作成日:2026.10.22
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制度・政策・審議会
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
発動指令電源の「充当措置」案、調達オークションが無い年もエリアプライスで契約 2028年度から
容量市場に発動指令電源で参加するアグリゲーターにとって、追加オークションのうち調達オークションが開かれない年は、メインオークションで落ちたリソースや後からそろえたリソースを容量市場に乗せる道がなかった。10月22日の第77回 容量市場の在り方等に関する検討会で、事務局(資源エネルギー庁と電力広域的運営推進機関)はこの穴を埋める「充当措置」の詳細設計を示した。発動指令電源のメインオークション落札容量のうち市場退出した容量を上限に、別の発動指令電源をメインオークションのエリアプライスで契約し、候補が上限を超えれば実効性達成率の高い順に充てる。適用は対象実需給年度2028年度の追加オークションからとする案だが、委員がこれを了承したかどうかは資料からは読み取れない。
CONTENTS目次
何が起きたか:第77回の資料3で事務局は、調達オークションが開かれない年に、発動指令電源の市場退出容量を上限として別の発動指令電源を充てる「充当措置」の詳細を示した。単価はメインオークションのエリアプライス、順位は実効性達成率、既存の調達オークションの一類型として次回の追加オークション(2028年度実需給)から適用する案である。
なぜ重要か:これまでは調達オークションが無ければ、実需給に近づいてからそろえたリソースや、達成率100%を超えた過達分に容量収入の道がなかった。充当措置はその道を開くが、リリースオークションを開く年は実施しないなど、条件は細かい。
何をすべきか:自社の発動指令電源が1,000kWの条件を超えるかと、過去の実効性達成率を確かめておく。第77回の議事録で委員の了承を確認し、2027年4月頃の追加オークション開催判断と、その前後に出る募集要綱で手続を確かめる。
充当措置が出てきた理由:市場退出と「枠取り」
発動指令電源は、実需給年度の4年前に開かれるメインオークションで、これから確保する計画の容量(資料はこれを「ビジネスプラン」と呼ぶ)をもとに応札する。実効性テストまでに落札した分のリソースをそろえられなければ、テストの後に市場退出となる。資料3はここで、発動指令電源は他の電源等区分に比べて市場退出の割合が高い傾向にあり、落札容量の一部が「枠取り」になるケースがある、と書いている(p.2)。
この枠取りによって不落札となった電源等については、追加オークションのうち調達オークションが開催されない場合、容量市場への参加機会がなくなることから、当該電源等に対する一定の手当てを検討した。
出典:第77回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料3 p.2枠取りで割を食うのは、メインオークションで本来なら落札していたはずの電源等だ。そこに手当てをするのが充当措置で、方向性は9月1日の第76回(資料5)で整理済みだった(p.3)。今回の第77回は、その詳細設計である。
資料3の注記には、ねらいがもう二つ書かれている。実需給年度が近づいてはじめて供給力として確保できる電源等にも参加機会ができること。実効性テストの達成率が100%を上回る電源等、つまり過達分の約定可能性が高まり、達成率で有利な立場に立てるので枠取りが減ること(p.2)。
第76回での委員の意見も資料に抜粋されている(p.4)。追加オークションに取っておいた2%分をメインオークションに回した結果、追加オークションの開催可能性が下がり、発動指令電源の応札機会が失われるのではないかという懸念に対する「すごく良い回答」だと評価する声があった。一方で、追加オークションが開かれない状況でさらに容量を確保すれば容量拠出金の負担が過度になりうる、という指摘もあった。今回の詳細設計は、この負担の懸念にどう答えるかが軸になっている。
いつ実施されるか:開催判断とリリースオークション
追加オークションを開くかどうかは、いまも実需給前年度の4月頃を目途に決めている。電力広域的運営推進機関が需要曲線の原案と必要供給力などを国の審議会等に出し、意見を聞いたうえで開催要否を決める流れだ(p.12)。事務局は、充当措置もこの開催判断に合わせ、調達オークションが開かれない場合に実施するとした。調達オークションがエリア別で開かれる年は、開かれないエリアで充当措置を実施する。
