作成日:2026.09.01
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
90時間の想定に実績155時間
——容量市場のペナルティ計算式が揺らいでいる
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は2026年9月1日の第76回 容量市場の在り方等に関する検討会に、資料5「2025年度包括的検証後の取り組みと各課題における検討の方向性について(電源等区分と需給ひっ迫時に対応するリクワイアメント・ペナルティ)」を提出しました。
この資料に、蓄電池事業者が見落とせない数字の食い違いが1つ含まれています。
安定電源のペナルティレート算定に使うZ時間は現行90時間です。ところが2026年度の実績は7月末時点で約155時間に達しています。想定より65時間も多い状態です。
ペナルティ計算の分母が、現実の稼働要請と合わなくなっている。
- 安定電源のペナルティレートZ時間(現行90時間)の在り方が、改めて検討の対象になった。2026年度の低予備率アセスメント対象コマ実績は7月末時点で約155時間とZを既に超えている。
- 事務局は「需給実績に応じた都度見直しは本来的性質でない」と留保しつつ、案1から案3を提示した。適用日は未定で、検討段階である。
- 電源等区分では、蓄電池は「1日1回以上・連続3時間以上」で安定電源と再確認された。長期脱炭素電源オークションの「1日1回以上連続6時間以上」との差が改めて浮き上がった。
1. Z時間とは何か——ペナルティ計算の分母
要点まとめ Zが大きいほど1時間あたりの単価は小さい
Z時間は、ペナルティ単価を決める割り算の分母にあたる変数です。
容量市場に安定電源として参加すると、需給がひっ迫した際に求められた供給を果たせなかった場合にペナルティが発生します。
Z時間は、そのペナルティレートの算定に使う時間数です。計算式のなかで分母にあたる位置を占めます。
ここから導かれる関係はシンプルです。Zが大きいほど1時間あたりのペナルティ単価は小さくなり、したがってZの引き上げは事業者側のリスク軽減として働きます。
蓄電池が容量市場に参加するとき、想定ペナルティ額は事業計画のリスク項目になります。Zはその金額を直接左右する変数です。
- 安定電源
- 容量市場の電源等区分のひとつ。一定の運転継続能力を持つ電源が該当します。
- リクワイアメント
- 容量市場で契約した電源に課される義務です。
- 低予備率アセスメント対象コマ
- 予備率が低い時間帯として、供給力の提供状況を評価する対象になるコマです。
2. 30時間 → 90時間、そして実績155時間
1年余り前に3倍へ引き上げたばかりの想定を、実績が追い越しました。
| 時点 | 時間数 |
|---|---|
| 改定前 | 30時間 |
| 2025年4月に改定(現行) | 90時間 |
| 2026年度の実績(7月末時点) | 約155時間 |
Z時間はすでに一度、引き上げられています。2025年4月に30時間から90時間へ引き上げられたのは、まさに事業者側のリスクを軽減するためでした。3倍への引き上げですから、相応に大きな見直しです。
ところが2026年度に入り、低予備率アセスメント対象コマの実績が7月末時点で約155時間に達しました。
3. なぜ実績に合わせて直さないのか
要点まとめ 論点は数値の更新ではなく意味づけの再定義
実績に追随させると、事業者が翌年度のペナルティ単価を事前に読めなくなります。
素直に考えれば「実績が155時間なら、Zも155時間にすればよい」となりそうです。事務局はそこに留保を置きました。「需給実績に応じた都度見直しは本来的性質でない」という整理です。
理由は予見可能性にあります。Zを毎年の実績に追随させると、事業者は次年度のペナルティ単価を事前に読めなくなります。事業計画を立てる時点で分母が確定していない状態になるからです。
つまり論点は、Zを実績に合わせて引き上げるのか、Zの意味づけそのものを変えるのか、の2つに分かれます。事務局はZ時間の在り方を改めて検討するとして、案1から案3を提示しています。各案の中身は資料5に記載されているため、実務では原典を確認してください。
事務局は「需給実績に応じた都度見直しは本来的性質でない」としつつ、Z時間の在り方を改めて検討するとして案1から案3を提示した。
