作成日:2026.06.16
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需給調整:複合・その他
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
120万kWが蓄電池の“稼ぎ場”を変える? EPRX、東京エリアの調整力募集量を見直し
〜東京電力PGが揚水発電機の調整力を随意契約で確保、市場募集量から控除へ〜
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、2026年6月9日に第61回「需給調整市場検討小委員会」と第78回「調整力の細分化及び広域調達の技術的検討に関する作業会」の合同会議を開きました。
議題は、①需給調整市場の取引状況、②調整力指令と出力制御指令が重なった場合の取り扱い、の2本です。
今回の資料で最も目を引く数字は、複合商品における**30分化の効果試算として、応札量が+1,160MW、+30.3%**と示された点です。
蓄電池の落札量も増加傾向とされており、蓄電池事業者にとっては市場参加のチャンスが広がる可能性があります。
ただし、「応札量が増えた=応札不足が解消した」と読むのは早計です。資料2では、2026年度当初の取引状況について、抜本的な応札不足の改善には至っていないと整理されています。
この記事では、30分化で何が変わったのか、蓄電池にどんな追い風があるのか、そして実務で何を確認すべきかを整理します。
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
・複合商品では、30分化の効果試算として応札量が**+1,160MW、+30.3%**と示されました。ただし、これは実績の単純な増加率ではなく、一定の前提を置いた参考試算です。
・蓄電池の落札量は増加傾向とされていますが、落札増の中心は火力、次いで水力・揚水発電です。蓄電池が「主役になった」とまでは読まない方が正確です。
・市場参加者は、30分単位の応札戦略に加えて、出力制御と調整力指令が重なった場合の証跡管理まで確認する必要があります。
今回、何が決まっていて何を見たのか
1.会合の議題は「取引状況」と「指令重複」の2本
今回の合同会議の議題は、資料1-1にある通り、「需給調整市場の取引状況等について」と「調整力指令と出力制御指令が重複した場合の取り扱いについて」の2点です。需給調整市場とは、電気の「使う量」と「作る量」のズレを調整する力を取引する市場です。ここで重要になるのが、
ΔkW(デルタキロワット:必要なときに出力を調整できるよう、あらかじめ確保しておく能力)
です。用語集では、ΔkWは実需給時点で必要な能力を持つ電源等を、出力調整できる状態であらかじめ確保することと整理されています。
2.複合市場の前日取引化・30分化
資料2では、2026年度から複合市場(一次調整力〜三次調整力①・複合商品を扱う市場)の取引タイミングを週間断面から前日取引へ前倒しし、入札時間単位を3時間から30分へ変更したと説明されています。
前日取引とは、実際に電気を使う日の前日に調整力を調達する方式です。
用語集でも、2026年度以降は一次調整力〜三次調整力①・複合商品が前日調達の対象になると整理されています。
ここは「これから決める予定」ではなく、資料上はすでに実施された変更として扱われています。一方で、その効果の見方や、応札不足への追加対応は、今後も市場状況を見ながら検討される論点です。
「応札量30.3%増」の正しい読み方
1.30.3%増は実績の単純比較ではなく参考試算
資料2では、2026年3月の取引実績を使い、3月前半の3時間ブロック実績、3月後半の30分コマ実績、さらに「もし3月後半も3時間ブロックが続いていた場合」の試算を比較しています。
複合商品の応札量は、3月前半実績が4,292MW、3月後半実績が4,984MW、3月後半の試算応札量が3,824MWでた。
30分化の効果試算量は、3月後半実績4,984MWと試算応札量3,824MWの差である**+1,160MW、+30.3%**と示されています。
重要なのは、この30.3%が「3月前半から3月後半に単純に30.3%増えた」という意味ではないことです。
資料2も、試算には前日取引化後のデータを使っているため、30分化だけの純粋な効果ではなく、事業者の行動変化も含む点に留意が必要としています。