難しいのはリリースオークションとの関係で、資料は3ページを割いている(p.13〜p.15)。リリースオークションの供給曲線は、調達オークションの需要曲線を反転させて作る。充当措置と同時に行うなら、オークション前の供給力確保量に充当措置の約定容量を足すのが筋で、そうすると供給曲線は右に動く。結果としてリリース容量は増え、約定価格は下がり、小売電気事業者等へ実質的に還元される金額が減る(p.14)。
そこで事務局は、リリースオークションを開く場合は充当措置を実施しない案を示した。p.17の判断フローを読むと、充当措置が全国で動くのは「全国でも、エリア別でも調達オークション(既存)を開かず、リリースオークションも開かない」と判断された年に限られる。
第76回では、足元の状況からするとリリースオークションは起きそうにないので弊害は小さい、という委員の意見も出ている(p.4)。ただ、これは委員個人の見方で、事務局が見通しを示したわけではない。
誰が、どれだけ、いくらで契約できるか
参加できるのは、1,000kWを超える発動指令電源
参加対象は第76回で整理された内容をそのまま引き継ぐ(p.6)。メインオークションで落札した発動指令電源なら、実効性テスト後の期待容量に調整係数を掛け、そこからメインオークション契約容量を差し引いた値が1,000kWを上回るもの。落札していない発動指令電源なら、実効性テスト後の期待容量に調整係数を掛けた値が1,000kWを上回るもの。後者には、メインオークションで非落札だった容量と、メインオークションの時点で実需給年度の供給力として確定していなかった未応札の容量の両方が入る。
上限は市場退出容量だけ、単価はメインオークションのエリアプライス
事務局が最初に置いた前提は、調達オークションが開かれない年は実需給に必要な供給力がすでに確保されている、という点だ。だから過度な容量拠出金の負担を生まない設計にする必要がある。具体的には、メインオークションで落札した発動指令電源にかかる容量拠出金を上回らないことを前提に、上限と単価を次のように決める案である(p.8)。
- 充当上限容量:発動指令電源のメインオークション落札容量のうち、市場退出容量を上限とする。
- 約定価格(契約単価):メインオークションでのエリアプライスに基づく。二段階のシングルプライス方式が適用された年度は、一段階目のシングルプライスによるエリアプライスを使う。
エリアプライスにする理由について、資料は、枠取りがなければ本来落札していた電源等に参加機会を与える措置だからだと説明している。さらに、達成率が100%を上回る過達分もメインオークションのエリアプライスで契約できる可能性をあらかじめ示せば、枠取りがもう一段減る効果を見込めるとも書く(p.8)。
既存の調達オークションと並べると、違いは量と値段に集中する(p.20)。発動指令電源の調達量の上限は、既存が「H3需要の1%+市場退出容量」(対象実需給年度2029年度まで。2030年度以降は「H3需要の5%−メインオークション落札量」)。充当措置は市場退出容量だけだ。約定価格は、既存がオークションで決まるのに対し、充当措置はメインオークションのエリアプライスで固定される。充当措置で受け取れる単価は事前に見えるが、量は他社の市場退出しだいで決まる。
上限容量を決める時期と、充当の順位
充当上限容量をいつの時点の市場退出容量で決めるか。事務局は、調達オークションで発動指令電源の応札上限容量を決めるときの扱いにそろえ、追加オークションの開催判断時点、つまり実需給前年の4月頃の市場退出容量を使う案を出した(p.9)。既存の調達オークションでは、市場退出した分を発動指令電源の各エリアの調達上限に足している(p.10)。
その後に退出が増えて上限が変わる心配は小さい、と資料は書く。発動指令電源の市場退出は、実効性テストに向けたリストの未提出か、テストの未達のどちらかで起きる。開催判断より後に事業者の都合で退出容量が増える性質のものではなく、これまでの実績でもそうした事例は無いという(p.9)。
