作成日:2026.07.30
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市場・価格
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
容量市場の上限価格が倍増 ― 2030年度は31,366.5円/kW、指標価格(Net CONE)は20,911円/kW
OCCTOは2026年7月30日、2026年度メインオークション(対象実需給年度2030年度)の需要曲線を決定・公表した。指標価格・上限価格はいずれも前回から+107.6%。倍増の起点はモデルプラントの基準年更新にあり、2030年度の容量収入の前提を組み替える必要がある。
このページの要点
- 容量市場2030年度の上限価格が31,366.5円/kWへ、前回のほぼ2倍に決定した(需要曲線作成要領)
- 倍増の起点はモデルプラント(CCGT)の基準年更新(2014→2023年)でGross CONEが上がったこと
- 2030年度のBESS容量収入の前提を、新しい指標価格20,911円/kWで置き直す必要がある
出典:OCCTO 2026年度メインオークション需要曲線・需要曲線作成要領(対象実需給年度2030年度、2026年7月30日決定・公表)。
国が「いつでも電気を出せる能力」を買うときの上限単価を、2014年に火力発電所を建てた場合の値段から2023年の値段に置き換えて計算し直したところ、天井が前回のほぼ2倍になった、という話である。
決定した数値 ― 目標調達量1億9,691万kW・指標価格20,911円/kW・上限価格31,366.5円/kW
7月30日の決定内容のうち、事業性に直結するのは指標価格と上限価格の2つである。
図1:2030年度メインオークションで決定した3つの数値
出典:OCCTO 2026年度メインオークション需要曲線作成要領(対象実需給年度:2030年度)。
OCCTOは2026年7月30日、業務規程第32条の13に基づいて2026年度メインオークション(対象実需給年度:2030年度)の需要曲線を決定し、公表した。第4回電力安定供給ワーキンググループ(2026年7月14日開催)の審議内容を踏まえたものである。算定結果は、目標調達量196,905,207kW、指標価格(Net CONE)20,911円/kW、上限価格31,366.5円/kW。
前回の2025年度メインオークション(実需給2029年度)は指標価格10,075円/kW、上限価格15,112.5円/kWだった。つまり指標価格・上限価格ともに+107.6%である。一方で目標調達量は1億8,997万kWから1億9,691万kWへ約+694万kW(+3.7%)の増加にとどまる。動いたのは価格側だけと言っていい。
算定結果は、目標調達量196,905,207kW、指標価格20,911円/kW、上限価格31,366.5円/kW、上限価格における調達量195,267,720kW、調達価格ゼロにおける調達量203,897,409kW。発動指令電源の応札上限容量は8,095,069kW(H3需要の5%)。
— OCCTO 2026年度メインオークション需要曲線作成要領(対象実需給年度:2030年度)倍増の主因 ― モデルプラント(CCGT)の基準年が2014年から2023年へ
価格が倍になった理由は制度の変更ではなく、原価計算に使う基準年の入れ替えである。
図2:指標価格が倍増した主因と、据置きの前提
出典:需要曲線作成要領Ⅳ 算定結果、発電コスト検証WG 令和7年2月報告書「LNG火力」。
上限価格は「指標価格の1.5倍」と需要曲線作成要領Ⅱ-4で定義されている。指標価格が動けば上限価格も同率で動く。したがって見るべきは指標価格、すなわちGross CONEから容量市場以外の収益を差し引いたNet CONEの側になる。
Gross CONEの算定に用いるモデルプラントはCCGTで、その基準年が2014年から2023年へ更新された(発電コスト検証WG 令和7年2月報告書「LNG火力」)。建設費等が現在の水準に置き換わり、Gross CONEは31,683円/kWとなった。新規電源を建てて維持するのにいくらかかるかという前提を、10年近く前の値から現在値に持ち替えた結果である。
