査結果によっては、承認額が申請額から変わる可能性があります。
4.各社が託送供給等約款の変更を届け出
承認された収入上限を基に、料金単価や契約条件を設定します。
5.新たな託送料金を適用
各社が示している適用予定日は2026年11月1日です。
2.次に見るべきは承認結果と変更後約款
今後、実務担当者が確認すべき一次情報は、次の3つです。
・経済産業大臣による収入の見通しの承認結果
・各一般送配電事業者が公表する変更後の託送供給等約款と料金表
・契約中の小売電気事業者による料金変更通知
変更後の約款や料金表が公表されると、初めて次の内容を具体的に確認できます。
低圧・高圧・特別高圧ごとの料金単価 基本料金と電力量料金の変更幅 契約電力や最大需要電力の扱い正式な適用日 既存契約に対する経過措置 蓄電池案件ごとの年間費用への影響
現時点の結論は、託送料金には上昇方向の影響が想定されるものの、家庭の電気代や蓄電池の採算がいくら変わるかを断定できる段階ではないということです。
よくある誤解(Q&A)
Q
8,845億円の値上げが決まったのですか?
A: 決まっていません。8,845億円は、8社が申請した5か年の増加額をBESS NEWS編集部が単純に合計した数字です。今後、国の審査と経済産業大臣の承認が行われます。
Q
2026年11月1日から家庭の電気代が必ず上がりますか?
A: 現時点では断定できません。新しい託送料金は同日からの適用が予定されていますが、家庭の電気料金への具体的な反映額は未定です。小売電気事業者の対応や、各家庭の契約内容によっても異なります。
Q
8,845億円は1年間の増加額ですか?
A: 違います。 各社が公表した2023年度から2027年度までの5か年の増加額を合計したものです。
Q
全国の一般送配電事業者すべてが申請したのですか?
A: 今回の一次情報で申請者として公表されているのは8社です。 北陸電力送配電と中国電力ネットワークが今回の8社に含まれていない理由は、今回参照した一次情報には記載されていません。そのため、理由を推測で説明することはできません。
Q
蓄電池事業の利益は必ず減りますか?
A: 一概にはいえません。 充電費用や基本料金が上がれば、運営費が増える可能性があります。一方、需要家側蓄電池では、ピークカットや自家消費による電気料金削減効果が大きくなる場合もあります。
Q
8社の増加率を自社の事業計画に使えますか?
A: そのまま使うことはできません。 エリア、電圧区分、契約電力、充電量、運転方法によって影響が異なります。変更後の約款と料金表を使い、案件ごとに計算する必要があります。
出典(一次情報のみ)
一般社団法人送配電網協議会「一般送配電事業者による『託送供給等に係る収入の見通し』の変更承認申請について」
https://www.tdgc.jp/information/2026/07/10_1730.html公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
電力・ガス取引監視等委員会「レベニューキャップ制度における物価等の上昇及び事業報酬の取扱いに関して、経済産業大臣に建議しました」
https://www.egc.meti.go.jp/info/public/news/20260114001.html公表日:2026-01-14 参照日:2026-07-24
北海道電力ネットワーク「託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請について」
https://www.hepco.co.jp/network/info/2026/1253138_2077.html公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
東北電力ネットワーク「『託送供給等に係る収入の見通し』の変更承認申請について」
https://nw.tohoku-epco.co.jp/news/pdf/__icsFiles/afieldfile/2026/07/10/260710001.pdf公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
東京電力パワーグリッド「『託送供給等に係る収入の見通し』の変更承認申請について」
https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2026/pdf/26x2301.pdf公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
中部電力パワーグリッド「『託送供給等に係る収入の見通し』の変更(期中調整)承認申請について」
https://powergrid.chuden.co.jp/news/press/1218086_3281.html公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
関西電力送配電「託送料金における収入の見通しの変更承認申請について」
https://www.kansai-td.co.jp/corporate/press-release/2026/pdf/0710_1j_01.pdf公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
四国電力送配電「託送料金における収入の見通しの変更承認申請について」
https://www.yonden.co.jp/nw/press/2026/__icsFiles/afieldfile/2026/07/10/npr001.pdf公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
九州電力送配電「『託送供給等に係る収入の見通し』の変更承認申請等の概要について」
https://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0880/6018/td_eXpYhG2C.pdf公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
沖縄電力「託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請について」
https://www.okiden.co.jp/shared/pdf/news_release/2026/260710.pdf公表日:2026-07-10 参照日:2026-07-24
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「発電設備等に関する系統アクセスの流れの更新について」
https://www.occto.or.jp/news/access_oshirase_2026_260601.html更新日:2026-06-01 参照日:2026-07-24
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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