2.応札量増加と、残る応札不足
30分化で応札量が増えたことは、前向きな材料です。しかし、資料2のまとめでは、2026年度当初の取引状況について、抜本的な応札不足の改善には至っていないと整理されています。
特に、一次調整力と二次調整力①では、引き続き一定量の不足が生じているとされています。
つまり今回のポイントは、「制度変更で改善の兆しが出た」ことであって、「市場課題が解決した」ことではありません。
3.三次調整力②の応札量減少
複合市場の前日取引化と同じタイミングで、三次調整力②では応札量の減少も確認されています。
資料2では、応札不足となる頻度の上昇や、平均落札単価の乱高下も続いているとされています。
ただし、現段階で複合市場との間に明確な応札偏りが確認されたとはされていません。
恒久的な対策については、今後の市場取引状況や募集量削減係数の動向を踏まえ、必要に応じて検討する位置づけです。
蓄電池への追い風と注意点
1.蓄電池の落札量は増加傾向
資料2では、複合商品の全国計における電源種別の落札量と価格推移を確認しています。
その中で、蓄電池の落札量は増加傾向にあるとされています。これは、蓄電池事業者にとって前向きな材料です。
蓄電池は短時間で充放電を切り替えやすいため、30分単位の市場とは相性がよい可能性があります。
ただし、「参加しやすくなる可能性がある」ことと「必ず落札される」ことは別です。
市場では、価格、応動性能、エリア、時間帯、他リソースとの競争によって結果が変わります。
2.落札増の中心は火力、次いで水力・揚水
資料2は、前日取引化以降に落札が増加した主なリソースは火力で、次いで水力・揚水発電だと整理しています。
そのうえで、蓄電池の落札量も増加傾向とされています。そのため、「蓄電池が需給調整市場をけん引している」と書くのは強すぎます。
正確には、既存の大型電源が中心にある中で、蓄電池にも参加機会が広がりつつあるという読み方になります。
3.価格競争とスポット市場との使い分け
資料2では、蓄電池の加重平均落札単価が下がっている点について、火力の増加に伴う価格競争、または上限価格の引き下げの影響が考えられると説明されています。
また、3月後半は多くの時間帯で応札量が増えた一方、点灯帯では減少しました。資料2は、複合商品に約定可能なリソースがスポット市場で約定したことが要因と考えられるとしています。
スポット市場とは、翌日分の電気を売買する卸電力市場です。蓄電池事業者にとっては、30分ごとに「スポット市場で売るのか」「需給調整市場に応札するのか」「充電して次の時間に備えるのか」を見極めることが重要になります。
出力制御と調整力指令の重複時対応
1.基本順位は「出力制御指令 > 調整力指令 > 計画値」
資料3では、調整力指令と出力制御指令が重なった場合の基本順位として、出力制御指令 > 調整力指令> 計画値が示されています。
出力制御指令とは、「その値で出力しなさい」という意味ではなく、守るべき出力上限値を通知するものです。
つまり、調整力として出力を上げる指令があっても、出力制御の上限を超えてはいけません。
蓄電池で考えると、「放電してほしい」という調整力指令があっても、系統制約や需給制約による出力制御上限がある場合は、その上限を守る必要があります。
2.方法A・オフライン・方法Bの違い
資料3では、出力制御時の通信・指令方法として、方法A、オフライン、方法Bが整理されています。
方法Aは調整力指令と出力制御指令を別々に送るため、両指令の重複が起こり得ます。
オフラインは電話・メール等による指令で、ファーム型接続に限る扱いです。
方法Bは調整力指令の中に出力制御指令を含むため、実質的な重複は発生しないとされています。
一次調整力以外では、出力制御上限を超えない範囲で調整力指令に従う整理が示されています。
一方で、出力制御上限を超える調整力指令などは、ΔkWの要件を超える指令として、アセスメントⅡの対象外とする扱いが示されています。
アセスメントⅡとは、一般送配電事業者からの指令に対して、実際の応動が商品の要件を満たしていたかを確認・評価する仕組みです。
3.アグリゲーターに必要な再アセスメント対応
蓄電池や需要設備を束ねるアグリゲーター(複数の設備をまとめて制御し、市場に参加する事業者)にとって重要なのは、各リスト・パターンの扱いです。