価格を押し下げる方向の変化も同時に起きている。容量市場以外からの収益は5,190円/kWから10,772円/kW(Gross CONE 31,683円/kWの34%)へ倍増し、インフレーション率は17.56%から6.71%へ下がった。評価期間の期待インフレ率は0.81%から0.98%。それらを織り込んでもNet CONEは倍増した。系統接続費1.56千円/kW、経年に伴う修繕費等の増分3万円/kW程度、税引前WACC 5%、コスト評価年数40年は据置きである。
基準年の更新はコスト前提の現在化であり、容量市場の制度設計そのものが変わったわけではない。
需要曲線の形状と、約定処理で加算・控除される供給力
曲線は4点を直線で結んだ形で、約定処理では市場外の供給力が加減される。
需要曲線は、①目標調達量と指標価格の交点、②上限価格、③上限価格における調達量、④調達価格ゼロにおける調達量の4点を直線で結んだ形状とする。③は195,267,720kW、④は203,897,409kW。発動指令電源の応札上限容量は8,095,069kW(H3需要の5%)に置かれた。
約定処理で加算・控除される供給力
約定処理では、FIT電源等の期待容量19,855,721kWと長期脱炭素電源オークションの契約容量6,850,371kWを加算し、容量市場外の見込み供給力1,800,000kW(一定の蓋然性のある供給力1,200,000kWと、ブラックスタート電源のひっ迫時に活用できる供給力600,000kW)を控除する。石炭・バイオマス混焼のFIT電源等は事後的に織り込み、洋上風力のゼロプレミアム案件が応札された場合は事後的に控除される。
根拠は広域機関 業務規程 第5章第1節第3款 第32条の13で、原案を策定し国の関連審議会等の意見を聴いた上で決定・公表する手続きである。
2030年度の容量収入をどう置き直すか ― 応札受付は10月13日から
前回は全エリアが指標価格を超えて約定した。倍になった指標価格の下で同じことが起きるかが分かれ目になる。
2029年度向けの約定は全エリアで指標価格を上回った。指標価格が10,075円/kWから20,911円/kWへ上がった2030年度でも同じ関係が続くなら、BESSの容量収入の水準は大きく切り上がる。上限価格が15,112.5円/kWから31,366.5円/kWへ動いたことで、収入見通しのレンジ上限も倍になった。IRRと資金調達条件の改善余地はここにある。
ただし高い上限価格は新規参入を誘発する。応札量が増えれば約定価格は抑えられる方向に働くため、上限に張り付く前提は置けない。指標価格水準・上限価格張り付き・前年並みの超過率の複数シナリオで感度分析を組み、どのシナリオでも成立する条件を先に出しておく方が現実的である。
- 2030年度実需給のBESS容量収入見通しを、新しい指標価格20,911円/kW・上限価格31,366.5円/kWで再計算する。
- 前回(2029年度向け)が全エリア指標価格超で約定した実績を踏まえ、指標価格水準・上限張り付き・前年並み超過率の複数シナリオで感度分析を行う。
- 需要曲線PDF(4点の形状)と需要曲線作成要領Ⅳ「算定結果」を自社の収益モデルへ取り込む。
- 応札受付(2026年10月13日〜10月23日)までに応札価格戦略を確定する。(期限:2026年10月23日)
読者別の緊急度
容量収入の見通しが変わるため、投資判断の前提として今週中に把握したい。
設備要件の変更はないが、事業性評価の前提が変わる。
応札価格戦略の再構築に直結する。即日着手すべき。
よくある質問(Q&A)
容量市場2030年度の上限価格はいくらですか?
31,366.5円/kWです。上限価格は需要曲線作成要領Ⅱ-4で「指標価格の1.5倍」と定義されており、指標価格20,911円/kWの1.5倍がこの水準にあたります。
指標価格(Net CONE)はなぜ倍になったのですか?
Gross CONEの算定に用いるモデルプラント(CCGT)の基準年が2014年から2023年へ更新され、建設費等が現在の水準に置き換わったことが主因です。容量市場以外からの収益が5,190円/kWから10,772円/kWへ倍増した分を差し引いても、Net CONEは倍増しました。
前回(実需給2029年度)の指標価格と上限価格はいくらでしたか?