検討段階であり、適用日は示されていません。ただし論点が「数値の更新」ではなく「意味づけの再定義」に及んでいる点は押さえておく必要があります。
4. 電源等区分:容量市場3時間・長期脱炭素6時間の3段構造
要点まとめ デュレーションは3段構造で読む
デュレーションが2時間・3時間・6時間のどこにあるかで、参加できる制度が変わります。
同じ資料5で、電源等区分の整理も行われています。蓄電池は「1日1回以上・連続3時間以上の運転継続が可能な能力」を有する場合に、安定電源として位置づけられることが再確認されました。
ここで浮かび上がるのが、長期脱炭素電源オークションとの差です。長期脱炭素電源オークションの要件は「1日1回以上連続6時間以上」であり、別の基準になっています。
| デュレーション | 容量市場の安定電源 | 長期脱炭素電源オークション |
|---|---|---|
| 2時間 | 不可 | 不可 |
| 3時間 | 可 | 不可 |
| 6時間 | 可 | 可 |
デュレーション設計は、この2つの基準のどちらを(あるいは両方を)取りに行くかで決まります。3時間で容量市場に絞るのか、6時間まで伸ばして両方の選択肢を残すのか、という判断です。
5. 発動指令電源の市場退出容量への充当案
ペナルティ割合は大きく改善しました。ただし供給力提供の蓋然性は課題として残ります。
資料5には、発動指令電源に関する論点も含まれています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 2025年度の供給力提供実績 | 5割程度 |
| ペナルティ割合 2024年度 | 13.2% |
| ペナルティ割合 2025年度 | 1.0% |
ペナルティ割合は13.2%から1.0%へ大きく下がりました。実績は改善しています。ただし供給力提供実績が5割程度にとどまるため、供給力提供の蓋然性が課題として残るという整理です。
これを踏まえ、事務局案が1つ示されました。追加オークションが非開催の場合に、市場退出容量へメインオークション不参加・不落札電源や実効性テスト過達分を充当する措置を「講じることとしてはどうか」という案です。ただし、リリースオークション検討時等には実施しない案とされています。
この措置が入ると、アグリゲーターの枠取り行動が変わり得ます。不落札だった電源に別の出口ができるためです。
6. 自社案件でのペナルティ額をどう試算するか
検討段階のため単一値では計算できません。案ごとの幅をレンジとして持ちます。
検討段階のため、確定した数値で計算することはできません。できるのは、案ごとに幅を持たせた試算です。
- 資料5で案1〜案3の内容を確認する。Zがどう定義されるかは案によって異なります。
- 各案での想定ペナルティ額を自社案件で試算する。Zは分母にあたるため、Zが大きい案ほど1時間あたりの単価は小さくなります。
- 感度分析にZ時間の複数ケースを入れる。単一の想定値ではなく、案の幅をそのまま投資判断のレンジとして持ちます。
あわせて、発動指令電源を運用している場合は、市場退出容量への充当措置が導入された場合の影響を評価しておく必要があります。次回以降の容量市場の在り方等に関する検討会で、Zの設計がいつ決まるかを継続監視してください。
7. よくある質問
Z時間とは何ですか。
容量市場の安定電源について、ペナルティレートの算定に用いる時間数です。計算式の分母にあたるため、Zが大きいほど1時間あたりのペナルティ単価は小さくなります。
現在のZ時間は何時間ですか。
現行は90時間です。2025年4月に30時間から90時間へ改定されました。
2026年度の実績は何時間ですか。
低予備率アセスメント対象コマの実績が、7月末時点で約155時間です。現行のZ時間(90時間)を既に超えています。
なぜ実績に合わせてZ時間を直さないのですか。
事務局は「需給実績に応じた都度見直しは本来的性質でない」と整理しています。毎年の実績に追随させるとペナルティの予見可能性が損なわれるためで、Zの意味づけそのものの再定義が論点になっています。
Z時間はいつ変わるのですか。
検討段階であり、適用日は示されていません。事務局は案1から案3を提示し、Zの設計を継続検討するとしています。
蓄電池が容量市場の安定電源になる条件は何ですか。
「1日1回以上・連続3時間以上の運転継続が可能な能力」を有する場合に、安定電源として位置づけられることが資料5で再確認されました。
長期脱炭素電源オークションの要件とはどう違いますか。