リスト・パターンとは、応札や発動の際に選ぶリソースの組み合わせです。
資料3では、各リスト・パターンの場合、約定ΔkWの対象地点を混雑系統・非混雑系統に区分できないこと、リソースの種類や規模によって出力制御対象外のものがあることなどから、TSOだけでアセスメントⅡ対象判定を行うのは難しいとされています。
例として、10kW未満の蓄電池は需給バランス制約による出力制御の対象外と記載されています。
そのため資料3では、まず通常どおりアセスメントⅡを行い、不適合通知後に事業者が申し出た場合、出力制御がなかったものとして許容範囲を拡大した再アセスメントⅡを行う整理が示されています。
実務では、発電計画、出力制御上限値、出力制御地点のΔkW約定量を後から説明できる状態にしておくことが重要です。
実務で確認すべきこと
1.商品・エリア・時間帯ごとの応札余地
今回の30.3%という数字は、全国・複合商品ベースの参考試算です。
実務では、自社設備があるエリア、対象商品、時間帯ごとに見なければ判断を誤ります。
資料2では、複合商品について、北海道・東京・中部・四国エリアでは応札量が増加した一方、北陸・関西・中国エリアでは減少が確認されています。
不足率は北陸・関西で増加し、四国・九州では一定の改善が確認されています。
蓄電池事業者は、「需給調整市場全体が良さそう」と大きく見るだけでは不十分です。
どの商品で、どのエリアで、どの時間帯なら勝てるのかを確認する必要があります。
2.最低入札量1MWと商品要件
参考資料1では、2026年度以降の商品区分・要件として、一次調整力から三次調整力②まで、入札時間単位はいずれも30分、最低入札量はいずれも1MW、刻み幅は1kWと整理されています。
一方で、応動時間は商品ごとに異なります。一次調整力は10秒以内、二次調整力①と二次調整力②は5分以内、三次調整力①は15分以内、三次調整力②は60分以内とされています。
蓄電池は応答速度に強みを持ちますが、通信、監視、継続時間、アセスメント対応まで含めて商品要件を満たせるかを確認する必要があります。
3.ROIは落札確率と追加費用込みで確認
ROI(投資利益率:投資に対してどれだけ利益が出るかを見る考え方)は、今回の資料だけでは個別案件として計算できません。蓄電池価格、設置費、運用費、劣化コスト、落札確率、将来価格などが資料に書かれていないためです。考え方としては、次の式になります。
ROI =(需給調整市場からの追加収益 − 追加費用)÷ 追加投資額
追加費用には、蓄電池の劣化、PCS(蓄電池と系統の電気を変換する装置)、EMS(充放電を管理するシステム)、通信設備、保守、運用人員、アセスメント対応などが含まれます。落とし穴は、応札した量が必ず落札されるわけではないことです。
30分化で参加しやすくなっても、価格競争に負ければ収益にはつながりません。
まだ未定・継続検討の論点
1.市場状況を見ながら続く応札不足対策
資料2のまとめでは、2026年度当初の取引状況について、抜本的な応札不足の改善には至っていないとされています。
ただし、現時点で新たな問題が生じているものではないとも整理されています。
今後は、季節性要因による変動も見ながら、市場動向の注視を継続し、必要に応じて事業者アンケートや国との連携を通じて施策を講じるとされています。
2.制度的供出義務化は2026年4月導入を見送り方向
参考資料1では、応札不足対策の一つとして制度的供出義務化が整理されています。
技術的な検討は概ね完了しているものの、2026年4月からの導入は見送る方向とされています。
ただし、これは「今後も導入されない」という意味ではありません。資料では、今後の市場状況等によっては検討を再開する方向性が示されています。
3.2027年度以降の広域調達・再エネ活用
参考資料1では、2027年度に向けた二次調整力①の広域調達、三次調整力②の必要量低減、2028年度以降に向けた一次調整力の広域調達、複合商品の一次アセスメント、専用線の低コスト方式拡大、変動性再エネの調整機能活用などが課題として挙げられています。
蓄電池事業者にとって、今回の30分化はゴールではありません。需給調整市場は、広域調達、同時市場、再エネ活用、通信方式の見直しとあわせて変わり続ける市場として見ておく必要があります。
よくある誤解(Q&A)
Q
応札量が30.3%増えたなら、応札不足は解消したのですか?