2025年度メインオークション(実需給2029年度)は指標価格10,075円/kW、上限価格15,112.5円/kWでした。今回はいずれも+107.6%です。
目標調達量はどれだけ増えましたか?
196,905,207kW(1億9,691万kW)で、前回の1億8,997万kWから約+694万kW・+3.7%の増加です。上限価格における調達量は195,267,720kW、調達価格ゼロにおける調達量は203,897,409kWとされています。
2026年度メインオークションの応札受付はいつですか?
2026年10月13日から10月23日までです。この期間までに、新しい需要曲線を織り込んだ応札価格戦略を固める必要があります。
蓄電池の容量収入の前提はどう変わりますか?
収入見通しのレンジ上限が上限価格の倍増に合わせて切り上がります。前回は全エリアが指標価格超で約定しているため、2030年度も指標価格20,911円/kW近辺かそれ以上を置くシナリオが成り立ちますが、高値が応札量を増やして約定価格を抑える方向にも働くため、複数シナリオでの感度分析が前提になります。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 上限価格は指標価格の1.5倍と定義されているため、Net CONEが倍になれば上限価格も機械的に倍になる。今回の倍増は制度設計の変更ではなくコスト前提の現在化によるもので、基準年が更新されるたびに大きく動き得る性質の数値である。収益モデルの感度分析では、価格水準そのものを固定値として扱わない方がよい。
- 2029年度向け(2025年度メインオークション)の約定は全エリアで指標価格を超えて約定し、約定総額2.2兆円・蓄電池169万kWの落札だった。指標価格が倍になった2030年度で同じ関係が続けば容量収入の水準は大きく上がるが、高値は新規参入を誘発する。上限に張り付く前提の楽観的な収益計画は避けるべきだと考える。
- 容量市場以外からの収益がGross CONEの34%(5,190→10,772円/kW)まで上がった点は、卸・調整力など容量市場に頼らない収益が増えているという制度側の認識の表れと読める。BESSには、容量収入とエネルギー・調整力収入を重複計上しない収益モデルが求められる方向である。
- 目標調達量の+694万kW(+3.7%)は調達枠の拡大だが、約定処理では長期脱炭素電源オークションの契約容量685万kWが加算される。実質的な追加調達余地は、目標調達量の伸びほど大きくない可能性が高い。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、一次資料に記載された決定事項ではありません。
この記事のまとめ
2030年度実需給を対象とする容量市場の需要曲線が決まった。指標価格20,911円/kW・上限価格31,366.5円/kWで、いずれも前回から+107.6%。目標調達量は196,905,207kWで+3.7%にとどまり、動いたのは価格側である。起点はモデルプラント(CCGT)の基準年を2014年から2023年へ更新したこと。応札受付は10月13日から23日まで。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づいて解説する編集部。審議会資料・約款・公募要領を原文で確認して記事化しています。
監修
BESS NEWS編集長
容量市場・需給調整市場の制度設計と系統運用を担当。本記事の数値は需要曲線および需要曲線作成要領の算定結果と突き合わせて確認した。
出典(一次情報)
- OCCTO 2030年度実需給関連(募集要綱・業務マニュアル等)
https://www.occto.or.jp/various/capacity-market/jitsujukyukanren/2030_jitsujukyu_kanren.html - 2026年度メインオークション需要曲線(対象実需給年度:2030年度)PDF
https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/jitsujukyukanren/260730_mainauction_jyuyoukyokusen_jitsujukyu2030.pdf - 2026年度メインオークション需要曲線作成要領(対象実需給年度:2030年度)PDF
https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/jitsujukyukanren/260730_mainauction_jyuyoukyokusen_sakuseiyouryou_jitsujukyu2030.pdf
本記事は2026年7月30日時点で公表された一次資料に基づきます。以後の改訂・追加公表は反映していません。
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