長期脱炭素電源オークションは「1日1回以上連続6時間以上」で、容量市場の安定電源(連続3時間以上)とは別の基準です。2時間ではどちらも不可、3時間なら容量市場のみ、6時間なら両方が可という3段構造になります。
発動指令電源については何が示されましたか。
2025年度の供給力提供実績が5割程度、ペナルティ割合が2024年度13.2%から2025年度1.0%へ低下したことが示されました。あわせて、追加オークションが非開催の場合に市場退出容量へメインオークション不参加・不落札電源や実効性テスト過達分を充当する措置を「講じることとしてはどうか」との事務局案が示されています。ただしリリースオークション検討時等には実施しない案とされています。
今後は何が検討されるのですか。
①電源等区分、②Zの設計、③発動指令電源の蓋然性向上、の3点の詳細が継続検討されるとされています。
8. 編集部の見立て
90時間と155時間という2つの数字の差は、単なる予測のずれではありません。制度が想定した稼働の姿と、実際の系統運用のあいだにできた開きです。
Zは2025年4月に30時間から90時間へ、3倍に引き上げられたばかりです。その改定から1年余りで実績が90時間を超えたという事実の重さは、次の改定でも同じことが起きうることを示唆します。実績追随型にしないという事務局の判断は、この点でむしろ理解できます。追随させたところで追いつかない可能性があるからです。
蓄電池事業者にとって実務的に効くのは、Zが単一の想定値ではなくレンジとして扱うべき変数になったことです。案1から案3のどれが採られるかで想定ペナルティ額が変わる以上、単一値での事業計画は精度を装った不正確さになります。感度分析の変数として持つのが妥当です。
もうひとつ、電源等区分で「連続3時間以上」が再確認されたことは、長期脱炭素電源オークションの「連続6時間以上」との対比を鮮明にしました。2時間・3時間・6時間という3段の分岐は、デュレーション設計の議論を整理する軸になります。3時間は容量市場だけの世界、6時間は両方の扉が開く世界です。この差をコスト換算して比べる作業は、いまのうちにやっておく価値があります。
9. まとめ
OCCTOは2026年9月1日の第76回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料5で、安定電源のペナルティレートZ時間(現行90時間)の在り方を改めて検討対象としました。2026年度の低予備率アセスメント対象コマ実績は7月末時点で約155時間に達し、Zを既に超えています。事務局は「需給実績に応じた都度見直しは本来的性質でない」と留保しつつ案1から案3を提示しており、適用日は未定です。あわせて電源等区分の整理で、蓄電池は「1日1回以上・連続3時間以上」で安定電源と再確認されました。長期脱炭素電源オークションの「1日1回以上連続6時間以上」との差により、2時間はどちらも不可、3時間は容量市場のみ、6時間は両方という3段構造になります。発動指令電源については2025年度の供給力提供実績5割程度、ペナルティ割合が2024年度13.2%から2025年度1.0%へ低下したことが示され、追加オークション非開催時に市場退出容量へ不参加・不落札電源や実効性テスト過達分を充当する事務局案が出されました。今後は①電源等区分②Zの設計③発動指令電源の蓋然性向上の詳細が継続検討されます。
10. 出典(一次情報)
- 電力広域的運営推進機関 第76回 容量市場の在り方等に関する検討会(2026年9月1日)https://www.occto.or.jp/iinkai/youryou_kentoukai/76.html
- 同 資料5「2025年度包括的検証後の取り組みと各課題における検討の方向性について(電源等区分と需給ひっ迫時に対応するリクワイアメント・ペナルティ)」(PDF)https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/youryou_kentoukai/76/youryou_kentoukai_76_05.pdf
11. 発行・監修
安心して選ぶためのJC-STAR★1
〜BESS関連製品53件を登録番号付きで公開〜BMS/PCS/EMS/ESS関連の★1適合ラベル取得製品(当社再照合:2026-04-17、IPA製品リスト最終更新:2026-04-15)
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