候補が上限を超えた場合の決め方は、調達オークションの落札電源の決定方法を踏襲する(p.11)。調達オークションでは、発動指令電源の応札容量の合計が応札上限を超え、同じ価格の札が複数ある場合に、実効性達成率に応じて優先的に約定させている。充当措置にはそもそも応札価格が無いので、最初から実効性達成率で充当先を決め、達成率が同じならランダムに決める。
実務で効くのはこの順位のほうだ。充当措置で取れるかどうかは、その年の上限の大きさと、自社の過去の達成率の位置で決まる。なお、資料3では実効性達成率の算定式は「省略」と書かれており、本稿でも扱っていない(p.11)。
2028年度実需給からの適用とスケジュール
制度上の置き場所として、事務局は二つの選択肢を比べている(p.16)。既存の調達オークションの一類型にすれば、参加登録や契約管理の仕組みをそのまま使え、システム改修を抑えて募集要綱への反映だけで早く入れられる。別の新しい枠組みにすると、参加登録・契約管理のシステム改修や契約書の作成が必要になり、準備に相応の期間がかかる。早く入れることを優先して、一類型として整理する案になった。
そのうえで、次回の追加オークション(対象実需給年度2028年度)から適用し、手順は追加オークションの募集要綱に、入札手続きの詳細は業務マニュアル等に反映して事業者に周知するとしている(p.18)。約定処理や結果の公表も、調達オークションとして扱う。まとめのページでは、必要に応じて記載の見直し・明確化を図るとも書き添えている(p.20)。
p.18の運用スケジュール案は、2026年度と2027年度の2年度にまたがる横帯で描かれている。2026年度の第4四半期に募集要綱・約款の公表(2月頃)、2027年度に入って4月頃に追加オークションの実施判断、続いて充当上限容量の公表、5月頃に実効性テスト後の期待容量通知、応札期間を経て7月末頃に約定(充当)結果の公表、10月頃に容量確保契約の結果公表、という順だ。カレンダーに直すと、募集要綱は2027年2月頃、開催判断は2027年4月頃になる(西暦への換算は編集部による)。
よくある質問
Q1. 容量市場の充当措置とは何ですか?
Q2. 充当措置に参加できる発動指令電源の条件は何ですか?
Q3. 充当措置の契約単価はいくらになりますか?
Q4. 充当候補が上限を超えたら、どの電源等が優先されますか?
Q5. リリースオークションが開かれる年も充当措置は実施されますか?
Q6. いつから適用されますか?もう決まったのですか?
Q7. 蓄電池は充当措置の対象になりますか?
編集部の見立て
- 収入計画に織り込むには、量が読めない。単価はメインオークションのエリアプライスで事前に見えるが、上限は他社の市場退出容量で決まり、年ごと・エリアごとに変わる。しかも実施されるのは調達オークションもリリースオークションも開かれない年だけだ。資料3には過去の市場退出容量の数字が載っていないので、どの程度の量になるかは今のところ見積もれない。当面は上振れの余地として扱うのが妥当だろう。
- 実効性達成率の管理が、そのまま収入の順位になる。充当の順位は達成率で決まり、過達分もエリアプライスで契約できる可能性がある。テストで達成率を高く出せる事業者ほど、調達オークションが無い年でも取りにいける。リソースの管理とテストの準備に手をかける理由が一つ増えた、と読んでいる。
- 追加オークションの「開かれにくさ」が前提になっている。第76回の委員意見にあるとおり、追加オークション用の2%分をメインオークションへ回した結果、調達オークションが開かれない年は増えうる。充当措置はその受け皿で、2030年度以降は既存の調達上限の式も「H3需要の5%−メインオークション落札量」に変わる。両者を合わせた発動指令電源の参加機会がどう変わるかは、2030年度に近づいた段階で改めて確かめたい。
いつまでに何を確かめるか
| 時期 | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| いま | 自社の発動指令電源について、実効性テスト後の期待容量×調整係数(落札済みならメインオークション契約容量を差し引く)が1,000kWを超える見込みか | 資料3 p.6 |
| いま | 過去の実効性達成率を整理する(充当の順位を決める) | 資料3 p.11 |
| 議事録の公開時 | 第77回で委員が事務局案を了承したか、修正意見が付いたか | 資料3 p.20(今後の反映方針) |
| 2027年2月頃 | 募集要綱・約款で充当措置の手順が書き込まれたか | 資料3 p.18 |
