作成日:2026.09.10
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上級
技術・仕様・EMS
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
グリッドコード検討会 議事録——了承の裏で2MW基準とFSMが宿題に
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は2026年9月10日、2026年8月21日に開催した第22回グリッドコード検討会の議事録と配布資料を公表した。議題は資料4「FRT要件の見直し(特高)」と資料5「負荷周波数制御・経済負荷配分制御・瞬動予備力・周波数変化の抑制対策・発電設備の制御応答性」の2件で、いずれも加藤座長のまとめで「事務局案のまま進めていただきたい」と了承された。ただし、同じまとめの中に宿題が書き込まれている。対象容量基準は再検討の対象とされ、常時の周波数応動であるFSMは次回審議へ回った。決定は下りた。対象範囲は固まっていない。
CONTENTS目次
資料4については、海外との調整、比較に関し注意していただきたいというコメントはあったが、進め方に関しては特に異論なかったため、事務局案のまま進めていただきたい。資料5については、蓄電池についてはFSMが非常に重要な役割を持つため、それを除外するのはまずいのではないかというコメントがあったが、FSMについては次回検討結果を報告するため、事務局案通りで進めていただく。その際に容量基準について、今のままで良いのか検討いただければと思う
議事録が確定させたのは「事務局案のまま進める」という一点
議事録は、会合で何が決まったかを一行で示してくれる文書ではない。今回は加藤座長のまとめがそれに近い役割を果たしている。
資料4はFRT要件の見直し(特別高圧)、資料5はLFC・EDC・LFSMを含む周波数関連の要件化案である。前者には海外との調整・比較に注意すべきというコメントが付いたが、進め方への異論はなかった。後者にはFSMを除外することへの疑義が出たが、次回に検討結果を報告するという条件で事務局案通りとされた。
つまり2026年8月21日の時点で、要件化案は「検討中」から「進める」へ動いた。第16回検討会では蓄電池について「参入目的の多様性を踏まえ、周波数調整機能の要件化は行わず継続検討」とされていたから、整理の向きが変わったことになる。系統連系技術要件〔特別高圧〕15「発電機運転制御装置の付加」には「c 蓄電設備」の条項が新設される。
規定値そのもの——変化速度や調定率、不感帯の数値——は資料5が公表された時点で別稿で扱った。本稿が追うのは、議事録にしか残っていない部分である。
「特別高圧・2MW以上」は宿題として残った
対象は特別高圧に連系する定格出力2MW以上の蓄電池(充放電両方向)である。みなし連系や35kV以下の配電線扱いとなる電線路への連系は対象外で、現行要件が適用される。高圧・低圧は今回の対象外で、フェーズ4での継続検討という位置づけになっている。
この線引きに、二人の委員が別の角度から疑問を出した。
2MW以上にだけ具備を命ずると要件を回避するインセンティブが生じる
2MWを少し割った高圧連系の話も聞く。高圧・低圧をフェーズ4に置いてそんなにゆっくりで大丈夫か
岩船委員の指摘は制度設計の穴を突いている。閾値の直下に張り付く設計が事業者にとって合理的になるなら、閾値そのものが要件の実効性を削ぐ。七原委員の指摘は現場の観測で、閾値を少し下回る高圧連系が実際に出てきているという話である。
そして座長のまとめには、了承の文言と同じ段落に「その際に容量基準について、今のままで良いのか検討いただければと思う」が入っている。了承と宿題が同居しているのが、今回の議事録の要点である。対象容量基準を確定値として社内資料に転記するのは、まだ早い。
FSMは次回審議へ——委員と一般送配電事業者の双方が「重要」と主張
今回の要件化に入らなかった機能がひとつある。FSM——常時の周波数変動に応じて出力を動かす機能である。
事務局は、SOCや等価フルサイクル数消費への影響度合いと海外の規定状況を調査のうえ、次回以降に審議するとした。
先送りに納得しなかった側は記録に残っている。七原委員と岸オブザーバー(東京電力パワーグリッド 執行役員系統運用部長)の双方が、FSMこそ重要だと主張している。座長のまとめも「それを除外するのはまずいのではないかというコメントがあった」と、その事実を明示的に拾っている。
委員と一般送配電事業者の両方から同じ方向の意見が出ており、事務局側も調査事項を特定している。編集部は、次回で対象化される前提で仕様検討を進めるほうが安全側だと見る。
費用論の本丸は保証失効——ERAが示した数億〜数十億円
FSMが実務側で警戒されるのは、機能の作り込みが難しいからではない。常時動くからである。