A: いいえ。30.3%は複合商品の30分化効果に関する参考試算です。資料2は、2026年度当初の取引状況について、抜本的な応札不足の改善には至っていないと整理しています。
Q
2025年度の揚水随契単価0.47円/ΔkW・hは、揚水発電事業者の総収入ですか?
A: いいえ。0.47円/ΔkW・hは、発電した電力量の売電単価ではなく、調整力として容量を確保したことに対応するΔkW単価です。一方で、実際に発動した場合には制度上、kWh精算が発生し得ます。ただし、今回確認できる公表資料だけでは、2025年度の揚水随契について、発動量やkWh精算額までは確認できません。
Q
蓄電池が一番伸びたと考えてよいですか?
A: いいえ。資料2では、前日取引化以降に落札が増加した主なリソースは火力、次いで水力・揚水発電です。蓄電池は「落札量も増加傾向」とされています。
Q
30分化は蓄電池に必ず有利ですか?
A: 条件次第です。短時間で動ける蓄電池には追い風になり得ますが、価格競争、落札確率、劣化コスト、通信・監視要件、出力制御時の対応まで含めて判断する必要があります。
Q
出力制御指令は「その出力で動け」という意味ですか?
A: いいえ。資料3では、出力制御指令は守るべき出力上限値を通知するものであり、その値で出力させる指令ではないとされています。
Q
アグリゲーターの再アセスメントは自動的に行われますか?
A: 0.47円/自動的とは読めません。資料3では、不適合通知後の事業者の申し出に基づき、許容範囲を拡大した再アセスメントⅡを行う整理が示されています。
出典(一次情報のみ)
本稿は、OCCTOの第61回需給調整市場検討小委員会および第78回調整力の細分化及び広域調達の技術的検討に関する作業会の合同会議資料を参照しています。
会合日は2026-06-09、参照日は2026-06-11です。主に参照した資料は、資料1-1「議事次第」、資料1-2「需給調整市場検討小委員会 用語集」、資料2「需給調整市場の取引状況等について」、
資料3「調整力指令と出力制御指令が重複した場合の取り扱いについて」、参考資料1「需給調整市場検討小委員会における議論の方向性と整理」です。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「第61回需給調整市場検討小委員会(第78回 調整力の細分化及び広域調達の技術的検討に関する作業会と合同開催)」
https://www.occto.or.jp/iinkai/jukyuchousei/61.html会合日: 2026-06-09 参照日: 2026-06-11
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「資料1-1 議事次第」
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/jukyuchousei/61/jukyu_shijyo_61_01_01.pdf発行日: 2026-06-09 参照日: 2026-06-11
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「資料1-2 需給調整市場検討小委員会 用語集」
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/jukyuchousei/61/jukyu_shijyo_61_01_02.pdf発行日: 2026-06-09 参照日: 2026-06-11
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「資料2 需給調整市場の取引状況等について」
URL: https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/jukyuchousei/61/jukyu_shijyo_61_02.pdf発行日: 2026-06-09 参照日: 2026-06-11
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「資料3 調整力指令と出力制御指令が重複した場合の取り扱いについて」
https://www.occto.or.jp/iinkai/jukyuchousei/61.html発行日: 2026-06-09 参照日: 2026-06-11
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「参考資料1 需給調整市場検討小委員会における議論の方向性と整理」
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/jukyuchousei/61/jukyu_shijyo_61_sankou_01.pdf発行日: 2026-06-09 参照日: 2026-06-11
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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