| 2027年4月頃 | 2028年度実需給の追加オークションの開催判断。調達・リリースのどちらも開かれないか、エリア別か | 資料3 p.12・p.17 |
| 2027年4月頃〜7月末頃 | 充当上限容量の公表、実効性テスト後の期待容量通知(5月頃)、約定(充当)結果の公表(7月末頃) | 資料3 p.18 |
編集体制と事実確認プロセス
BESS NEWSの記事はこう作っています
- BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者・執行団体が自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
- 本稿の数値・日付・条件は、第77回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料3(全21枚)の全ページからテキストを抽出して読み、該当ページと1件ずつ突き合わせました。ページ番号は資料に印刷されたスライド番号(表紙を除くため、PDFの通し番号より1つ小さい)です。
- 資料に記載が見当たらない事項は「未確認」として推測で埋めていません。本稿では、第77回で委員が事務局案を了承したかどうか(議事録・音声は未公開)、過去の市場退出容量の実数、実効性達成率の算定式(資料3で省略)、充当上限容量をエリアごとに設定するかどうか、充当措置の応札期間の具体的な日付が未確認です。
- 「編集部の見立て」の3項目、蓄電池の扱いに関するQ7の回答、p.18の年度表記を西暦の月に直した部分は、編集部の解釈です。
数値照合表
本文に出した主要な数値を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。
| # | 項目 | 本文の値 | 一次情報(出典・該当箇所) |
|---|---|---|---|
| 1 | メインオークションの実施時期 | 実需給年度の4年前 | 資料3 p.2 |
| 2 | 第76回の開催日・資料番号 | 2026年9月1日・資料5 | 資料3 p.3 |
| 3 | 委員意見で触れられた追加オークション分 | 2%分をメインオークションへ | 資料3 p.4 |
| 4 | 参加対象の容量条件 | 1,000kWを上回るもの | 資料3 p.6・p.20 |
| 5 | 充当上限容量 | メインオークション落札容量のうち市場退出容量 | 資料3 p.8・p.20 |
| 6 | 約定価格(契約単価) | メインオークションのエリアプライス(二段階の年度は一段階目) | 資料3 p.8 |
| 7 | 過達分の基準 | 実効性達成率100%超 | 資料3 p.2・p.8 |
| 8 | 充当上限容量の算定時点 | 開催判断時点(実需給前年の4月頃) | 資料3 p.9・p.20 |
| 9 | 追加オークションの開催判断 | 実需給前年度の4月頃を目途 | 資料3 p.12 |
| 10 | 既存の調達オークションの調達上限(発動指令電源) | H3需要の1%+市場退出容量(2029年度まで) | 資料3 p.20 |
| 11 | 同 2030年度以降 | H3需要の5%−メインオークション落札量 | 資料3 p.20 注2 |
| 12 | 適用開始 | 次回の追加オークション(対象実需給年度2028年度) | 資料3 p.18・p.20 |
| 13 | 募集要綱・約款の公表 | 2月頃(2026年度第4四半期の列) | 資料3 p.18 |
| 14 | 期待容量通知/約定(充当)結果/容量確保契約の結果 | 5月頃/7月末頃/10月頃 | 資料3 p.18 |
出典(一次情報)
- 容量市場の在り方等に関する検討会事務局(資源エネルギー庁・電力広域的運営推進機関)「発動指令電源における供給力確保の蓋然性向上に向けた措置について」第77回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料3(2026年10月22日 公表)
- 電力広域的運営推進機関「第77回 容量市場の在り方等に関する検討会」開催ページ(2026年10月22日 公表)
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。
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