FSMは常時の周波数変動に対する応答となるため市場収益が制限され、蓄電池の運用(SOC管理、充放電計画、劣化等)に継続的な影響を与えるため事業性への影響が大きい(一方でLFSMについては発動頻度が限定的であり通常運用への影響は相対的に小さい)
費用の見立ても、事務局とERAで勘定が違う。事務局は開発費用および認証試験費用の増加により1機種あたり最大数千万円程度、1台あたり数十万円〜数百万円程度のコスト増を見込み、「ソフト改修や試験費用は発生するが、過度なコスト増とまでは言えない」と整理した。ERAが持ち出したのは別の科目である。
メーカー保証で定められた等価フルサイクル数を超過した場合、保証が失効(免責)となり、保証失効時にセル全量交換が必要となった場合、容量規模にもよるが数億から数十億の費用が発生する
保証が失効したあとに交換が必要になった場合の話であり、必ず発生する費用ではない。ただし長期の運用を前提に収支を組んでいる案件では、この分岐が事業性を決める。FSM審議の本丸はここになる。
ERAのコメントが掲載された配布資料の資料番号・ページは、本稿では特定していない。第22回検討会の配布資料に提出された業界団体コメントとして引用している。
逆潮流の定義が一般送配電事業者間で揃っていない
適用除外の整理は、放電により系統への逆潮流を生じない蓄電池はLFC・EDC・LFSM-O・LFSM-Uのすべてが適用対象外という形になっている。一般的な負荷と同等の扱いが適当という理由である。
議事録が拾っているのは、その「逆潮流を生じない」の判定が会社によってぶれるという話である。
太陽光について「事故時に逆潮流のおそれがある」として特高側の地絡過電圧リレーの設置を求められた会社と、代替リレーで連系を認めた会社がある
太陽光の事例として出た証言だが、争点は同じである。逆潮流のおそれをどう見るかの解釈が、一般送配電事業者の間で揃っていない。岸オブザーバーは「持ち帰る」と応じた。
自社案件が適用除外に該当するかどうかは、制度文書の読み合わせだけでは決まらない。連系申込時の逆潮流有無の申請内容と照らしたうえで、属地の一般送配電事業者に個別確認する。議事録から出てくる結論はここに落ちる。
2028年4月は「目指す」段階——見直しの余地が残された
適用時期は2028年4月予定、遡及適用なし。要件化後の新規連系時およびPCS取替時に順次適用される。遡及なしの理由は、現状は既存の火力発電設備および揚水発電設備等によって調整力設備量を確保できており、目下において系統運用に支障を来すおそれがないためと整理されている。
この「予定」がどれくらい固いかにも、議事録に手がかりがある。
各業界団体のコメントを見ると試験条件が調整中であったり、適合性確認方法も調整中という記載があり、2028年に本当にできるのか
試験方法については現在も調整をしている。今のところの調整状況の中では2028年4月を目指せるかなという感触。今後詳細を検討していく中で何かクリティカルな課題があれば適用時期の見直しも考えなければいけないが、まずは2028年4月を目指して進めている
「まずは目指して進めている」という言い方であり、クリティカルな課題が出れば見直すという留保が付いている。JEMAは機能配置(EMS、コントローラ、パワコン)の認識合わせやパラメータの妥当性確認が必要だが実現は可能としており、不可能という話ではない。
技術的な理由で範囲が動く例は、同じ会合の中にある。資料4では三相風力の位相変動耐量の要件化が、一部主要メーカーが対応困難としたために今回見送られた。範囲は動く。
実務上の構えは一つに決まる。適用時期をまたぐ案件は「またぐ側」で仕様を固める。時期が後ろにずれても損はしないが、前提を置き違えると設計のやり直しになる。
専門家の視点
- 了承の文言と宿題が同じ段落にある。加藤座長は資料5を事務局案通りで進めるとしたうえで、続けて容量基準の再検討を求めた。対象容量基準を「確定した閾値」として社内決裁に載せると、拡大時に前提から作り直しになる。
- FSMは次回で対象化される前提で読むほうが安全側である。委員と一般送配電事業者の双方が重要だと述べ、事務局も調査事項(SOC・等価フルサイクル数消費への影響度合い、海外の規定状況)を特定している。反対意見が出て消えた論点とは向きが逆で、追加調査のうえ戻ってくる形になっている。
- 適用除外の判定は属地確認まで進めないと閉じない。逆潮流の解釈が一般送配電事業者間で揃っていないと議事録に記録され、岸オブザーバーが持ち帰ると応じた段階である。制度文書上の整理だけを根拠に「対象外」と決めると、連系協議でひっくり返る余地が残る。
いま取るべきアクション
| # | アクション | 期限 |
|---|---|---|
| 1 | 自社の特高案件について、連系(受電)予定日が2028年4月以降か否かで一覧を作り、以降の案件はPCS・EMS仕様にLFC・EDC・LFSMを追加要件として明記する | 2026-10-31 |
| 2 | PCS・EMSメーカーに、資料5の規定値への対応可否と追加費用を照会する | 2026-10-31 |
| 3 | 需要設備併設・逆潮流なしの案件は、連系申込時の逆潮流有無の申請内容に照らして適用対象外に該当するかを確認し、属地の一般送配電事業者に個別確認する | 2026-11-28 |
| 4 | 次回(第23回)グリッドコード検討会でのFSM審議結果を監視対象に登録し、要件化された場合のSOC・等価フルサイクル数への影響試算を準備する | 次回開催日 |
| 5 | 長期脱炭素電源オークションに応札予定の案件は、調整機能要件の参照先が「揚水発電のグリッドコード」から蓄電池固有の要件へ変わる前提で、契約上の要件充足条件を確認する | 2026-12-31 |
数値照合表
本文に出た主要な数値・発言と一次情報を1対1で対照した表である。
| # | 項目 | 本文の値 | 一次情報(出典) |
|---|---|---|---|
| 1 | 議事録・配布資料の公表日/会合開催日 | 公表 2026年9月10日/開催 2026年8月21日 | 第22回 グリッドコード検討会(OCCTO) |
| 2 | 座長まとめの結論 | 資料4「事務局案のまま進めていただきたい」/資料5「事務局案通りで進めていただく」 | 議事録(PDF) |
| 3 | 要件化の対象範囲 | 特別高圧・蓄電池(充放電両方向)・定格出力2MW以上。みなし連系・35kV以下の配電線扱いは対象外/高圧・低圧はフェーズ4で継続検討 | 資料5(PDF) |
| 4 | 容量基準の扱い | 「その際に容量基準について、今のままで良いのか検討いただければと思う」(座長まとめ) | 議事録(PDF) |
| 5 | FSMの扱い | 今回は要件化せず、SOCや等価フルサイクル数消費への影響度合いと海外の規定状況を調査のうえ次回以降に審議 | 議事録(PDF) |
| 6 | 事務局のコスト整理 | 1機種あたり最大数千万円程度/1台あたり数十万円〜数百万円程度 | 資料5(PDF) |
| 7 | 保証失効時のセル全量交換費用 | 数億〜数十億円(容量規模による・ERAの指摘) | 第22回 グリッドコード検討会 配布資料(資料番号は本稿では未特定) |
| 8 | 適用時期・遡及 | 2028年4月予定・遡及適用なし。「クリティカルな課題があれば適用時期の見直しも考えなければいけない」(事務局) | 議事録(PDF) |
| 9 | 逆潮流の判断の不統一 | 対応が分かれた実例が証言され、岸オブザーバーが「持ち帰る」と応答 | 議事録(PDF) |
| 10 | 資料4で今回見送られた要件 | 三相風力の位相変動耐量(一部主要メーカーが対応困難としたため) | 資料4(PDF) |
| 11 | 各発言の議事録ページ番号 | 未確認(本稿ではページ単位の特定を行っていない) | 議事録(PDF) |
よくある質問
Q1. 第22回グリッドコード検討会の議事録では、何が了承されたのですか。
Q2. 「特別高圧・2MW以上」という対象範囲は確定したのですか。
Q3. FSMはなぜ今回の要件化に入らなかったのですか。
Q4. 費用について反論は出なかったのですか。
Q5. 逆潮流を生じない蓄電池は適用対象外という整理は、そのまま自社案件に当てはめてよいですか。
Q6. 2028年4月という適用時期は動く可能性がありますか。
編集体制と事実確認プロセス
BESS NEWSの記事はこう作っています
- BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者・執行団体が自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
- 数値・日付・発言は一次情報に記載された値をそのまま引用します。未公表・未確定・未読の事項は「未確認」と明記し、推測で埋めません。
- 本文に登場した主要な数値・発言は「数値照合表」で出典と1対1で対照できるようにしています。
- 事実確認の限界は隠さず本文に記載します。本稿では、各発言の議事録内ページ番号を特定していないこと、ERAのコメントが掲載された資料番号を特定していないことを明記しています。
出典(一次情報)
- 第22回 グリッドコード検討会(OCCTO)
- 第22回 グリッドコード検討会 議事録(PDF)
- 資料5 個別技術要件検討「負荷周波数制御・経済負荷配分制御・瞬動予備力・周波数変化の抑制対策・発電設備の制御応答性」(PDF)
- 資料4 個別技術要件検討「FRT要件の見直し(特高)」(PDF)
- 資料3 第22回検討会の位置づけと資料内容(PDF)
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。発言の引用は出典2(議事録)の記載に基づきます。
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